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23年桜花賞を振り返る~積み上げた9年の経験値が引き出す異次元の末脚~

毎週金曜、どのレースも木曜に枠順出してくれねーかなと思いながら仕事している。俺は心穏やかにアメトーークが観たいんだ。

仕事上金曜にある程度予想しないといけないんだけど、枠も出てない中で予想するのって結構大変なんだよね。枠が決まっていない中、頭の中でレース展開を想像して、並びを考えて…

それで想定と全然違う枠出てきた時の悲しみ…これが全部木曜に枠出てくれれば、時間掛けて考えられるのになと思う時は多々あるんだよ。

その点、桜花賞とか、一部のGIはいいよね。木曜に枠が決まってくれるから考える時間がある。ありがたいレースの一つだ。

しかも今年の桜花賞は枠順から、いかにも面白いレースになることを約束されたような並びだったんだ。

よくマスクは回顧で『強い馬の後ろ』『上手い人の後ろ』は有利なポジションになると書いてきているが、今年の桜花賞の枠はすさまじい。

桜花賞の内枠
①ブトンドール 池添
②ライトクオンタム 武豊
③リバティアイランド 川田
④ドゥアイズ 吉田隼
⑤ハーパー ルメール
⑥モズメイメイ 和田竜

最内から池添、武豊、川田、吉田隼人、ルメールと並ぶ枠順。しかもその外に逃げそうなモズメイメイ。

こんなの絶対ポジション争いが面白くなるよね

まず間違いないレースが見られるんじゃないかと、マスクは木曜の14時過ぎから日曜の15時40分まで、クリスマスを目前にした4ちゃい児のように心をときめかせていたんだ

今年の枠順のポイントとして挙げたのがこの6点。前述した部分がポイントの3番にあたるのだが、もう1つ、大きいポイントと見ていたのが1番目、『今週からBコース』であることだった。

京都改修の影響で1回、2回の阪神開催が長くなったことから、2年前より、Bコース開幕週がそれまでの大阪杯から桜花賞に移った

これについては先週の大阪杯回顧で書いているから省略させてもらう。マスクは今オールスター感謝祭の後夜祭を見るのに忙しいから、Bコースに変わる仕組みについて改めて書くのが面倒くさい。

Aコース最終週だった先週、ジャックドールが1:57.4という速い時計で大阪杯を逃げ切った。8週使ったのにこれだけ速い時計が出るくらいうちの状態がいい。

となると、コース変わりした桜花賞週はもう内が圧倒的有利になるとその時点で予測できる。

4月8日 阪神11R阪神牝馬S
1着橙 サウンドビバーチェ 浜中
2着白 サブライムアンセム 岩田望
3着黒 コスタボニータ 鮫島駿

予測通りの馬場が出てきた。これは土曜の阪神メインの阪神牝馬S。ただでさえ内有利馬場なのに、前半600m36.1-後半600m34.2という後傾ラップ。直線向かい風。

外を通る差し馬が来れるわけもなく、内ラチ沿いを通った馬と前に行った馬で決まってしまった

4月8日 阪神6R 1勝クラス1200m
1着黒 カンチェンジュンガ 藤岡康
2着赤 ベルビューポイント 川田
3着緑 イイヒニナル 酒井学

これは土曜6Rの1200m。こちらもメイン同様、内ラチ沿いを走る馬と前に行った馬で決まっている。一周コースで緩急ある流れならまだしも、ワンターンで流れるレースは基本イン、そして前という馬場だった

こんなにも内目有利な馬場で、断然人気のリバティアイランドが内枠3番、その周りには武豊、ルメールといった名手が並ぶ…

リバティアイランドがいかに捌くか、周りの有力馬、有力騎手がいかにリバティをマークするか、見どころが多くなりそうな予感しかなかった

以上のポイントを頭に入れつつ、今年の桜花賞を見ていこう。

桜花賞 出走馬
白 ①ブトンドール 池添
紫 ②ライトクオンタム 武豊
黒 ③リバティアイランド 川田
青 ④ドゥアイズ 吉田隼
赤 ⑤ハーパー ルメール
茶 ⑥モズメイメイ 和田竜
黄 ⑨コナコースト 鮫島駿
水 ⑩エミュー 松山
緑 ⑫シングザットソング 岩田望
灰 ⑬ドゥーラ 戸崎
橙 ⑭ペリファーニア 横山武
桃 ⑰ラヴェル 坂井

スタート。リバティアイランドのスタートがそんなに速くなかった

マスクは色々考えた末リバティアイランドから買ったのだが、このスタートを見た瞬間、あ、終わったと思って近くにあった煎餅に手が伸びた。

袋を開けようとしても手が震えて簡単に開かない。あれ、もう少し開きやすいパッケージになったりしないか?

