我が家にあの手の問題猫が来た理由はさておき、この家に住んでいる人間より小さき生き物を迎え入れるにあたって考えたことがひとつあります。
　
我が家は他人とのコミュニケーションスキルの低い連中が集まった家庭で、脳の機能障害でもある発達障害持ちで支援と療育が必要な子供が二人と一人の大人で構成されている、一馬力のシングル家庭です。
家庭環境の変遷は死ぬほど複雑でめんどくさいし身バレが怖いので細かいことなどは省きますが(判る人には個人が特定できそうな話だし、事実を書いても中傷になりかねない内容なので秘匿します)、過去の養育環境がよろしくなく、発達障害に加えてトラウマクラスの二次障害がプラスされているというちょっと対応が難しい家庭で、そんな状態での療育のひとつに「小さき生き物の世話をすることで他者との関わり方を学べないものか」と考えたのがきっかけでした。
今思えば大変に安易な考えだったと思います。ペットを飼う程度でそんなに簡単に対人スキルが磨かれるわけなかろうと、今ならわかるんですけどね、あの頃にはそんなことまで考えが至るほど余裕はなかったんです。
障害のある子供達を引き取って育てるってことは、以降、自分の好きなことや趣味に走るゆとりはなくなるってことなんです。しかも子供は二人、逃げ場なし。一馬力ってそういうことなんですよね。実際、養育権と監護権を手放した側って新しい恋人を作ったり趣味や旅行に勤しんでいたりする人が少なくない気がします。
気がするだけですけど。
あぁこの先自分のやりたいことは後回しになるんだなぁと軽く絶望している状況でまともなことが考えられるものなのか？否無理じゃろ。
だから軽々しく「小動物の世話で他者との距離感を掴むぞ、だから猫を飼うぞ(昔飼っていたから勝手知ったるなんたらで)」とか考えちゃったわけです。
いやいやペットの世話なんて簡単に続けられるもんじゃないでしょうよと。
何年何匹飼っても、そこんところは変わらないでしょうが。
なんですっぽ抜けてたのかなあ。
小さき生き物の世話が2から3に増えるだけじゃん。楽になる余地ないじゃん。なんでそこに思い至らなかった自分？

そうして増えた小さき生き物その3。当然お世話は大変で、でも最初に来た保護猫は保護団体のみなさんのおかげで一通りのしつけが施されていたので特に手もかからず楽だったんですよ。
でも半年ほどして次男が小さき生き物その4の捨て猫を保護してきてから一変。家中のどこもがその仔猫のトイレになって、気の休まらない日が始まりまして(笑)。人間の子供なら言葉を重ねて言い聞かせたり理解させたりができるけど、猫はね、無理じゃん。猫は人間の言葉を話せないし理解もしない、気ままに生きる孤高の生き物。ションたれの現行犯のタイミングで叱ってもなんも理解しないでキョトン。
こいつちょっと頭悪いのかも？と諦めて黙って後片付けをすることに意識が向くまでに何年もかかったけれど、それでももう怒ることをやめるということで人間の心の中が凪状態。子供の「他者との距離感」云々の成果はともかく、私の心がだいぶ穏やかになりました、想定外に(笑)。

なんということでしょう！
(この辺で例の音楽がちゃらら〜んと流れてきそう)
若かりし頃には「瞬間湯沸かし器」と呼ばれたくらいに気短で沸点の低かった私、今では大抵のことでは動じない心の太ましい人間に変わりました。まさか自分がこんなに穏やかに怒りを抑えられるようになるとは(笑)。
変わるんか、人間。死ぬまでこういう性質って変わらないのだと思ってた。現に変わらない人を多く見てきたし、自分の両親も変わらないままだ。
　
色々を諦めて「なるようにしかならん」という気持ちになってなんとなく心に余裕ができた、気がします。気のせいかもしれないけど相手に期待をしなくなるとすっきりするというか、眼の前の現実に抗う気持ちが湧いてこなくなるというか、

なんとなく性格が丸くなった気がする。
そんな気がするだけかもしれないけれど。

あまり怒らなくなった。人にも猫にも。

だって怒ったって何かが変わるわけではないし。
怒ることで自分の気は晴れるのかもしれないけれど、根本的な部分ってなんにも変わらないもんなあ。黒い毛玉の家ションだってきっともう治らない。毎日毎日どこかしらに尿を漏らしてはうぎゃあ！ってなるのはもう確定だもの。9歳を越えて最早そろそろ老化が始まったのかも？て気もするし、老化ならもう治る治らないなんて次元の話でもなくなるんだろうし、そういう状況にいちいち怒ってももう意味がない気もする。
その境地。

今までの人生で何度も「変わらなきゃ」と思うことはあって、そのたびに変わることができずに心が折れることが続いていたけど、思いもよらないことがきっかけで物の捉え方や考え方が変わるとは思わなかったですよね。しかもマイナス要素からの一発逆転。普通、逆転はしないじゃん。よりにもよって「尿」だよ？！絶望しかないじゃん、普通w
ただその絶望も極限まで達するとすこーんと抜けちゃうんだなぁと痛感しましたよねw　ここまできたらもう怒る意味ないじゃん、と。
こんなことがきっかけで変わるとはなあ。