一大陸周遊記 ①フランクフルト(ドイツ)
~Day0
計画
ヨーロッパに行くことにした。目的はサッカー観戦。
大学生活の合間にJリーグ観戦に行き、帰宅してプレミアリーグ(最近は主にブライトン。フロンターレが好きなので三笘はもちろん好き)を観る日々。いろいろあって5月上旬に資金面の目途が立ったこともあり、夢だったヨーロッパでの観戦をかなえるために計画を立て始めた。
他の活動がひと段落つくタイミングだったのと、ミッドウィークにカップ戦が開催される日程だったので、9月の後半に2週間ほどヨーロッパに行くことを決めた。
時間をかけて対戦カードを吟味した結果、次のような日程で試合を見ることにした。
9月15日 バイエルン-レバークーゼン(ブンデス)
9月16日 マンチェスター・U-ブライトン(プレミア)
9月17日 R・マドリード-R・ソシエダ(ラリーガ)
9月19日 PSG-ドルトムント(CL)
9月21日 ブライトン-AEKアテネ(EL)
9月24日 ブライトン-ボーンマス(プレミア)
※太字のチーム側の席で観戦
結論から言うと今回の旅は失敗の要素の方が大きかったと思っている。その原因の一つがこの過密スケジュール。JFAの海外視察担当もびっくりの日程を組んでしまったことで後々苦しむことになるのだが、対戦カードだけを見れば魅力的な良い計画だったと思う。
手配
当然ながら、上記のような無茶な移動を許してくれるようなツアーなどないので、航空券や宿泊場所などはすべて自分で手配した。
最初に観戦する試合がミュンヘンで行われるため、日本とフランクフルトの往復便をできるだけ安く取った。本当は北京経由が一番安かったのだが、この時期は福島原発の処理水の問題等もあり、次に安かったバンコク経由の航空券を取った。また、ヨーロッパ内で国と国の間を移動する際の飛行機も大体は手配した。
Day1
到着
バンコクでのトランジット(1泊)を経て、9月13日(金)の20時ごろにフランクフルト国際空港へ到着した。バンコクからは約11時間半のロングフライトだったことに加え、時差ボケ対策で機内で寝なかったため、かなり疲れている状態での到着になった。
ヨーロッパ最初の関門になったのがフランクフルトでの入国審査だった。各ゲートに警察官がひとりずつ座っていて審査を行うのだが、どう考えても自分が並んだ列だけ進みが悪い。ようやく自分の番になって分かったのだが、担当の警察官が一人の審査を終えるごとに隣のゲートの女性警官とお喋りを楽しんでいる。
ふざけんなよお前。その人と喋りたいだけだろ。
しかもこの警官、びっくりするほど英語が聞き取りづらい(Hotelという単語を聞き取るまでに4回くらい聞き直した)。そのくせ持ってる現金全部出して見せろ、宿泊場所はどこだ、いつどうやってドイツから出国するんだ、他にもいろいろとたくさん聞いてくる。ようやく審査をパスしたころには並び始めてから20分以上経っていた。
思わぬ洗礼を受け、心身ともに疲れ切った状態で市内へ向かう。フランクフルトは空港から中央駅までが近く、電車で15分程度で着いてしまう。スマホで調べたページなどを参考にしながら、切符を買ってスムーズに移動することができた。
フランクフルト中央駅から歩いて15分ほどのところにあるホステルに到着。4人部屋にチェックインした。先客と雑談してから就寝。深く眠れるとまではいかなかったが、疲れていたこともあってある程度長時間の睡眠をとることができた。
Day2
アラートの洗礼
朝起きて、ホステルをチェックアウト。その前に観戦予定のR・マドリードの試合のチケットを買おうとしたのだが、クレジットカードの決済がうまくいかなかったのでまた次の機会に。
この日は夜に出発するバスに乗るまで特にやることがなかったので、フランクフルトを観光しつつのんびりしようと思っていたのだが、結果的にはかなり多くの事件が起こった日だった。
まずはフランクフルト中央駅まで戻り、フードコートのようなところでのんびりコーヒーを飲んでいたのだが、なにやら周りで緊急地震速報のようなアラームが鳴っている。何の音かわからないので適当にきょろきょろしていたら、突然自分のスマホが同じ音で爆音で鳴り出した。
緊急地震速報かと思った。が、地理選択だったのでこの辺にプレート境界がないことはわかっている。さてはロシア-ウクライナ系の何かか?
