個人的に思う面白いオープンワールドゲームに必要なこと

オープンワールドゲームは厳密にはゲームジャンルの一つではなくゲームデザインの一つである。なので「オープンワールドの〇〇」という言い方になり、たとえばGTAはオープンワールドのアクションゲームであり、THE CREWはオープンワールドのレームゲームである。だがオープンワールドのアクションゲームが大半なので、「今度出るゲームってオープンワールドゲーだよね」という一つのゲームジャンルのような認識なったのではないかと思われる。知らんけど。

そんな定義づけは置いといて、筆者は最近、オープンワールドゲーの良し悪しを決めるものは一体何なのかとふと考えることがある。もちろんきっかけはサイバーパンク2077である。世間の反応はともかく、筆者が実際にプレイしてみたところダメなところばかりではないのだが、やはり褒められた出来のものではなかった。一方で昨年の夏にゴーストオブツシマをクリアしたときはとても満足感と充実感があった。この両者を比較して一つの答えを見つけた。それは「目的」である。

1.ストーリー、主人公の目的

「このゲームはどんなゲームですか?」と聞かれたとき、一言で簡潔に説明できるだろうか。それはつまりゲームそのものもしくは主人公の目的が明確であるかどうかで決まる。ゴーストオブツシマは「主人公の境井仁が蒙古に侵略された故郷の対馬を取り戻すために戦うゲーム」と簡潔に説明できる。一方で、サイバーパンクのストーリーをできるだけ簡潔に説明すると「主人公のVがある仕事をきっかけにトラブルに遭遇して命の危険が迫り、生き残るために奔走するゲーム」となる。これだと、一体どういうストーリーなのかいまいちわからないと思う。筆者もこれを何も知らないまま聞かされても理解できないと思う。だがレリックのことやジョニーのことなど補足すべき説明があまりに多すぎて簡潔に説明することはできない。

なぜかというと、サイバーパンクのストーリーは主人公が一貫した目的のために行動するのではなく、トラブルに巻き込まれ、一見自分の意志で物事を決めているようで実際は他の登場人物たちにとって都合のいいように転がされるストーリーだからだ。強いて言えば「ナイトシティで成り上がりたい」というのが一番はっきりした目的で序盤ではそのために動いていたはずだが、目的がコロコロと変わったり、そんなこと言ってられない状態にまでVが追い込まれるので、途中から「これは何が目的で何をする話だったっけ?」と話についていけなくなることもあった。

なので、ツシマのときはストーリーと主人公の目的がはっきりしていたので感情移入しやすく、ゲームの世界に集中しやすかったが、サイバーパンクはそれができなかった。

2.ゲーム内のアクティビティ、プレイヤーの目的

広いフィールドがあるだけではゲームはおもしろくない。その中でプレイヤーができること、楽しめるアクティビティがいかに豊富に用意されているかで決まる。さらに踏み込むと量が多ければいいというものではなく、何の目的でそのアクティビティがあるのかが最重要だ。

ゴーストオブツシマのアクティビティはメインストーリーの他に拠点制圧・島民からの依頼・温泉巡り・神社巡り・お稲荷様の護符集め・竹割り修行などがある。拠点制圧の目的はもちろん対馬を蒙古から取り戻すためである。元々島民の家屋であれば、開放したあと住民が帰ってきて元の生活に戻ったり、蒙古が築いた場所なら焼き払って更地にするなど、蒙古から土地を取り戻したことがちゃんと実感できる。それ以外のアクティビティは主にアスレチック的なものであり、クリアすると主人公の能力を強化したりアクションを増やすことができる。または景観も素晴らしく、一見するとただの観光巡りだが、ちゃんとゲームの本筋と有機的につながっている。

サイバーパンクでメインストーリー以外のアクティビティは、サイドジョブ・依頼・犯罪組織・暴行現場などがある。サイドジョブは主にVの小遣い稼ぎを目的にナイトシティの様々な住民と関わっていく。依頼相手によってはメインストーリーに深く関わる場合もあるので半メインストーリーに近い位置づけだ。依頼はサイドジョブと紐付けられたものもあるが大半は単発アルバイトの感覚でこなすものだ。犯罪組織と暴行現場はナイトシティの各地域を縄張りにしているギャンググループを始末するアクティビティだ。これらはストーリー性はなく、犯罪組織のときのみ警察からいかに悪い奴らかの簡単な説明を受けるだけだ。この2つのアクティビティを実際にやってみて感じたのは、ただ一方的に敵のギャングを蹂躙するだけの虚しさだった。ギャングを倒すと警察から懸賞金がもらえるのだが、金のためだけにとくに因縁も恨みもない相手を襲うことに意義を感じない。またサイバーパンクのキャラクターの成長システムは、レベルと各アクションを一定数行うことで手に入るパークポイントを振り分けて強化するシステムである。なのでメインやサイドジョブでも経験値やパークポイントは手に入るので、犯罪組織と暴行現場は積極的にクリアする意義が薄いのだ。ただひたすら小銭稼ぎのためにギャングを倒すのは面白みがない上、ゲームの本筋とも関わりのない単調な作業感を感じた。新しく手に入った武器や戦法を試したり、そのときの気分で戦い方を変えるなどでプレイヤー自身が自発的にアプローチして意味をもたせるしかない。

3.自由なオープンワールドゲームにも目的は必要だ

オープンワールドゲームの面白さは自由さだけがあればいいわけではない。むしろ自由だからこそ、はっきりした目的が必要だ。ストーリーとアクティビティの両方にしっかりした目的があることでプレイヤーはやりがいを感じられてゲームを楽しくプレイできる。これはオープンワールドゲームに限った話ではなくあらゆるジャンルのゲームに言えることだと思う。だがオープンワールドゲームではとくにアクティビティの点においてゲームの本筋と上手く結びついてなかったり、単純に面白さがなかったりなどが目立ちやすくゲーム全体の評価につながる。

今回はサイバーパンク2077に関してだが、実を言うとゲーム内の世界観はとても作り込まれている。超高層ビルが並ぶオフィス街や毒々しい工場郡、極彩色のネオンで飾られた繁華街は、80~90年代のSF映画を彷彿させる。このレトロフューチャーなデザインの街並みはただ歩くだけで楽しい。住民も体の至るところを機械に改造しており、主人公もそれを駆使する場面がたくさんある。サイバーパンクの世界観は絵空事のようでリアリティを感じられる。だがその作り込まれた世界観に対してストーリーとゲーム性が追いついていないと感じた。

サイバーパンクは今後、プレイヤーにより長く楽しんでもらうためのアップデートを予定している。しかしバグなどの技術的な問題を多く抱えており、純粋な拡張アップデートはかなり先になってしまうだろう。だがそれが目的を見据えたものであれば、きっと楽しめることだろうし、期待して待ちたい。

それとゴーストオブツシマはPS4時代の終期に彗星のごとく現れた傑作だと思うので遊んでない人はぜひ遊んでみて欲しい。


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