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夢中になれること、それに出会うこと

陶芸をすると心の軸がピンとまっすぐになる。
その瞬間が好きだ。


目の前には、これから器になる土の塊が、ろくろの上を回っている。

縦にのばして、小さくして、土をすべらせる。

それに満足したら、親指で穴を開けて、不恰好なおちょこを形作る。

そんなおちょこの側面を、うすーく、うすーく、と念じながら、上に引き上げていく。だいぶ形ができたら、最後の仕上げ。

「すー、はー。」

「すぅーー、はぁーーー。」

何度か深呼吸をし息を吐き切ってから、慎重に土を引き上げる。

「あっ!!!」

少し指が引っかかったらしい、綺麗な円筒がグチャグチャになった。
まるで雨の日に踏み荒らされた公園の土みたいに、みるも無惨なありさまである。


「あーーー!またやった!」

ちょっとでも集中を切らすと、すぐにこれだ。
少し指が内側に入った、爪がかかった、力をいれすぎた、そんな小さなミスが命取り。

土はなんて繊細なんだ。そして、そんな土にふりまわされている。
先生いわく、土をふりまわそうとするのではなく、土の流れにまかせるのだそう。
難しいね。

うまくいかない事が続いたと思えば、急に最後まで作れる事がある。

一筋縄ではいかない。

しかし、それが面白い。

昨年の夏にデンマークで陶芸に出会って以来、日本に帰ってからも陶芸を続けている。自宅では粘土でアクセサリーを作り、陶芸教室でろくろを教えてもらっている。

自宅での作業も楽しいけれど、ろくろで土をひくのが特に好きだ。

周りが気にならなくなるくらい集中して、その集中を最後まで切らさないとき、そんなときに最後まで作り切る事ができる。

息を吐いて土に向き合っているとき。

身体のなかにある揺れ動いていた何かがピタッと止まる。


この瞬間が一番好きだ。


そういえば、わたしの好きなものって集中力を必要とするものが多い。

陶芸はもちろん、ヨガ、そして今はやっていないけれどスノーボードにもめちゃくちゃハマっていた。

ヨガのバランスをとるポーズは、壁の一点をひたすら見つめて集中することが必要だ。

スノーボードも、重心が崩れば直ぐに転倒してしまうから、常に身体の真ん中を意識しなければいけない。

ゾーンまではいっていないと思う。けれど、周りの声、そして失敗すらも気にならなくなるまで没頭すると、悩みやなどの雑念が消えて、なんだか頭がスッキリする。


ここまで書いてふと気づく。

好きなものは集中力を必要とするものと書いたけれど、もしかすると逆なのかもしれない。

好きだから、周りの声すら気にならなくなるくらい集中しているのかもしれない。

そう思うと、集中できるくらいハマれるものに出会えてよかったと思う。


以前、会社員として働いていたときは、仕事に違和感を感じていた。けれど、その代わりに何をするか、そのアイデアがなかった。

好きなものがない、ハマれるものがない。

何かをやりたいのに、やりたい事がない。


陶芸に出会う前は、色んなことに手をだした。和菓子も作ったし、ボルダリングもやってみたし、日本酒の会にも参加してみたし、覚えてないけれど他にも何かやった気がする。ボルダリングはハマれそうだったけれど、仕事にするのは違うなと思って、保留にした。けっこう苦しい時間だった。

そんななか、金継ぎをして、海外にいって、陶芸に出会った。

偶然といえば偶然だけど、全てが偶然というわけではない。やりたいな〜と漠然と思っていたことを実際にやってみて、積み上げていった先の出会いだった。


ハマれることにすでに出会っていた友人に聞いた事がある。

どうやって、ハマれることに出会ったのか。

夢中になっている友人が羨ましかったから。

友人の答えは、

「たまたま。そして、気になってみたことをやってみた結果。」

だった。

そのときは、友人の答えに対して半信半疑だった。
でも今ならわかる。

積み上げた先に偶然が起こるのだと。


お読みいただき、ありがとうございます。
次の記事でお会いしましょう。

またねー!


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