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【種牡馬辞典】Mr. Prospector系

Mr.Prospector

<プロフィール>
1970年生、米国産、14戦7勝
<主な勝ち鞍>
-
<代表産駒>
Conquistador Cielo(1982年メトロポリタンH、ベルモントS)
Tank's Prospect(1985年プリークネスS)
Gulch(1986年米ホープフルS、ベルモントフューチュリティS、1987年ウッドメモリアル招待S、1987、88年メトロポリタンH、1988年カーターH、BCスプリント)
Kingmambo(1993年仏2000ギニー、St.ジェームズパレスS、ムーランドロンシャン賞)
Fusaichi Pegasus(2000年ケンタッキーダービー)
<特徴>
Northern Dancerと並ぶ20世紀を代表する大種牡馬。競走馬としては怪我などにより大成できなかったが、引退後は北米で2度のリーディングサイアーに輝き、さらに後継種牡馬が次々に大成功。Nearco父系以外では現在断トツの繁栄を見せている。北米血統らしいパワーとスピードを伝えるNative Dancer→Raise a Native父系でありながらも、母Gold DiggerはThe Tetrarchの5×6などから柔軟性も兼ね備えた繁殖牝馬。ヨーロッパで芝マイルGⅠ馬を複数出したことは母のThe Tetrarch血脈が根拠に挙げられ、この柔軟性があったからこそ、アメリカを飛び出して世界各国で父系を広められたのだろう。反対に、父Raise a Nativeや母のBlue Larkspurなどを刺激すれば北米血脈らしいパワーを増幅する効果が見込め、特にRoberto(母がGold Diggerと相似な血の関係)を併せ持つ馬にはパワーや機動力に長けたタイプが多い。

-Fappiano

<プロフィール>
1977年生、米国産、17戦10勝
<主な勝ち鞍>
1981年メトロポリタンH(D8F)
<代表産駒>
Tasso(1985年デルマーフューチュリティ、BCジュベナイル)
Cryptoclearance(1987年フロリダダービー、ペガサスH、1989年ドンH、ワイドナーH)
Unbridled(1990年フロリダダービー、ケンタッキーダービー、BCクラシック)
<特徴>
父は大種牡馬Mr. Prospector、母父はアメリカ競馬史を代表する快速馬Dr.Fagerという組み合わせで、本馬も1981年メトロポリタンHなどマイル前後で活躍。父と母父から受け継ぐスピードとSir Gallahad=Bull Dog=Marguerite de Valois譲りのパワーが持ち味といえるだろう。In Realityとの相性の良さは有名で、これは母父Dr. FagerとIn Realityの母My Dear Girlが血統的共通点が多いことが根拠に挙げられる。代表産駒であるUnbridled(1990年フロリダダービー、ケンタッキーダービー、BCクラシック)のほか、Tappiano(1986年スピナウェイS、米メイトロンS、デモワゼルS)、Rubiano(1991年NYRAマイルH、1992年カーターH、ヴォスバーグS)、Serape(1992年バレリーナS)、Cahill Road(1991年ウッドメモリアル招待S)などがこれに該当する。また、Sir Ivorとの相性も良く、これはFappianoの3代母CequilloとSir IvorがPrincequillo、Mahmoud、Man o' War、Marguerite de Valois=Sir Gallahadなどが共通することが根拠に挙げられ、ディープインパクトとの相性の良さもこれで説明がつくだろう。

-Miswaki

<プロフィール>
1978年生、米国産、13戦6勝
<主な勝ち鞍>
1980年サラマンドル賞(T1400m)
<代表産駒>
ブラックタイアフェアー(1991年フィリップHアイズリンH、BCクラシック)
Urban Sea(1993年凱旋門賞)
マーベラスクラウン(1994年ジャパンC)
<特徴>
競走馬としては2歳GⅠサラマンドル賞を制した程度だったが、種牡馬としては世界的成功を収めたMr. Prospectorの後継種牡馬の一頭。代表産駒に挙がるのはブラックタイアフェアー(1991年フィリップHアイズリンH、BCクラシック)、Urban Sea(1993年凱旋門賞)、マーベラスクラウン(1994年ジャパンC)など芝中長距離馬が多いが、本馬自身はNasrullahの4×4を中心とした瞬発力と柔軟性が持ち味で、マイル以下で瞬発力を活かす競馬がベストであっただろう。本馬を4×3でインブリードしたモズアスコットは実に柔らかいフットワークで走り、東京や京都外回りなど広いコースを中心に活躍した。後継種牡馬には恵まれなかったが、その反面、繫殖牝馬の父としては非常に優秀で、Urban SeaはGalileoやSea The Starsなど数多くのGⅠ馬を輩出している。

