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公募ガイド/せきしろの自由律俳句/年忘れ没句放出/【青】【食事】【花火】【悲しい】+雑感

【青】

プールの底が青く塗られている

床の間にバケツが青い

少女の口の周りは青くない

紙も輪ゴムも青い

壁紙に疲れデフォルトに戻す

なんの機械かわからないが大きくて青い 

信号は緑だといまさら思う

【食事】

よその家で振った塩が出てない気がする

格子裏の席を選ぶ

早く食べ終わって気まずさから解放されたい

彼女が出かけた部屋でグミをだらだら食べている

会計後のごちそうさまでしたが安定しない

定食屋から出てきた女が唾を吐いた

怒りで味がしない

義務のように漬物をかじる祖父

たぶん自分が食べても美味しさはわからないだろう

トレーにうどんの汁が少しこぼれた

【花火】

水を入れすぎたバケツが重い

売り場のラジカセから打ち上げ花火の音

最後にハイペースで消化する

燃え尽きた火をつける部分

筒だけの詰め合わせが怖い

音だけを見ている

あのビルを曲がれば

角を曲がった見えない

花火の切れはしビルに引っかかってる

花火照らす入居者募集中

花火上がる好きな人がいない

花火上がるみんな死ねばいい

花火上がる嫌いなやつばかり

花火上がる飼い犬が死んだ

【悲しい】

短期バイトの人数が減っていく

回るなよペットボトル風車

連載終了に悲しむ人もいるだろう

取り壊された跡に重機の爪のみ

ここに青空と雲の壁紙か

晴天か都会から地元に越す

先生が悲しいと言った

電話ボックスの棚いつから空


●自由律俳句よくわかりません。難しい。表現の仕方にもう少しこだわりたい。

お題【悲しい】の佳作でよかったやつ

俺の死を知らないポチ
(長崎県 しん男 64歳)

作者がまだ死んでないところがまず面白い。犬は死を理解しているのか。ここでいう理解とは人間がなんとなく理解しているつもりの一般的な死の概念。死を本当の意味で理解している人間はいない。たぶん。犬のほうが本質的な死を理解している可能性もある。そもそも犬は自分が死んだことに気付いているのか。まだ自分は生きていると思っているんじゃないか。なにが悲しいのか。無知だからか。自分が死んだと気付かずにそのへんを走り回って飼い主の不在を不思議がる様子を想像すると泣けるのか。いや、なぜか勝手に犬が死んだあとに飼い主が死ぬと読んでいたが、普通に犬は生きていて飼い主が死ぬ、犬は飼い主の不在を理解できない、その悲しみだろう。毎日毎日リードを持って玄関から出てくる飼い主を待ち続ける悲しみ。以前犬が生きていた頃、家を10日ほどあけて帰ると喜んではいたようだが10日ぶんの空白、厚みが犬に感じられなかったのを思い出した。家を出たその日の真夜中に帰ったような、いなかったことに気づいてすらいない様子だった。自分が死んでもこの犬は全然平気だろうとそのとき思った。犬は時間をどう捉えているのか。

この句を読んでこんなことを考えました。ではよいお年を〜。M-1グランプリ決勝進出ランジャタイ。

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