終わったと思うよね。前述したように今週からBコース変わり。ラチ沿いの状態が良く、前が簡単には止まらない状況

当然内がいいのはジョッキーも知っているから、内に密集する。馬場のいい内を通そうとすれば当然詰まるリスクは高まるし、大外に持ち出すと今度は馬場のいいところを通れない。リバティアイランドは文字通り、最初からクライマックスだった。

内枠同士の究極の心理戦を予想していたマスクは、この時点で桜花賞の回顧何書こうか…前振りもう書いちゃったしなあ…というか煎餅の袋開かないんだけど。などなど、一瞬、完全に上の空でレースを見ていた。

川田はレース後「ゲートが開いてからあまり進む気がなかった」と話しているが、リバティアイランドは1度レースを使うとテンションが上がりやすい。春のGI連戦に備えて、休み明けの今回は調教からそこまで攻め込んでいなかったんだよね。

テンから遅かったのはこの影響もありそう。「返し馬に行ったらスイッチが入っていました」と川田が言うように、たぶん川田ももう少し馬が出ていくと思っていたんだろうね。

実際その後「じゃあどうして行こうかというところでした」と話している。俺もどうして行こうかと思ったよ。煎餅の袋はまだ開かない。

前に目を移そう。リバティアイランドこそスタートからイマイチ進んでいかなかったが、他の内枠は大体いいスタートを切って、先団を形成していた。

画像から分かるように、3枠以内の6頭中、リバティアイランド以外の5頭がみんな真ん中より前にいる

しかし内枠たちが困ったのは、黄コナコーストが外の2番手を確保しにいったことだ。

コナの鮫島克駿くんが「時計が出やすいイン有利の馬場だったので、思い切って、積極的に、この馬の力を出し切ることを考えました」と、いかにも鮫島駿らしい考えで積極策をとったことにより、コナに前に入られた紫ライトクオンタムあたりがポジションを下げる

パトロールで見てみよう。前から見ても分かるね、茶モズメイメイがハナ、その外に黄コナコーストがつけたことで、紫ライトクオンタムの武さんがポジションを1列落とし、白ブトンドールより少し後ろになっている。

ここで考えないといけないのが、青ドゥアイズの隼人の思考だ。

内ラチ沿いが走れる馬場、そしてより前にいるのは白ブトンドール。確かに現時点でこちらのほうが前だが、ブトンドールはマイルが持つのか微妙。

対して現在いるのはライトクオンタム武豊の真後ろ。『武さんの後ろはべスポジになりやすい』とは回顧でもう何度も書いてきたことだ。

隼人が選んだのは武さんの真後ろだった。多少列が落ちても武さんの後ろで溜める手を選んだんだよね。

しかしここで隼人にとって不運がやってくる。緑シングザットソングの望来が動いたのだ。黄コナコーストと紫ライトクオンタムの間に割り込んできたのだ。

前述したように、土曜の阪神芝は内ラチ沿いを通っていた馬が上位に来ていた。阪神牝馬Sなんかまさにそのいい例なんだけど、スクロールしてもう一度阪神牝馬の道中の画像を見てくれ。

望来が騎乗したのは最内枠のサブライムアンセム。枠が枠だったとはいえ、道中内ラチ沿いを走って好走している。望来には当然このイメージがあるし、できれば内ラチに近いところを走りたいと思っていたのではないかな。

この緑シングザットソングの望来の割り込む動きによって、紫ライトクオンタム武さんのポジションが更に1列下がる。

当然その真後ろにいる青ドゥアイズのポジションももう1列下がってしまう。この時点で後手に回ってしまったんだ

もちろん望来の動きが裁決に掛かるとか、そういうことはない。よりラチ沿いを求めた動きであって、特に何か悪いわけではない。

緑シングザットソングの望来は更に内に行く。内を見ながら、ついには茶モズメイメイと白ブトンドールの間に入っていったんだ。

いるよね、運転中にこうやって車間に入ってくる車。マスクの経験上こういう入り方してくるのは、マツダに乗ってるおっちゃんが多い

内ラチに入った結果、ブトンドールも1列ポジションが下がる。シングザットソングはライトクオンタムを始めとする内枠の馬達のポジションを下げて、最後は自分も下がっていくことになる。ある意味このレースのポイントになる馬だった。