-Crafty Prospector

<プロフィール>
1979年生、米国産、10戦7勝
<主な勝ち鞍>
-
<代表産駒>
Devious Course(1997年シガーマイル)
アグネスデジタル(2000年マイルCS、2001年マイルCS南部杯、天皇賞秋、香港C、2002年フェブラリーS、2003年安田記念)
<特徴>
大種牡馬Mr. Prospector産駒のマイラー種牡馬。競走馬としてはタイトルを手にすることはできなかったが、1983年ガルフストリームパークHでは前年北米3歳牝馬チャンピオンChristmas Pastに小差まで迫る2着と好走している。四肢が短く、筋肉量豊富なスピード馬で、日本での産駒は芝とダートを問わず1800m以下を中心に活躍。その代表産駒がアグネスデジタル(2000年マイルCS、2001年マイルCS南部杯、天皇賞秋、香港C、2002年フェブラリーS、2003年安田記念)であり、芝とダートでそれぞれ複数個のGⅠタイトルを手にした走りはまさに父の種牡馬傾向を表すものであった。また、仕上がりの早さにも定評があり、JRAでの勝ち上がり率は80%超という驚異的な数字を残している。

-Woodman

<プロフィール>
1983年生、米国産、5戦3勝
<主な勝ち鞍>
1985年アングルシーS(T6F)
1985年愛フューチュリティS(T8F)
<代表産駒>
ヘクタープロテクター(1990年モルニ賞、サラマンドル賞、仏グランクリテリウム、1991年仏2000ギニー、ジャックルマロワ賞)
ハンセル(1991年プリークネスS、ベルモントS)
ティンバーカントリー(1994年米シャンペンS、BCジュベナイル、1995年プリークネスS)
ヒシアケボノ(1995年スプリンターズS)
Bosra Sham(1995年フィリーズマイル、1996年英1000ギニー、英チャンピオンS)
<特徴>
6代母La Troienneに遡る名牝系。母プレイメイトはBusanda≒Strikingの2×3という野心的な配合で、本馬もWar Admiral+La Troienne的な強靭なパワーを強く受け継いでいる。さらに、父Mr.Prospectorのスピードもしっかりと継承しており、不良馬場の2007年スプリンターズSを制覇したアストンマーチャン(母父Woodman)がWoodmanらしさを最も表現した日本の活躍馬といえるだろうか。また、ブラックエンブレム(2008年秋華賞)はNumbered Account=プレイメイトを5×4でインブリードしたWoodman増幅型。立ち肩で前駆が強く、内回りコースで重賞2勝を挙げたことは本血脈の影響を多分に受けた証だ。War Admiral+La Troienne血脈を豊富に持つ名繁殖牝馬Sex Appealとの組み合わせでもプレイメイト→Woodmanらしさを強調することができる。仕上がりの早さにも定評があり、2~3歳戦に強いことも大きな特徴だ。

-アフリート

<プロフィール>
1984年生、加国産、15戦7勝
<主な勝ち鞍>
1987年ジェロームH(D8F)
<代表産駒>
Twist Afleet(1994年テストS、1995年トップフライトH)
プリモディーネ(1999年桜花賞)
ビッグウルフ(2003年ジャパンダートダービー)
<特徴>
母父Venetian Jesterは競走馬としても種牡馬としても大した成績を挙げられなかったが、本馬の母Polite Ladyは2~3歳時に9戦7勝を挙げたVenetian Jesterの代表産駒。本馬はMr. Prospector×Venetian Jesterの早熟気味のダート短距離血統ではあるが、母母が持つHyperionの4・5×5がスパイスとなっており、1987年ジェロームHを制すなど4歳時まで一線級で活躍した。弱点は揉まれ弱さ。母父父に本馬を持つインティは持ち前の俊敏さを武器に7連勝で2019年フェブラリーSを制したが、マークが厳しくなり先手を取れなくなってからは勝利から遠ざかってしまった。ちなみに、インティはGone West系ケイムホーム産駒であるため、Gone West≒アフリート(Mr. Prospector、Nasrullah、Princequillo、Tom Fool、Hyperionなどが共通)の2×3という配合形でもある。

