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成人式を迎えても、私たちまだ大人じゃなかった

何が正しいかも解らないし、誰かを非難したり傷つけたりしたい訳でもない。ただ、思ったことを書いておきたかった。

感染症を専門とされるお医者様が書かれたブログを読んだ。

そうだよなぁ、と頭では理解しつつも、自治体により開催されてしまう式典へ「行かないで」と言われて従えるほど、ハタチの頃の自分は大人じゃなかったなぁと省みる。別に行かなくても良かったと思い出すのに、である。「成人式」に行きたかった訳ではなく、その後ろに用意された同窓会が目的だったから。そしてそれが懸念の矛先であることも知りつつ。


大学入学を機に故郷を離れ、案内は届かなかったが、友人たちから情報を得て出身地の成人式へ出席した。式典自体は酷く退屈で心に残る言葉も無く、正直「伝統」だから参加しただけ。出なくて良いならそれでも良かった。この日のメインイベントは式典ではなく「中学校の同窓会」だった。高校こそ愛していたが中学時代のことは全部忘れても良いくらい大した想い出も無く、大事にしたい縁もほぼ無いので、最後まで気乗りはしていなかった。それでも数少ない友人に会いたかったし、殆どつまらなかった奴らの「その後」は多少気になったし、もう一生会うこともないなら最後に顔くらい見ようかなと好奇心をくすぐられたのだ。

結果大して面白くもなく、内輪で会うだけで良かったかもと後悔したのだけど、ひとつ大きな発見があった。大学生と社会人が半々くらいの空間で、学生の方がやはりこどもだったことだ。

一番覚えているのは、姉弟みたいだねと親達から言われていた同級生が、その日の二次会には行かないと言ったことだ。「明日、早いから」「仕事なんだね」「俺も大人になったのよ」こちらは大学2年生、かたや向こうは社会人2年目。自分のずいぶん先を歩いているものだと眩しく見えた彼は、数年後に自ら命を絶ってしまった。その報せを受けた時だけは、会へ顔を出して良かったなと流石に思った。記憶の中の彼は永遠に歳をとらない。

家にある振袖を着付けられ、親戚の美容院で髪を結ってもらったから、お金はかからなかった。今年のこの状況で行かないという選択をしても何の損失も無かっただろう。それでも親が喜んでくれたのは覚えているし、朝早くから出向いた甲斐があったなぁとも思った。だから今では経済を回そうという気持ちも抱くけれど(そもそも呉服店や美容室だけでなくスーツや飲食店だって、思い出になる何かにだって需要がある)当時は思わなかっただろうし、人命と経済(の中にも人命は、生活はかかっている)を天秤にかけることができないのを、不甲斐なく申し訳なく思う。

行かないで、とお医者様がお願いするのは客観的にとても正しい。現状を食い止めたい、打破したいと勿論思っている。しかしそれは新成人に責任を持たせることなのだろうか、とも思う。瞬時に判断を変更すべきなのは、大人であるべきだった。それを新成人に求めなければいけないほどの、この国の有様だ。わりと行政の決定によって動き方を左右される仕事に就いているからこそ、迅速な判断の大切さは知っている。だからこそ行く側ではなく、来させる側の判断が必要だと解っているのだ。

新成人だった自分が全く大人でもない大学生だったからこそ、殊更に抱く気持ち。

自分がハタチだったら、どちらにせよ苦しんだのは想像に難くない。行っていれば「感染した/させたかもなぁ」と悔やむだろうし、行かなければ「成人式って一度しか無いのになぁ」と恨言のひとつでも垂れていただろう。ましてや自分が成人式を我慢したのに家族が罹ってしまったりしたら(現状の感染人数からすると決してあり得ないことでは無い)自分は何の為に耐えたのかと虚しい気持ちになってしまう。だからと言って自分が感染源になった時の後悔だって計り知れない。

「赤信号みんなで渡れば怖くない」というのは良くない例えなのだけど、みんなが止めるなら仕方ないけど「委ねられる」のは判断に迷ってしまうだろう。それは成人式だけではなく、外出自粛云々の全般に言えることでもある。


成人式だけではなく、昨年の卒業式や入学式etc. 延期してあげたかった、やり直してあげたいことが沢山ある。事態が収束したら、自分たちで集まって企画してみるのも楽しいよと伝えたい。そしてそれを大人が、社会がサポートしてあげられる世の中になってほしいし、自分もそう在りたいと誓っている。


どんな選択をしていたとしても(当然対策をして欲しいとは願うけれど)新成人の皆様を心から祝福したい。そして、こんなことに苦しまなくても良い未来を切に祈りながら、今日も自分に出来ることを探して実行していく。かつて新成人だった一人として。

新成人の皆様、おめでとうございます。



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