さて、ここでその頃の川田将雅くんの様子を見てみよう。

エミューの後ろにおる…

エミューの後ろに馬が5頭もいることに驚きを隠せないが、そのうちの1頭がリバティアイランドになるとは夢にも思わなかった。

ここで問題なのは『エミューの後ろ』である点だ。あくまで客観的に見て、エミューが自分から仕掛けて上がっていくだろうか。

正直それはないよね。フラワーCで騎乗したデムーロが桜花賞の依頼を断った馬。自分から上がれるほどの実力はないし、そもそもこの距離は少し忙しい。

するとその真後ろにいるリバティアイランドは動けない。川田の最初のコメントではないが、俺もじゃあどうして行こうかと思っていた

まー、出るだろうなとは思ったが、やはり今回も『馬が強かっただけ』というご意見ご感想がネットの海には流れている。

あえて言わせてもらおう。これはジョッキーが冷静で、焦っていないからできた差し切りである、ということを。

こちらの画像は1つ前の画像を正面から見たところ。この時点で黒リバティアイランドは水エミューの真後ろにいるのだが、黒丸で囲んだように、思い切り内を開けているのが分かる。

前述したように、今の阪神は内が有利。普通だったら内ラチ沿いから上がっていくものではないか

確かに内ラチ沿いは有利なんだけど、それでも今日は開幕週ではない。連続開催9週目で、内はボコボコしている。Bコース開幕週とはいえ内より真ん中、真ん中より外のほうが走った馬は少ないわけで、当然その分馬場の凸凹はマシ。

道中なるべくボコボコしていないところで脚を溜めたいという意図、そして内の馬がアクシデントで下がってくることの回避という意味合いもあるんだろうね。そう判断して、川田は早々と内を捨てている

3コーナー。水エミューがロスなく運ぶために内ラチに入っていく中、黒リバティアイランドの川田は追いかけない。周りが動いているのに動かないのだ。

むしろ桃ラヴェルを前に行かせてすらいる。普通なら後ろに置かれた時点で、なるべく距離を詰めようと思うよね。少なくとも俺はそう。流れ自体は結構速いんだけど、焦るよ、普通。

Bコース変わりで内がいい状況で、前も簡単には止まらないのはファンも、川田もよく知っているはず。これだけ偏ったレースを見せられたら多くの人間が知っている。

なのに前のエミューが動いたのに、動かず待ち続ける川田の冷静さが怖い。何このメンタルおばけ

川田は瞬間的に判断したんだよな。確かに水エミューの後ろをついていけば、内有利の馬場を『少しは』通れる。

しかしエミューが伸びない可能性は低くない。そんな中でエミューの後ろにいたらうまく加速できない。

かといって3コーナーで外から追い上げていくとなると、内有利の馬場とは逆行したレースを強いることになる。動くだけで不利になる。

だから川田は3コーナーで動かず、桃ラヴェルの真後ろで待っているんだ。後からこうしてパトロールを見ながら振り返れば大正解の待ちなんだけど、これをレースに乗りながら判断する難易度の高さは相当。

3コーナー出口。確かに黒リバティアイランド川田の選択は正しかった。水エミューが内ラチ沿いにいるが、その前にいるのは、シングザットソングなどの動きによって更にポジションを悪くしたドゥアイズ。

内に入っていっても前が邪魔でポジションは挙げられなかっただろうし、詰まって終わっていただろう。

ここでもう一つ見ておきたいのは、灰ドゥーラの存在だ。

これは3コーナーの入り口。お分かりだろうか、灰ドゥーラが外から上がってきているのだ。

ドゥーラは途中まで最後方にいたんだけど、3コーナーで外から上がってきたんだよね。この馬はビュンとキレるような馬ではなくて、長く脚を使うタイプ。早めにエンジンを吹かしていかないといけない。だからこそ動いていった。