-ジェイドハンター

<プロフィール>
1984年生、米国産、14戦6勝
<主な勝ち鞍>
1988年ドンH(D9F)
1988年ガルフストリームパークH(D10F)
<代表産駒>
Stuka(1994年サンタアニタH)
Yagli(1999年ガルフストリームパークH、マンハッタンH、ユナイテッドネーションズH)
アゼリ(2002年サンタマルガリータ招待H、BCディスタフ、2002、03年ミレイディH、ヴァニティH、2002~04年アップルブラッサムH、2004年ゴーフォーワンドH、スピンスターS)
<特徴>
牝系は名繁殖牝馬Athasiに遡り、4代母AvenaはTrigo(1929年英ダービー、英セントレジャー、愛セントレジャー)、Harinero(1933年愛ダービー、愛セントレジャー)、プリメロ(1934年愛ダービー、愛セントレジャー)の全妹という超良血。その後はフランス産のアウトサイダー種牡馬をつけられ、本馬は大種牡馬Mr. Prospectorを父に配して誕生した。Native Dancerの3×6程度しか濃いクロスを持たず、種牡馬としては芝とダートでそれぞれGⅠ馬を複数頭輩出している。後継種牡馬であるStuka(1994年サンタアニタH)、Yagli(1999年ガルフストリームパークH、マンハッタンH、ユナイテッドネーションズH)は南米で一定の成功を収めた。

-Gone West

<プロフィール>
1984年生、米国産、17戦6勝
<主な勝ち鞍>
1987年ドワイヤーS(D9F)
<代表産駒>
Zafonic(1992年モルニ賞、サラマンドル賞、デューハーストS、1993年英2000ギニー)
Da Hoss(1996、98年BCマイル)
Commendable(2000年ベルモントS)
Johar(2002年ハリウッドダービー、2003年BCターフ)
<特徴>
1987年ドワイヤーSを制すなどダートのマイル前後で活躍。ただ、全弟Lion Cavernは1992年仏2000ギニーで3着するなど芝とダートを問わず活躍し、半弟ロードアルティマは日本の芝短距離路線でOPまで勝ち上がった。これは、本馬の3代母Mixed MarriageがTudor Minstrel×Tehranのイギリス産馬で、Pharos=Fairwayの4×3、Son-in-Lawの4×4などインブリードが濃く、強い影響力を持っていることが根拠に挙げられる。本馬も種牡馬としては芝とダートを問わずGⅠ馬を輩出し、現在も欧米で枝葉を広げている。

-Gulch

<プロフィール>
1984年生、米国産、32戦13勝
<主な勝ち鞍>
1986年米ホープフルS(D6.5F)
1086年ベルモントフューチュリティS(D7F)
1987年ウッドメモリアル招待S(D9F)
1987年メトロポリタンH(D8F)
1988年カーターH(D7F)
1988年メトロポリタンH(D8F)
1988年BCスプリント(D6F)
<代表産駒>
サンダーガルチ(1995年フロリダダービー、ケンタッキーダービー、ベルモントS、トラヴァーズS)
イーグルカフェ(2000年NHKマイルC、2002年ジャパンCダート)
Nayef(2001年英チャンピオンS、2002年ドバイシーマクラシック、英インターナショナルS、2003年プリンスオブウェールズS)
Court Vision(2008年ハリウッドダービー、2009年シャドウェルターフマイルS、2010年ガルフストリームパークターフH、ウッドバインマイルS、2011年BCマイル)
<特徴>
1988年BCスプリントなどGⅠ7勝を挙げたチャンピオンスプリンター。母Jameela(1981年マスケットS、レディーズH、1982年デラウェアH)もGⅠ3勝の活躍馬で、NasrullahやCount Fleetなどの父Mr. Prospectorの柔軟な血には触れず、反対に北米血脈を刺激した配合形。立ち肩で筋肉質、かつ脚の短いパワースピードタイプだ。ただ、アウトブリード血統のため主張はそれほど強くなく、産駒にはイーグルカフェ(2000年NHKマイルC、2002年ジャパンCダート)、Nayef(2001年英チャンピオンS、2002年ドバイシーマクラシック、英インターナショナルS、2003年プリンスオブウェールズS)、Court Vision(2008年ハリウッドダービー、2009年シャドウェルターフマイルS、2010年ガルフストリームパークターフH、ウッドバインマイルS、2011年BCマイル)など芝をこなした馬も少なくない。

