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【詩】道しるべ

"好きだということだけ伝えたかった”
そう言ってくれた人がいた
そのとき私は大失恋のあとで
そう言ってくれた人は
私の大失恋の相手の友達だった
そのときの私はやさぐれていて
自分のことを大切に扱えずにいて
ちょうど違う男の部屋にいた
そう言ってくれた人は
女のコと二人でいるところなんて
見たことなくて 真面目で ピュアで
きっと童貞だった
私は社交辞令的に
”ありがとう”
と言ってからすぐに携帯を切って
その人の言葉を鼻で笑いさえした
それからもうずいぶんたって
私は一度もその人に会っていない
だけど愛に迷いそうになったとき
今ではその人の言葉が私の胸に
ふわりといつも舞い降りて
一里塚のように私を励まして
道をたがわぬようにしてくれる
ちくっと胸が痛むけれど
あたたかな私の道しるべ

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