するとこのような3コーナー出口の隊列になる。黒リバティアイランドは『わざとドゥーラを行かせている』のだ。

これも先ほど書いたものと一緒。内有利馬場で早めに外から動くのはリスクでしかない。リバティアイランドは新潟とはいえ、新馬で上がり3F31.4という、にわかには信じがたい数字を叩き出したように、ギリギリまで待っても爆発力がある。

前のラヴェルは簡単に下がってこない能力があるという、ラヴェルに対する信頼、そして川田のリバティアイランドへの信頼が為せる業とも言えるが、ここまで待てるか普通。

4コーナー。残り600m手前で黒リバティアイランド川田が動いた。灰ドゥーラを完全に行かせた後だ。

横から見るとロスの違いが分かる。ドゥーラは外から馬群が固まったところを上がろうとしているが、内有利馬場のコーナーでこんなロスのある競馬をやってしまっては、どうしても最後止まってしまう。

ここでラップの話も軽くしておこうか。

●23年桜花賞 1:32.1
12.1-10.4-11.5-11.9-11.7-11.4-11.3-11.8
34.0-34.5

前半3F34.0というタイムは、過去10年の桜花賞で2番目に速いタイムなんだ。

ちなみにチューリップ賞は35.2-34.1。モズメイメイはチューリップより1.2秒速いペースで前半入っている。まー、GIだしね。それにしてもちょっと速く入り過ぎだが。

速めに入った分、どうしても息を入れたい。その分、太字にした3、4コーナーの部分のラップが他に比べてちょっと遅い

3、4コーナーで前が息を入れたことで、後ろが追い付いて馬群が少し凝縮したんだよな。凝縮した中で外を回すと、更に大きな距離ロスになる。実際ドゥーラはかなりしんどい展開だ。

しかしドゥーラを行かせて、4コーナーでも仕掛けを待っていたリバティアイランドは余計な脚を使っていない。これが最後の爆発力に繋がることになる。よくできてるねホント。

内目の動きも見てみよう。これは4コーナー。

内に緑シングザットソング、白ブトンドール。外に橙ペリファーニア(ようやく出てきた)、赤ハーパー。

本来であれば内有利馬場だけに有利になるポジションはシング、ブトンのほう。ただ前述したように、今年の桜花賞の前後半3Fは34.0-34.5

34.0という入りのタイムは、昨日の阪神牝馬Sの前半3F36.1よりなんと2.1秒も速い。これだけ前半から流れちゃうと当然追走する側はスタミナも必要になるんだけど、シングも、ブトンドールも、どちらも1400mのフィリーズレビューからの距離延長だったんだよな。

本来有利になるであろう内追走組が、どれもスタミナ面に課題を残す馬たちだったこともまた、今年の桜花賞の結果を分けたポイントだったと思う。

内目の馬たちが上がらないことでその後ろにいる青ドゥアイズが動けない中、橙ペリファーニア、赤ハーパーはそこまで外目ではなく、なおかつずく外に出せるところを追走している。このポジションの差は結果にダイレクトに繋がることになった。

紫ライトクオンタムは難しいレースになったね。序盤上げた画像ではいいスタートを決めて前目にいたが、コナコーストに前に入られ、シングザットソングに前に入られ、どんどん後ろに下がる形。4コーナーでは8番手以下まで下がってしまっている。

道中周りを囲まれてしまって口向きが怪しい。VTRを見ると分かる。3コーナー入り口付近。これは映像のほうが伝わる。

これは今年のシンザン記念。黒ライトクオンタムは道中5番手を追走している。見て分かるように、外に馬がいない。周りを囲まれていないのだ。まー、7頭立てだったし仕方ないんだけど。

ライトクオンタムは新馬が逃げ切り勝ち。2戦目が7頭立てのシンザン記念で揉まれず。これまで多頭数で、周りを囲まれる経験が一度もなかった

レース後に武さんが「ちょっとゴチャゴチャするポジションになり、それが初めてだったので、戸惑いもあったのかな」と話しているのだが、要は経験不足だよね。キャリアの浅さがモロに出てしまった。

だったらもっとレースを使えば良かったのではないかという声も上がりそうだが、この中間も休み明けなのに調教でそこまでハードにやられず、にも関わらず体重は前走と同じ428kg。馬体も相変わらず細身でテンションも高め、こんな馬を1カ月間隔で使えない。

