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心のふるさとの在処

昔から「ふるさと」というものに強い憧れを抱いてきた。わたしが持っていなくて、どんなに探してもきっと見つからないと思っていたもの。

探していたもの

九州のとある町で生まれて、すぐに関東に移り住み、その後、幾つかの町を点々としてきたこともあってか、どの町やコミュニティに対しても帰属意識が薄くて、自分にとって「ふるさと」といえる場所が何処なのか分からないまま育った。

ただ、本当はずっと、「ふるさと」と呼べる場所を求めてた。そんな気がします。

だから、大学生や社会人になるにつれ、「○○の生まれです」とか「○○から来ました」とか「○○出身です」とさらりと言える人と出会うと、それだけでもう何だか根っこのある感じがして、羨ましくて仕方がなかった。

心がちゃんと根を張った場所があれば、その先どんな場所にいても、物理的にどんなに離れたとしても、スーッとしなやかに強くどこまでも伸びていけるんじゃないか、とか思ったりして。

「そういう場所を持っているっていいな」と心のすみっこの方で、思っていたのです。

見つけたもの

この度、わたしは一度、東京から生活の拠点を移すことを決意したのですが、東京を去る直前に、改めてこの街の夜景を見渡して、ふと思いました。

「ここが私のふるさとだ」って。

知らないうちに、いつの間にか、東京がわたしの「心のふるさと」にちゃんとなっていた。

生まれた場所という意味ではないけれど、幼少期からずーっと過ごしてきた場所とは言えないけれど、それでも確かにわたしの心が育った場所。いろいろな経験を積んで、今のわたしをつくった唯一無二の場所。

自分は根無草だと思っていたけれど、「ふるさと」って、誰でもいつの間にか手にしているものなのかもしれない。

離れるときになってそのことに気づいて、長年暮らしていたのに気づかなかった自分の鈍感さと、ようやく探していたものを見つけた嬉しさに、ちょっとだけ泣きました。

さらば、ふるさと


きらきら、きらきら。

こうしてガラス越しに遠目に見ているととても静かだけれど、この街で生きる人々のエネルギーの大きさと逞しさを、無数の光が教えてくれる。

旅立つ前に眺めた東京の夜景


このエネルギーに負けないように、今度こそブレずに自分らしく生きていけるように、ちょっと充電してきます。そして、きっとまた帰ってくる。

しばしの間、さらば、ふるさと。

2023.07.16