「第一級福島汚染エリア」設定のススメ

 「何かを得るためには何かを失わなければならない」という都市伝説は、一体どこから生まれたのでしょう?

 そんなことはさておき、こちらの記事について。

抗議を受けた室井佑月「あたしの意見は福島差別になるのだろうか」http://dot.asahi.com/wa/2014072300073.html

 「福島の風評被害を払拭したい」という国の考えも、「なんでわざわざ危ない事故を起こした原発のある福島へ、全国の子どもたちを連れていかなきゃならないの」という室井さんの考えもよくわかります。
 ただ、この室井さんの記事に関しては、哀しいことに話が噛み合ってないなあ、という印象です。

 噛み合ってないもっとも大きな原因は、「福島」という雑なくくりで語っているせいじゃないでしょうか。室井さんも「福島では、線量の高いところも低いところもあるのも知っている」と書いていますが、場所によって状況はちがうのに、なぜみんな「福島」という単位で語ってしまうのか。

 たとえば、海外ではこんなやりとりがあるかもしれません。

日本政府「日本は放射能汚染されているという風評被害を払拭するために、旅行のモデルコースを設定しました」
どっかの国の人「なんでわざわざ危ない事故を起こした原発のある日本へ、自分の家族をつれていかなきゃならないの」

 一部が放射能に汚染されているのは確かだけどそれで日本全体を判断な、と言いたくなりますよね。極端な比較をしてしまいましたが、基本的な構図は福島も同じだと思います。
 たとえば、

 「福島の安全性を知ってもらうために、修学旅行のモデルコースを設定しました」

と書くとかなり不穏当なイメージがありますが、

「福島には確かに危険なエリアもありますが、安全なエリアもあります。福島全体が危険なわけではないということを知ってもらうために、安全なエリアに来てもらうモデルコースを設定しました」

と書けば、だいぶ印象は違うのではないでしょうか。
 室井さんは室井さんで、「福島全体が安全であるかのように言うな」とか、きちんとモデルコースの内容をチェックした上で、「モデルコースに○○が入っているが、ここは安全と言いきれない。こんなところに子どもたちを連れて行くわけにはいかない」とでも言って欲しいところです。

 その場所が安全かどうかは、そこが「福島」かどうかではなく、線量などの数値で判断すべきなんですよね、どう考えても。

 そういう意味では、「福島」の風評被害を無くすひとつの方法は、きちんと数値に基づいた危険エリアを設定し、そこにわかりやすい名前をつけることだと思います。名前をつけることで、人はそれを認識するようになるのですから。
 「第一級福島汚染エリア」でも「東電A級放射能区域」でもなんでもいいので、誰かつくってくれないですかね。本来の意味では「福島」という言葉は入れない方がいいのでしょうが、ここまで「福島」に放射能汚染のイメージがついてしまった以上、あえて入れてしまうのも手だと思います。
 そうしたら今回の修学旅行のモデルコース設定に関しても

国「第三級福島汚染エリアまでを含めたモデルコースを設定しました」
室井「ふざけるな、ボケ! 第三級はまだまだ危険。せめて第五級までにしないと」

といった、非常に建設的な議論になることでしょう。

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