揉まれないようにもっと出していけば良かったのではという声も上がりそうだが、ここまでのキャリア2戦、どちらも自身の前半3Fは36秒台。今年の桜花賞は前半34.0

これまでのレースより2秒も速いペースで走らせるのは難しいよね。出してもいけないし、周りを囲まれた時点で終わりだった。内枠が完全にアダになってしまっている

再び外を見ると、外から動いた灰ドゥーラの真後ろを、流れるように黒リバティアイランドが追走していく。

ここまでスタート以外一切ロスがない。あとはエンジンを点火するだけという状況だ。

黒リバティアイランドがスムーズに外に出す中、内目はゴチャついていた。

橙ペリファーニアは楽な外に出せたものの、黒ドゥアイズ(ごめんここだけ間違って黒にしちゃった)はまだ周りを囲まれている。

右前に白ブトンドール、前に緑シングザットソング。2頭が伸びてくれればいいが、速いペースを追走してきたこの2頭に余裕はもうない。

最初、青ドゥアイズ隼人が狙ったのは、青丸をつけた部分、シングザットソングの内側だった。

まー、左前のトーセンローリエ和生が少し内に来ていたし、そうなると右前に進路を取るのは仕方ないところだったかな。

ところが右前にいたブトンドール池添が右ムチを叩いているのが分かる。これでブトンが自分から見て左側、ドゥアイズ側に寄ってくる。

青ドゥアイズの隼人はそれを考慮したか、今度は自分から見て左手側に馬を誘導する。緑シングザットソングの外側だね。

確かにこの時点で少しスペースも空いていたし、切り換えるという選択は妥当だったとは思う

しかしよく見ると緑シングザットソングの望来は右ムチを叩いているんだ。すると、シングはムチとは逆側、外目のほうに寄っていく。

これで青ドゥアイズの進路はなくなってしまった。最初から最後までシングザットソングにやられちゃっているな。

別にシングが斜行したわけでもない。フラフラはしているが。こういう時に直線まっすぐ下がる武さんやベテランの動きが助かるんだよね。フラフラしないから、後ろも交わしやすい。

あくまで結果論だけど、青ドゥアイズの進路の正解は、緑シングザットソングの望来が右ムチ叩いている以上、正解はシングの内、青丸をつけた部分のほうだったんだよね。

しかしシングがいつまで右ムチを叩くか、後ろのジョッキーは分からん。もしかしたら左ムチに持ち換えて、内に戻ってきたかもしれない。正直隼人はあまり責められないところではある。

外から、前に壁もないところをただひたすら伸びてきた黒リバティアイランドと比較すると、よりうまく捌けていない点が目立ってしまうなあ。

最後、青ドゥアイズはもう赤ハーパーの外から出てくるような状況だからね。結果は5着。もったいないレースになったのは間違いない。

レース後隼人は「イメージしたところで運べました。反応してくれているのですがジリジリでした。脚は使ってくれています。距離が延びていいタイプだと思います」と話している。

イメージしたところというのはたぶん、武さんの後ろという意味もあってのことだろう。隼人の言うように、マイルで狭い馬群を一気に割るような脚がない以上、根本的にマイルは忙しいのだろう。

操作性はいいタイプだけにオークスは合いそうだが、ここまで一瞬の決め手がない分、主な勝ち鞍2歳新馬という状況が続いていることを考えると、オークス馬になるかというと…。オークスも秋華賞も善戦止まりになりそうなニオイがプンプンする内容だった。

そのドゥアイズに半馬身先着した4着ハーパーは、ルメールに大きなミスはなかったように思う。それでも4着だったのはマイルGIの分があったかな。

レース後「道中はペリファーニアの後ろでいい感じでしたが、直線の反応がちょっと遅かったです。ゴールまで頑張ってくれました。距離が延びたらいいと思います。体はまだ良くなりそうです」とルメールが話しているのだが、まさにこの通りだろう。

実際追い出してからの反応が遅い。マイルのクイーンCを勝っているが、稍重で勝ち時計は1:33.11分32秒台のマイルだと若干足りないんだろうね

母父ジャンプスタートは現役時代マイル近辺で走っていたが、ダノンセレスタやヴァレーデラルナの妹で父ドゥラメンテの馬が、1分32秒前半の桜花賞で勝てるとは考えづらい。