-Seeking the Gold

<プロフィール>
1985年生、米国産、15戦8勝
<主な勝ち鞍>
1988年ドワイヤーS(D9F)
1988年スーパーダービー(D10F)
<代表産駒>
Heavenly Prize(1993年フリゼットS、1994年アラバマS、ガゼルH、ベルデイムS、1995年アップルブロッサムH、ヘムステッドH、ゴーフォーワンドH、ジョンAモーリスH)
Flanders(1994年スピナウェイS、フリゼットS、BCジュベナイルフィリーズ)
シーキングザパール(1997年NHKマイルC、1998年モーリスドギース賞)
Dubai Millennium(1999年ジャックルマロワ賞、クイーンエリザベスⅡ世S、2000年ドバイワールドC、プリンスオブウェールズS)
Jazil(2006年ベルモントS)
<特徴>
母母はSir Gallahadの3×4、母はBull Dog=Sir Gallahadの4×4・5、Blue Larkspurの4×4、本馬はSir Gallahad=Bull Dogの7・5×5・5・6、Blue Larkspurの6×5・5、Discoveryの5×5、Man o' Warの6×5のパワー血統。筋肉質な馬体で前捌きも硬め。種牡馬としてもダートのマイル前後を中心に多くのGⅠを輩出し、日本でもシーキングザパール(1997年NHKマイルC、1998年モーリスドギース賞)、マイネルラヴ(1998年スプリンターズS)、ゴールドティアラ(2000年マイルCS南部杯)という3頭のGⅠを出している。

-フォーティナイナー

<プロフィール>
1985年生、米国産、19戦11勝
<主な勝ち鞍>
1987年ベルモントフューチュリティS(D7F)
1987年米シャンペンS(D8F)
1988年ハスケル招待H(D9F)
1988年トラヴァーズS(D10F)
<代表産駒>
Editor's Note(1996年ベルモントS、スーパーダービー)
コロナドズクエスト(1998年ハスケル招待H、トラヴァーズS)
ユートピア(2002年全日本2歳優駿、2003年ダービーグランプリ、2004、05年マイルCS南部杯)
<特徴>
1987年ベルモントフューチュリティS、米シャンペンSなどを制して、同年北米2歳牡馬チャンピオンに輝いたMr.Prospectorの後継種牡馬。Nasrullahの4×4のスピードとRomanを中心としたパワー血脈が持ち味で、3歳時にも1988年ハスケル招待HやトラヴァーズSなどを制している。種牡馬としても仕上がりが早く、筋肉質なダートスピード馬を多数輩出し、1996年からは日本で種牡馬生活を送った。ただ、他のNasrullahをインブリードしたMr.Prospector系種牡馬と同じく母馬によっては芝馬も出しており、日本でもテイエムサウスポー(2000年京王杯3歳S)やダイワパッション(2006年フィリーズレビュー)などが芝の重賞を制している。

--City Zip

<プロフィール>
1998年生、米国産、23戦9勝
<主な勝ち鞍>
2000年ホープフルS(D7F)
<代表産駒>
Dayatthespa(2012年クイーンエリザベスⅡ世チャレンジCS、2014年ファーストレディS、BCフィリー&メアターフ)
Work All Week(2014年BCスプリント)
ファイネストシティ(2016年BCフィリー&メアスプリント)
Improbable(2018年キャッシュコールフューチュリティ、2020年ハリウッドGC、ホイットニーS、オーサムアゲインS)
<特徴>
2004年北米年度代表馬Awesome Again(2003年ヴォスバーグS、2004年ウッドワードS、BCクラシック、2005年メトロポリタンH)の半兄であり、自身も2000年米ホープフルSを制したCarson City直仔。母Baby ZipはWar Relic≒Eight Thirtyの5・5×5のスピードとMahmoudの4×6などを経由したThe Tetrarchの柔軟性を兼備。父Carson Cityはダートの短距離馬で、本馬自身もダートの7F以下で全9勝を挙げたが、フットワークは実に素軽く、5代アウトブリードの血統構成も相まって種牡馬としては芝とダートを問わずGⅠ馬を輩出した。Awesome Again程ではないが、本馬もGⅠ馬の多くが牝馬というフィリ―サイアーの側面もあっただろう。

