SONICMANIA 2018 に行った

大型フェスや恵比寿LIQUIDROOM以上のサイズのライブハウスには全く行かない。10代の頃に数回ほど大型フェスには行ったことはあるが、楽しみ方がイマイチわからなかった。それから都内の小規模なライブハウスやクラブに行く楽しみを知った自分はそういった大型イベントとは無縁の人生を送ってきている。

音楽の評価と作家の人格は分け隔てるべきか否かは頻繁に議論になるが、自分は音楽と作家の人格が一切結びつかない。高校生の頃、ある音楽のイベントでよく作品を聴いていた作家を偶然見かけたが、彼がその音楽を作っているのだという実感は一切湧かず、彼に対する興味も湧かなかった。

何が言いたいかと言うと、自分はステージに立っている人間が誰だろうと関心がないので有名アーティストのライブを観に大勢の人が集まるタイプのイベントには基本的には行かない、という話だ。今年の夏も大型フェスとは無縁の生活を送るのだろうと思っていた。

ただ、少し前にフジロックの生中継を見て、たまには行ってみてもいいかなという気持ちに。偶然にも8月中旬に入っていた予定も無くなり、友人からソニックマニアに行かないかと誘われ、これも一つの運命かなと思い、行くことにした。

会場到着まで

一緒にいく友人と大好きなクラフトビール屋のミッケラーで飲み、軽くご飯を食べてから会場に向かい始めた。深夜の移動は人の感情を無条件にアッパーにさせるところがある、ワクワクしながら電車を乗り換えて会場に少しずつ近づく。ソニマニに向かっているであろう人も増えてきて、知り合いとも会うようになる。

ソニマニで面白いなと感じたのは客の層の広さである。層の広さというよりかはバックグラウンドの多彩さかもしれない。老若男女、各々が好きであろうアーティストのTシャツを着ていて集まる模様を見るのは結構好きなのだ。目当てもなくコミケに行くことがあるが、やはり似た光景を目撃するためである。

結構な数の知り合いにあった。大学の後輩もいれば、クラブであう友達もいる。明日の叙景で遠征した時にライブを観てくれたお客さんとも会う。こういう機会はなかなかないなと嬉しくなった。

特に印象的だったアーティストについて、簡単なレポートを書く。

Cornelius

小山田圭吾が関わっている音楽で、きちんと腰を据えて聴いたことがあるのはFlipper's Guitarの『Camera Talk』のみだと思う。高校の卒業式後にクラスの人たちと行ったカラオケで恋とマシンガンを歌ってシラけさせて以来聴くのがつらくて聴いていない。

ライブは音楽ときっちり同期したVJと照明演出が最初から最後まで徹底していた。
全く曲は知らなかったが、リズム隊のタイトな演奏とメンバーそれぞれが放つ音楽的なアイディアが初見でも十分魅力的であった。ドラマーが特にうまい。バンドという演奏形態を最大限生かすとはこういうことだなと深く納得し、はやく自分もスタジオに入りたいという気持ちになった。バンドという演奏形態でやり残していることは無限にあるな、と思わせてくれるバンドはそうは多くない。

ギターがラウドでリズムの展開が多い曲もあり、デスメタルを感じる瞬間があった。ニヤニヤしながら横を向くと友人達も同じことを思っていたみたいで顔がニヤけている。こういう共有は音楽の体験として大事だなと感じる。

最後は最新アルバムから1曲目「あなたがいるなら」を演奏。ソニマニの帰りは頭痛と眠気が酷くて音楽を聴きたいと思える状況ではなかったが、家の近くの公園でこの曲だけは一度聴いてから帰った。自分の作る音楽には詩がないという事実に改めて向き合いたいなと思いつつ。

いま、Youtubeを検索してみたらSónarでのライブ映像がアップロードされていた。演奏内容としてはこれとほとんど同じだった。


THUNDERCAT

Thundercatは今回のソニマニの本命。George ClintonからDJの流れを楽しみつつ少しずつステージ前方に向かって場所を確保した。普段の生活の中で10m以上先を長時間眺めることがなく目が悪い自分は目と首回りにすでに疲労が溜まっていた。ここからの時間は後ろで座るか前の方で観る以外には不可能だなと思った次第。

機材が搬入され、特にサウンドチェックも行われず、Thundercatとバンドメンバー2人が登場。本人はドラゴンボールのベジータ風(?)コスプレで登場していたみたいだが目が悪い自分は気づかず、周りの客の話を聞いて漸く気づいた。