まだまだ緩い馬。集中力が課題だけに延長が不安ではあるが、2400自体に問題はなさそう。オークスはルメールで真ん中から内が欲しい。

余談だが、土曜のオールスター感謝祭で空気階段の鈴木もぐらが「桜花賞の本命は5番のハーパーです!」って言っただろう。

あれを聞いた競馬知識ゼロの総裁が「パーパー?そんなかわいい名前の馬いるの?」と言っていたが、それはあいなぷぅであり、星野ディスコだ。


ここまで全然触れておらず矢印も入れていないのが申し訳ないが、6着シンリョクカは思ったより走ったなという印象が強い。

デキはかなりいいと聞いていたものの、阪神JFは内枠が味方したところがあった。内伸び馬場で外枠11番の今回は分が悪いと見ていたんだ。

だいぶ序盤に出しているポイントの6番でも『シンリョクカ外枠』と書いているように、懸念していたところ。実際外を回ることになってしまったが、最後まで伸びている。内容は優秀。

歩き方からして運動神経がいいことが分かる馬。現状食も細くテンション面の調整も難しいが、今の3歳牝馬の中でも有数の運動神経、ポテンシャルを秘める馬。今後の成長が楽しみだね。NHKマイルだと間隔が詰まるからどうかも、今後もマイル前後で狙っていきたい。

7着シングザットソングも能力の高い馬なんだけどね。スタートしてから飛んでいったり、馬がまだ幼い。ただそんな幼い馬が、自分からインの好位を取りにいけたように、少しずつ操縦性も良くなっている。成長している。

現状まだ次ここで、という条件はないが、マイル以下なら古馬相手のオープンでも通用していいだけの能力は感じる。

8着ライトクオンタムは前述したように、キャリアの浅さがモロに出てしまった。これで3戦2勝となったが、キャリアの数字以上に乗り難しい。

前走のシンザン記念も、パトロールを見てもらえれば分かるが、道中ずっと外に張っている。左回りで外(右)に張るということは、内回りだと内(右)に張る。

武さんがレース前「外に逃げるより、内にモタれるほうが競馬はしやすい」と話しているように、道中右に行く癖を考えると現状右回りのほうが乗りやすいと思う。

実際今回も武さんがずっと右ムチを入れていた。そんな状況下でもうすでに左回りで重賞を勝ったように能力は高いのだが、色々と制約もつく馬。パドックで見ても未完成。まだまだこれからだし、ここから完成するかは何とも言えないかな。

左回り多頭数のオークスに出てこられてもあまり買いたいとは思わない。古馬になって、成長したタイミングでまた考える。

11着ラヴェルは着順はともかく、能力は高い。内有利阪神JFで大外、内有利馬場の桜花賞で17番。不運過ぎる。この馬はもっと走る。

瑠星が「道中力む面がある」と言うように、母系からもいずれマイル以下、1400前後に収まると見ているんだけど、内目の枠で前に壁がある状況ならマイルでももっと走れるんじゃないかな。

オークスは長いから仮に出てきても買わないが、いずれ1400短縮のタイミングなどで買っていきたい馬。

14着ドゥーラも取り上げておきたい。着順は悪いが、今日のデキは良かった。脚が長くボリュームある体形。今日のパドック評にも書いたが、この馬にマイルのGIは短い。それでいて道中アウトアウト、馬場とは逆の動きで、これでは上位は厳しい。

延長すれば話は変わってくる。オークスもそうだが、その先、上がりの掛かるローカル1800の牝馬重賞を楽しみにしたいね。成長してる。緩さが取れてくればもっと良くなってきそう。

ここからは上位馬。3着ペリファーニアはかなり頑張っている。外枠とはいえ武史がロスを抑えて、4コーナーでは内ラチ沿いから2、3頭目付近と、内有利馬場をなんとか生かそうとする好騎乗だった。

兄の和生の真後ろでギリギリまで追い出しを待ち、直線を向いてもワンテンポ仕掛けを遅らせている。これでもかとロスを削って、削って、それでもより厳しい競馬をしていたコナコーストを交わせなかったあたり、これ以上の着順逆転の可能性はなかったかな。

事前に出ていたようにノドが良くない馬。武史もノドについてはかなり不安視していて、実際危うい状況だと思う。今回も舌を縛るなどやれることを全部やっていたものの、まだノドの不安はあったようだし、いずれ手術することになりそうだね。

