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「認知症の強制執行」の巻 カワカズの競売コラム No.610

「ローンは払ってる」

「ローン払ってるのに、なんで競売にかけられるんか😡!」
おじいちゃんは虚ろな目で抗議した。
競落物件はおじいちゃんが1人で暮らしていた。雨戸は締め切られ、空家かと思って、念のためにとインターフォンを押すと、人がにゅっと出てきたのだ。おじいちゃんが見せる通帳を見ると、所々引き落としができていない。しかも会話が辻褄が合わない。筆者の経験からみて、間違いなく認知症の気がある。

執行官へのお願い

まだ初期段階だろう。話しの理解力はある。生活もできているようだ。しかし、「ローンは払っている」と引越すつもりは一切ない。
このまま強制執行をかけても、自分で移転できるわけもなく、そのまま外に放り出されて終わりとなるかもしれない。物件の前で座り込まれても困る。そこで引渡命令を申し立てると、強制執行の申立ての前に執行官に相談をしてみた。
「債務者は認知症の気があり、普通に執行すると大変です。役所に協力を求めてもらえませんでしょうか?」

市がサポート

業者が市に依頼しても市はなかなか動かないが、裁判所からの要請となると、さすがに対応が違う。担当者が1人つき、本人に面談のうえ、親族を探し出し、おまけに市営住宅の手配までしてくれた。
その間に強制執行手続きを進め、明渡しの期限が定まった。
本人は競売になったことが親族にバレて、怒り心頭、しかも「ローンは払っている」と相変わらずだ・・。

剰余金で余生を

後日、市の担当者が用意した市営住宅に引越しが終わり、強制執行の断行時には不要な荷物が残っただけで、無事引渡しが終わった。
本来ならば、残置物放棄の一筆をもらえば、残置物の処分もできたところだが、「認知症のため当事者能力に欠ける」との判断で、残置物は現地保管となった。期日経過後、現地保管の動産類は、保管費用と相殺で買受け、任意で処分してすべて完了した。

おじいちゃんといえば、競売の売却代金が債務を大きく上回り、手元に余剰金が戻ることに・・・ そのお金で元気に暮らして下さいな。

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