まあ今思い出しても恥ずかしくなるくらい考えすぎなのだが、本当にここまで考えていた。見知らぬ土地で一人きりでいるときに突然携帯が鳴り響くのを想像してみてほしい。とにかくとても怖いということは理解してもらえるのではないだろうか。
アラートに伴ってきていた通知のドイツ語をDeepLで日本語に翻訳したところ、どうやら年1回(?)行われるアラートのテストだった模様。こういう心臓に悪いイベントはガイドブックの最初のページに大き目に書いておいてもらいたい。
親切と悪意
いよいよ観光に出かけようと思い、リュックを駅のコインロッカーに預けようとしたところで問題が発生。ロッカーの料金が3.5€だったのだが、どうやら2€硬貨、1€硬貨、0.5€硬貨をそれぞれ1枚ずつ入れないと鍵が閉まらない構造になっている様子。その時持っていた硬貨は2€硬貨2枚だったので、困ってしまった。
どこかで何か買ってお金を崩してから来るしかないかと考えていたら、なんとそこを通りかかった見知らぬおばあさんが1.5€くれた。しかもお礼に2€渡そうとしたら、それはいらないと言う。なんて優しいおばあさんなのだろうか。最初何かの詐欺かと思って警戒してしまってごめんなさい。まじでありがとう。
とまあこれ自体は最高のエピソードなのだが、このおばあさん以外で声をかけてきた人は何とかして小銭をせしめようとしてくる奴らだった。数時間で計3回。話しかけてくる内容も多岐に渡っていた。
「家に帰るために小銭が必要なんだ、いくらか持ってないか、兄弟」
「子供にご飯を食べさせたいからコインを頂戴」
「煙草を買いたいんだが金がないんだ、この袋にコインを入れてくれ、紙幣ならなお良いぜ」
駅は汚いし、トイレは有料(当然汚い)だし、挙句の果てにこんな奴らが声をかけてくるので疲れてしまった。当然お金をあげるわけにはいかないので最初は英語でいろいろな断り方をしていたのだが、途中からめんどくさくなってできるだけ英語っぽくない発音での「のー いんぐりっしゅ」の一点張りで済ませた。
観光する場所はレーマー広場とマイン川くらいしかなかったので、2時間もあれば十分だった。そうすると暇になる。この日は24:40発の夜行バスでミュンヘンに向かうので、この時点で7~8時間は余っている。駅で時間をつぶしてもよかったのだが、上記のような理由で全く快適ではないと判断し、切符を買って空港に行き、そこで時間をつぶすことにした。
暇だったが、何とか22時過ぎまで時間をつぶし、もう一度中央駅まで戻る。空港で買ったサンドイッチを食べ、24時ごろに駅からすぐのところにあるバスターミナルに向かう。
ここにも聞き取りづらい英語でコインをせびってくるおじさんがいたのだがそいつの要求を何とかごまかし、バスを待つ。バスは出発時間の直前まで来ないようで、遅れている便もある。遅れているなどのアナウンスはなく、ただバスが来ないだけなのでなかなかの緊張感が漂っている。
ウィーンに向かうのだというおじいさんと少し仲良くなったが、この人も相当イライラしていた。
「時間を守らないなどありえない!時間というのは人生で、家族で・・・」
「金だよね(寒いし疲れているので超適当)」
「そうだ、金だ!お前若いのに良いこと言うな!」
このおじいさんもいい人で、ミュンヘン行のバスが先に来た時に笑顔で肩を叩いて「Good luck!」と見送ってくれた。基本的にあまりいい思い出のないフランクフルトだが、最初に出会ったおばあさんがコインをくれて、最後に出会ったおじいさんが優しい人だったので良かった。
バスに乗り込むと、予約したはずの席に総合格闘家みたいなおっさんが座っている。さすがに疲れ切っており、わざわざ退けというつもりにもならなかったので空いていた隣の席に座り、目を閉じた。
おまけ
タイトル「一大陸周遊記」はイブン=バットゥータの旅行記から。彼はヨーロッパ方面には足を運んでいないけれど。ちなみに「西方見聞録」と迷った。
次回はミュンヘン編、アリアンツ・アレーナで泣いた話。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?