兄のエフフォーリアとはまったく違うタイプだし、兄ほど伸びる馬ではないと思うが、センスのいい馬。小回りも上手い。いずれ紫苑Sで買いたい馬。夏場にノド手術してもらえませんでしょうか。

2着コナコーストはラップを考えるとかなり頑張っている。

●23年桜花賞 1:32.1
12.1-10.4-11.5-11.9-11.7-11.4-11.3-11.8
34.0-34.5

前述したように前半3F34.0はここ10年で2番目に速い。最も速かった14年はフクノドリームがハイペースで逃げた年で、2番手ニホンピロアンバーは離れて追走していた。離れていたにも関わらず前は全滅している。

今年は2番手コナコーストが、逃げたモズメイメイにある程度ついていっている。それでいて最後まで粘って2着。馬場が違うにしても、普通ならペリファーニアに差されているところだ。

大体レース上がり3Fが11.4-11.3-11.8のように、ここ10年で2番目に速いラップを2番手追走しながらも、4コーナーから11秒台前半を連続して刻んで最後まで粘っている時点で、普通の年なら勝っているんだよな。

え、なんでこの数字出して負けたの?

仕上がり面ではもう1段階良くなりそうな感じがあった。それでこの数字を出せるのはさすが。チューリップ賞でデキが落ち気味の中、前残りのペースを差してきたりと能力の高い馬で、競馬センスもある。いい馬。

オークスでもやれそうな馬なんだけど、次は長距離輸送なんだよなあ。472kgデビューでチューリップが458kg、今日が454kg。ここから長距離輸送を挟むとなると、大幅体重増は期待できないだろう。

加えて父キタサンブラックも出ているとはいえ、母は短距離馬コナブリュワーズ。祖母アンブロワーズ。この2走の内容はいいのだが、次、東京の2400となると少し話は変わってきそうだね。

レース後鮫島克駿くんが「1着しか評価されないと思うので満足はしていませんが、走りはすごく良かったです」と話している。やることは全部やったと思うが、それでも満足していないと話す克駿の姿勢よ。

2年前のジャパンCで、サンレイポケットを完璧に乗って4着だった際、「強い相手に頑張りましたが、その一角を崩せないのは僕の技術不足です。馬は良い走りをしてくれました」と話していた。

ほぼ完璧に乗りながら、馬をリスペクトしつつ自分の責任とする、常にこの姿勢の克駿に、競馬の神様がそろそろ微笑んでくれることを期待している。今日の馬場を考慮した攻めの競馬、ただただ見事と言うほかない。

なんで負けたんだろうなあ、今日。


なんで?どうして?

今日のリバティアイランドには疑問しかない。ちょっと数字が異次元過ぎる

確かにペースは速かった。過去10年の桜花賞で2番目に速い前半通過タイムで、前に負荷は掛かっていた

それにしても、レース上がり3F11.4-11.3-11.8と、決して前も止まっていない流れを4コーナー後方から全部差し切っちゃうことがおかしい。たぶん馬単体で見ると4コーナーから1F10秒台を連発している。アイビスサマーダッシュじゃないんだからさ。

不思議な縁があるもので、上がり3F32.9は2014年の桜花賞を差し切ったハープスターと同じだった。当時騎乗したのも川田。

●14年桜花賞 1:33.3
11.9-10.5-11.4-11.5-11.7-11.4-12.8-12.1
33.8-36.3

●23年桜花賞 1:32.1
12.1-10.4-11.5-11.9-11.7-11.4-11.3-11.8
34.0-34.5

馬場は今年のほうが0.7秒前後速い。展開、隊列も違うが、14年と違って今年はBコース開幕週だからね。当時より内が有利な中でまとめて差し切ったリバティアイランドの数字、内容はハープスター以上と判断して良さそう。

ここ10年どころか、これまでの桜花賞の勝ち馬でもっともいい数字、パフォーマンスだったと言っても過言ではないんじゃないかな

正直マスクは内有利馬場で、川田が囲まれたところをどう捌くかのレースだと思っていた。そういう想定で買った。なのにまるで違うレースになって、馬場無視して勝っちゃうんだからもう笑うしかないよね。

ドゥラメンテも凄いの出してきたよ。これだけの馬を出せる種牡馬が9歳で亡くなってしまったのは、まさに日本競馬の損失。タラレバになってしまうが、もし生きながらえていたらこれから先、どんな馬を出したんだろう。