-ジェイドロバリー

<プロフィール>
1987年生、米国産、7戦2勝
<主な勝ち鞍>
1989年仏グランクリテリウム(T1600m)
<代表産駒>
タイキシャーロック(1997年マイルCS南部杯)
ヤマカツスズラン(1999年阪神3歳牝馬S)
Kirklees(2006年伊グランクリテリウム)
<特徴>
Thong~Specialから繋がる名牝系であり、母NumberはNureyevやSadler's Wells=Fairy Kingと3/4同血の関係。引退後は日本で種牡馬生活を送り、1997~99年にはサンデーサイレンスやブライアンズタイムらを抑えて3年連続のダートサイアーランキング1位を獲得した。Nashua≒Nantallahの3×4由来のパワーが持ち味であるが、ヤマカツスズラン(1999年阪神3歳牝馬S)などの芝馬も多数出しており、距離適性の幅も広い万能種牡馬といえるだろう。NureyevやSadler's Wells=Fairy Kingとの間で3/4同血クロスを成立させるほか、Mr. Prospector×NureyevのKingmamboやNureyev×Mr. Prospectorのファスリエフなどは本馬と相似な血の関係。Kingmambo≒ジェイドロバリーのインブリードを持つレッツゴードンキやメイショウマンボの道悪やダートも苦にしないパワーは本馬に由来すると考えていいだろう。

-Machiavellian

<プロフィール>
1987年生、米国産、7戦4勝
<主な勝ち鞍>
1989年モルニ賞(T1200m)
1989年サラマンドル賞(T1400m)
<代表産駒>
Vettori(1995年仏2000ギニー)
Almutawakel(1998年ジャンプラ賞、1999年ドバイワールドC)
Street Cry(2002年ドバイワールドC、スティーヴンフォスターH)
<特徴>
Almahmoud→Natalmaから繋がる名牝系。さらに、母Coup de FolieはAlmahmoud産駒であるCosmahとNatalmaの仔を両親に持つため、同馬自身はAlmahmoudを3×3でクロスしている。競走馬としても1984年マルセルブサック賞3着などまずまずの活躍を見せたが、繁殖牝馬としては初仔の本馬を筆頭にExit to Nowhere(1992年ジャックルマロワ賞)やCoup de Genie(1993年モルニ賞、サラマンドル賞)を出すなどして名繁殖牝馬として大成功を収めた。産駒はAlmahmoud譲りのスピードを武器にマイル以下で活躍し、本馬も芝1200、1400mの2歳GⅠを制したほか、1990年英2000ギニーでも2着と好走している。ヴィルシーナ=ヴィブロスは本馬の影響を多分に受けているし、ディアドラやアドマイヤマーズがハービンジャーやダイワメジャーの産駒ながら瞬発力勝負にも対応できたのは本馬の支えがあったからこそ。名血を詰め込んだ超良血馬だけにどの血統に入っても収まりが良く、全妹Coup de Genieとともに今後も存在感を強めていくだろう。

