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オクルーザルリコンストラクションは誰でもできるというお話

オクルーザルリコンストラクションとはなんでしょうか。
それは咬合再構成のことです。

こんにちは、けーしー@kckclifelogです。

オクルーザルリコンストラクション咬合再構成とは
まさに読んで字のごとく、噛み合わせを改めて作り直すことです。
これまでの噛み合わせによって、炎症のコントロールや噛み合わせの力のコントロールが難しく、原因の除去ができない場合に行います。
来院される患者の口腔内のトラブルは、以下の4つ(重複もあり)に原因が集約されます。それは

・カリエス(虫歯)
・ペリオ(歯周病)
・咬合力・噛み合わせ
・医原性(悪い修復物)

特に3番目、4番目が原因となっている場合、オクルーザルリコンストラクションの適応になることが多いです。
例えば元々歯並びが悪い、さらに噛み合わせのちからが強い、そんな患者さんは、たくさん被せ物が入っていて、さらに入れ歯を使っている。
ちゃんと定期的メンテナンスで受診されているのにどんどん欠損ドミノというどんどん歯を失っていく状態が止まらない。
そんな方はオクルーザルリコンストラクションを行うことが多いイメージがあります。

オクルーザルリコンストラクションを行うということは、歯を1本1本見ることをせず、1口腔単位で患者を診るということです。
おそらく多くの先生は、どうしても1歯単位で順々に治していく事に考えが、あるいは治療計画が引きずられがちです。
これはまず、患者のどこを治すか、という考えが先行してしまうのが原因です。
もちろん患者の口腔内のどこが悪いのかを検査することは何よりも大事です。
ただし、診断は、そうなった原因を明らかにすることです。例えば

患者 『歯が痛いです』
歯科医『では虫歯を治しましょう』

これは対症療法をしているだけ。
患者がどうして虫歯になったのかを解決しないことには、また他の部分が、もしくは二次カリエスになってしまうだけです。
原因を探り、治療した結果、二度と患者が同じトラブルを起こさないようにするのが僕ら歯科医の使命だと考えています。

ただ、どうしても僕ら、特に日本の歯科医は1歯単位の治療を行いがちです。
それはもう国民皆保険制度が常についてまわっているから。
全体的な治療を行う、という考えが保険制度と全く合わないんですよね。
それはだからしょうがない。
ただ早いうちに、保険制度がありながら、理解しながらも、常に全体的な治療をどう行うか、ということを念頭に治療計画を練ることが大事なのかなと思います。

さて本題。
今回タイトルに、オクルーザルリコンストラクションは誰でもできると書きました。
誰でもできると思います。
まず、治療計画は誰でも立てられる。実行できるかどうかは別として。

そして、患者とどの治療を行うか、相談することも誰でもできる。
自分の技術を超える治療計画は、自分でしなければ良いだけです。
治療計画が歯科医療として至極当然の内容であれば、あとはそれを実行出来る人、例えば勤務先の院長にしてもらえばよいだけです。

患者と対話して、例えば欠損はどうするか、不良修復物はどうするか、最終的なゴールはどうするかをちゃんとすり合わせれば良いだけです。

もちろんオクルーザルリコンストラクションは治療期間もかかる、患者の負担がかかる事が少なからずあります。
でも原因・治療の目的と計画・ゴールを共有できれば、それが患者の健康につながるものであれば、患者とトラブルになることもない。

では、今回紹介するのは、比較的平易な症例です。写真ありです。
ビフォーアフターの写真を見ていただこうと思います。
患者は、70代男性です。義歯の破折が主訴でした。
当院にて定期的メンテナンスをされています。
しかしそれでも口腔内の崩壊がなかなか止まらない方でした。
実際の写真を見てみると、咬合平面に乱れがあり、義歯を設置するスペースも無い。薄い義歯を何度も作っている。そりゃ何度も壊してもしょうがない、という症例です。
個人的な症例ですので以下は有料記事として設定いたします。ぜひ一度確認していただければと思います。
⇒患者様に確認後、症例をフリーで使用して良いとのことでした!

治療前の口腔内の状態です。
ペリオのリスクは、メンテのおかげもあってそこまで高くないですが、それでも欠損を義歯で補っている範囲は広いです。

義歯を外してみるとわかりやすいですが、歯牙の咬耗が強く、咬合平面に大きな乱れが確認できます。

右側を拡大してみると、臼歯部が挺出し、下顎とのスペースが少ない事がわかります。

左側に至っては、大きく提出し、咬合平面に強い段差を作る原因となっています。

正面観です。咬合平面は臼歯部を中心に乱れ、ただでさえ臼歯は咬合負担が強いのに、そこをこのままにして義歯を作れば、当然のように薄い義歯が出来上がり、さらに当然のように義歯を割っていく。
この患者さんに対しては、まず咬合平面の是正を提案しました。

上顎臼歯部の挺出を、補綴的に是正しています。もちろんまずはプロビジョナルレストレーションにて顎位を模索、安定させています。

右側も

左側も

正面から見ても、咬合平面は真っ直ぐです。

咬合平面を揃え、咬合力を均等に分散させること、さらに義歯のスペースを確保することで、この患者さんの義歯を繰り返し壊すことに対する原因を除去できたと考えました。
この痕は、ピックアップ印象にて義歯とクラウンを同時に作り、特に義歯はリジットとなるような設計をしています。

この程度でもオクルーザルリコンストラクションだと思っているし、この程度なら誰でも出来ると思います。
ただ漫然と1歯単位の治療で僕らの技術を浪費させず、ぜひ1口腔単位で治療計画を練って、患者の口腔内の健康に貢献しようではありませんか!

臨床経験5年の歯科医師です。研修医や若手歯科医師に向けて、何か伝えられることは無いかと日々自分を省みながら発信していきます。