ドラゴンボールについては幼少期に断片的にアニメを見ていたがストーリーや固有名詞は全く覚えていない。熱いはちみつのようなもので満たされた巨大なツボの中に誰かが入っていき、ツボの底に正六角形のパーツを嵌めるシーンは覚えている。この話は特に音楽とは関係ない。

曲名が覚えられず、今更照らし合わせるのも面倒なのでその点は省くが、開始早々名盤『Drunk』の曲を1.5倍速くらいで演奏していて笑った。それから少しインプロを挟みつつ、A Fan's Mail(この曲名は覚えている)などアルバムの曲を演奏した。

とにかくテクニカルな生演奏である。スリーピースのバンドではあるが、3人がこれでもかと音を連ねるので轟音として聴こえる瞬間もある。ローが出ていて気持ちよかったが少々分離が悪く何が起こっているのかわからないところも多かった。一緒に来ていた友人が引き合いにYngwie Malmsteenの名前を挙げていたが、言い得て妙である。

特筆すべきは彼の歌声の美しさ。ラウドなバンドアンサンブルの中から光が射すように抜けてきた。もっと彼の歌声にスポットライトをあてたライブも観たかったなとは思う。

英語のMCがいまいち日本のオーディエンスに伝わっておらず、またシングロングを促すも歌えない場面などがあった。サマソニでのChance the Rapperのライブでも同じようなことが起こったらしいが、この点をどう考えるかは視点も要素も多いので結論は出せない。実は、自分がやってるバンド、明日の叙景においても今年に入ってから言語に気をつかう場面が増えた。言葉の違いが受け取り手にとってどれ程の影響があるのか、個々の感じ方は異なることを前提に考えていきたい。

MY BLOODY VALENTINE

Thundercatを見終えたあとは、爆音と話題のマイブラを観に移動。到着したときに名盤『loveless』の1曲目only shallowが始まってぶち上がる。

確かに爆音ではあったのでイヤホンをしながら後ろの方で聴いていたが、非常に心地よく曲が判別可能な「聴ける」音だった。はっきり言うと彼らを頭から観るか単独公演を観るべきだったと後悔した。

「soon」「Nothing Much To Lose」など聴けて感激(曲名調べた)

Alcestのライブを観た時と同じ感想で、リズム隊の演奏能力が非常に高くて、かつ竿隊もがっつり演奏している印象だった。結構、シューゲイザーは演奏が下手でも成り立つと思われがちだが、オリジナリティのある絶妙なフレージングをライブできちんと再現する上手さとリズム隊のグルーヴはライブパフォーマンスでは必要だなと思う。

91年の来日公演でモッシュをする人が現れた、なんて噂を聞いたことがある。正直嘘だろうと思っていたが、想像以上にラウドで思わず体が動いてしまうグルーヴがあったので、本当かもなと思った。

My Bloody Valentineの良さに完全に目覚めてしまったので、アルバムをきちんと聴き込んで次に観る機会があれば観たい。Sueisfineとsometimesを聴きたい。

電気グルーヴ

マイブラで完全に力尽きてしまったので、サウンドチェック時からぐったりしていた。正直言うと今回のソニマニでダントツで音がよく、体力があれば死ぬほど踊っていたところだったが座り込んでしまった。結構知っている曲もやっていたが、断片的にしか覚えていない。拾おうとすればするほど記憶が奥底に消えていく...。

音の細かい話だが、TB-303のピヨり方やBreaksの処理がもう気持ち良いところを全ておさえていた。石野卓球のDJに対して、「彼のプレイにはエゴがない」と言っていた友人がいるが全くその通りで、ひたすら心地よい音だった。

最近の石野卓球のソロリリース『LUNATIQUE』『ACID TEKNO DISKO BEATz』もかなり聴き込んでいるし、お気に入りなのでまた別の機会で彼らのライブを観たい。

まとめ

最初に記した通り大型フェスには慣れていないので、やはり必要以上に疲れてしまったが、新しい発見は上記の通り多い。

音楽以外(VJ、照明、移動など)の情報量がとてつもなく多いので音楽に使える自分のキャパシティが充分残っていなかった感じもあった。また、これは結構言われていたことだが、どのアーティストのライブを観るか迷ったり移動するのも疲れた。

やはり自分の体力のなさが際立ってきたのでこの夏はプールで泳いだりしようかなと思う。

大型フェス自体は「価値観の見本市」と捉えてたまにいくことにする。





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