-Kingmambo

<プロフィール>
1990年生、米国産、13戦5勝
<主な勝ち鞍>
1993年仏2000ギニー(T1600m)
1993年St.ジェームズパレス(T8F)
1993年ムーランドロンシャン賞(T1600m)
<代表産駒>
エルコンドルパサー(1998年NHKマイルC、ジャパンC、1999年サンクルー大賞)
Lemon Drop Kid(1998年ベルモントフューチュリティS、1999年ベルモントS、トラヴァーズS、2000年ホイットニーH、ウッドワードS)
アルカセット(2005年サンクルー大賞、ジャパンC)
キングカメハメハ(2004年NHKマイルC、日本ダービー)
Henrythenavigator(2008年英2000ギニー、愛2000ギニー、St.ジェームズパレスS、サセックスS)
<特徴>
父は大種牡馬Mr. Prospector、母は1987、88年BCマイル連覇などGⅠ10勝の女傑Miesqueという超良血馬。本馬自身、競走馬として芝マイルGⅠを3勝し、半妹East of the Moonも1994年仏1000ギニー、仏オークス、ジャックルマロワ賞などを制覇。その他、全弟Miesque's Sonは種牡馬としてGⅠ馬を輩出し、全妹Monevassiaは名繁殖牝馬ラヴズオンリーミーを経由してリアルスティール=ラヴズオンリーユーを出すなど、本牝系の勢いはとどまることを知らない。さらに、本馬自身も種牡馬として父母譲りのスピードを武器に多くのGⅠ馬を輩出。リーディングサイアーには縁がなかったが、如何なる条件でも一流馬を出し続けた万能っぷりは他の名種牡馬たちに引けを取るものではなかった。これは、Nashua≒Nantallahの3×5由来のパワーや母母Pasadobleが持つ重厚過ぎるスタミナ血脈が根拠に挙げられ、後継種牡馬キングカメハメハのマルチな活躍はまさに父譲りの特徴である。ジェイドロバリーやファスリエフなどは本馬と相似の血の関係。Kingmambo≒ジェイドロバリーのインブリードを持つレッツゴードンキやメイショウマンボが道悪やダートを苦にしなかったことは、サンデーサイレンスには無いパワーを本血脈から受け継いだ証といえるだろう。

-Smart Strike

<プロフィール>
1992年生、加国産、8戦6勝
<主な勝ち鞍>
1996年フィリップHアイスリンH(D8.5F)
<代表産駒>
English Channel(2006年ターフクラシックS、2006、07年ユナイテッドネーションズS、ターフクラシック招待S、2007年BCターフ)
Curlin(2007年プリークネスS、BCクラシック、2007、08年ジョッキークラブGC、2008年ドバイワールドC、スティーヴンフォスターH、ウッドワードS)
Lookin At Lucky(2009年デルマーフューチュリティ、ノーフォークS、キャッシュコールフューチュリティ、2010年プリークネスS、ハスケル招待S)
<特徴>
名牝Dance Smartly(1991年シリーンS、BCディスタフ)の半弟。競走馬としては体質の弱さから8戦6勝と不完全燃焼で引退となったが、種牡馬としてはCurlin(2007年プリークネスS、BCクラシック、2007、08年ジョッキークラブGC、2008年ドバイワールドC、スティーヴンフォスターH、ウッドワードS)を筆頭に数多くのGⅠ馬を輩出し、2007、08年北米リーディングサイアーに輝くなど大成功を収めた。Nasrullah≒Royal Chargerの4×5・5から柔らかいフットワークで走り、純米血種牡馬ながら芝とダートを問わない万能っぷりが魅力。さらには、それ以外に濃いクロスを持たないため、繁殖牝馬を尊重する種牡馬ともいえるだろう。

-Fusaichi Pegasus

<プロフィール>
1997年生、米国産、9戦6勝
<主な勝ち鞍>
2000年ケンタッキーダービー(D10F)
<代表産駒>
Roman Ruler(2005年ハスケル招待H)
Bandini(2005年ブルーグラスS)
Haradasun(2007年ジョージライダーS、ドンカスターH、2008年クイーンアンS)
<特徴>
大種牡馬Mr.Prospectorの産駒唯一のケンタッキーダービー馬。「フサイチ」の冠名でお馴染みの関口房朗氏の所有馬としても有名である。母は2戦1勝の平凡な競走馬であったが、母の半兄Demons Begoneは1987年アーカンソーダービー馬、全兄Pine Bluffは1992年プリークネスS優勝馬という良血馬だ。種牡馬としては期待ほどの結果を残せなかったが、代表産駒であるRoman Ruler(2005年ハスケル招待H)が後継種牡馬として成功を収め、日本でも母父に本馬を持つウインマリリンが2022年香港ヴァーズを制覇。Mr. Prospector×Danzig×Haloという現在でも主流として活躍する血脈を豊富に持つため、今後もアクセントとしての活躍に期待したい。


≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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