だいぶ早い話になってしまうが、この先繁殖入りしてディープ系、例えばコントレイルあたりと交配すると、サンデーの3×4になる。ちょうどバランスも良くなるし、種牡馬の選択肢も幅広いとなると先々まで楽しみだよね。

もうちょっと細かい話になってしまうが、リバティアイランドの祖母Condesaarは、Best in Showの3×4という牝馬クロスを持っている。

アーモンドアイも4代母がBest in Show。月並みな言葉になってしまうが、本当に凄いね。これだけの馬を何頭も出せる血統的ポテンシャルに改めて舌を巻くよ。

リバティアイランドが次、ダービー、オークス、どちらに進むかは現状分からないが、今年の牡馬戦線に数字が出ているレースがそうないことを考えると、仮にダービーに行っても面白いレースになりそう

ダービーはCコース変わり週で内有利になりやすいが、Bコース開幕週をおかまいなしに外から差しちゃう馬に、今更Cコース変わりがどうのこうのとは言っていられない気がする。

母ヤンキーローズはオーストラリアの1400GIサイアーズプロデュースSを勝っている馬だが、2000mのGIスプリングチャンピオンSも勝っているように柔軟性のある馬だった。血統背景的にもマイルオンリーという感じはない。

返し馬でスイッチが入ったり決しておとなしいタイプではないものの、今日のレースでの感じを見る限り、2400mでも折り合いはつくと思う。

序盤から全然進まなかったように、ちょっとまだ気持ちの面でムラがあるようにも感じられるが、序盤からムキになって走るよりは全然マシ。まだキャリアも3戦、レースに対する心の向き合い方も今後変わってくるのではないかな。

いずれは2000以下の馬だろうが、3歳春までなら距離はこなせるはず。瞬発力、体力共に現3歳世代では頭1つどころか、頭8つほど抜けている

もちろん無事に行けばという前提にはなるものの、歴史的名牝に肩を並べるどころか、もしかすると超える活躍を期待できるかもしれないね。


先月発売された、川田将雅著・頂への挑戦 負け続けた末に掴んだ「勝者」の思考法をもう読まれただろうか。

興味深く読ませてもらったのだが、著書の中で「2014年はまったく攻めた競馬をしていませんでした」と川田は書いている。そう、前述のハープスター桜花賞の年だ。前年120勝を挙げながら、2014年は95勝に留まった。

2014年は桜花賞までに44勝。今年は49勝だから、序盤のペースとしてはそう変わらない。ただここから最後95勝だから、5月以降は大ブレーキが掛かったと言っていいだろうね。

細かいことは川田の著書を見てもらうとして、『守りに入った分の取りこぼし』が目立った年でもあった。春シーズン全然勝ち切れなくなっちゃってね。懐かしい。

14年5月なんてわずか2勝。ハープスターのオークスも2着と、まるで勝てなくなってしまったからよく覚えている。改めてハープスターの桜花賞を見ても、展開、そして馬の能力によるところも大きい騎乗に見える。

しかし今回の桜花賞は違う。出脚こそ遅かったが、そこからのレースの組み立て方が恐ろしく冷静。一切焦りなく、周りの動きを冷静に見ている

普通GIで1倍台の人気になって、テンに行けなかったら焦るんだよな。当然なんだけど。焦りはリズムを崩す。リズムが崩れたら馬は脆いし、伸びない。

彼女が自分でそういう走りを選択しましたので仕方がないですからね。その中でリズムを作りながら動ける準備をしてきました」とレース後川田は話しているが、スタート後の想定外があっても、そこから馬に合わせ全体の動きも見てレースを作り直した視野の広さ、判断力が凄まじい。

どうしても豪快な末脚に目が行くが、このレースの本質は道中のリズムの組み直し方にあると言って良さそう。

周りが動く中であえて動かなかったり、他馬を行かせて使ったり、引き出しの多さが2014年とはまるで違う。上がりタイムなどでハープスターが比較される記事をいくつか読んだが、『似て非なるレース』だったと思う。

今年の桜花賞は、92.1秒という短い時間の中に、川田将雅が9年間積み上げた技術、経験、心理が凝縮されていた

地球最後の秘境・マダガスカルを見ながら、マスクはそう思った。

今日も山本雪乃アナとキツネザルがかわいい。




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