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【種牡馬四季報】オーストラリア・ニュージーランド・香港・南アフリカ 2023/24シーズン上半期の種牡馬リーディング

競馬オタク・坂上明大が
四半期ごとに国内外の種牡馬事情を解説していきます。

~オーストラリア~

2021/22、2022/23シーズンから引き続き、今シーズンもGreen Desert系I Am Invincibleがリーディングサイアーの座に君臨。現役時代は芝1000~1100mで5勝、タイトルもGIIIのみだったが、種牡馬として成功。モイアS(芝5F)、マニカトS(芝6F)、VRCスプリントクラシックS(芝6F)、ライトニングS(芝1000m)とGI4勝のImperatrizが出ており、2023/24シーズンのリーディングサイアーも当確のラインまで賞金を積み上げている。後継種牡馬Hellbentも12位にランクインしており、父系としても注目のラインだ。

2位はSadler's Wells系So You Think。現役時代にはコックスプレート連覇をはじめ世界中でGIを10勝した歴史的名馬で、種牡馬としてもここ2年はI Am Invincibleに次ぐ2位にランクインしている。このほかにSadler's Wells系からはTeofiloが7位、Dundeelが10位、Tavistockが20位に名を連ねる。

3位Zoustarは現役時代にVRCアスコットヴェイルS(芝6F)、ATVゴールデンローズS(芝7F)を勝ったFairy King系種牡馬。豪1000ギニー(芝8F)のJoliestar、クールモアスタッドS(芝6F)のOzzmosis、クールモアクラシック(芝7.5F)のZougotchaといったGI馬が出ている。このほかにFairy King系からはDeep Fieldが15位にランクイン。

4位スニッツェルは2002年生まれの古豪デインヒル系種牡馬。2016/17~2019/20と4年連続で豪リーディングサイアーに輝いており、日本でも2007年と2011年に社台スタリオンステーションでシャトル種牡馬として繋養されている。GIクールモアスタッドS(芝6F)3着のShinzoが今シーズンの主な活躍馬。このほかにデインヒル系からはExceed and Excelが13位、All Too Hardが14位、Russian Revolutionが19位にランクインしている。

5位Pride of DubaiはリーディングTOP5で唯一の非Northern Dancer父系のStreet Cry系種牡馬。現役時代にはキャリア5戦ながらブルーダイヤモンドS(芝6F)、AJCサイアーズプロデュースS(芝7F)とGIを2勝しており、種牡馬としてはエンパイアローズS(芝8F)、ケネディチャンピオンズマイル(芝8F)の勝ち馬Pride Of Jenniが代表産駒だ。このほかにStreet Cry系からはStreet Bossが17位にランクインしている。

父系別では上位20頭中14頭はNorthern Dancer系、3頭はRoyal Charger系、2頭はMr. Prospector系、1頭はHyperion系。Northern Dancer系の内訳はデインヒル系とSadler's Wells系が4頭、Green Desert系とFairy King系とトライマイベスト系が1頭ずつ。Royal Charger系の内訳はMore Than Ready系が2頭、Zabeel系が1頭。Mr. Prospector系の内訳はStreet Cryが2頭だ。

~ニュージーランド~

ニュージーランドの2023/24シーズンはSavabeelが首位を独走中。Zabeel直仔の同馬はスプリングチャンピオンSとコックスプレートを制した芝中距離馬で、新ダービー馬Orchestralを筆頭に多くの活躍馬を輩出している。2014/15から8シーズン連続でリーディングサイアーに輝いた名種牡馬でもあり、昨年こそProisirに首位を譲ったが、今年は同馬に倍近い賞金差をつけて王座奪還を果たしそうだ。

2位は昨年首位のProisir。デインヒル系Choisir産駒の同馬だが、現役時代にはマイル~中距離を中心に活躍。代表産駒であるLegartoもGⅠハービーダイクSなど芝のマイル~中距離で活躍しており、母方のスタミナ血脈が強く継承されているようだ。

3位Zacintoもデインヒル系種牡馬だが、こちらはハービンジャーと同じDansili直仔のライン。現役時代には英GⅠクイーンアンSを制した芝マイラーで、代表産駒であるCrocettiは新2000ギニーの勝ち馬だ。デインヒル系からはほかにEl Rocaが5位、Burgundyが10位にランクインしている。

4位TavistockはSadler's Wells→Montjeuのライン。現役時代にはマッジウェイ・パーツワールドSとワイカトドラフトスプリントを制した短距離馬で、Sadler's Wells系ではほかにHigh Chaparral直仔Contributerが9位にランクインしている。

父系別では上位20頭中10頭はNorthern Dancer系、6頭はMr. Prospector系、2頭はRoyal Charger系、Nasrullah系とMonsun系から1頭ずつ。Northern Dancer系の内訳はデインヒル系が4頭、Sadler's Wells系が2頭、トライマイベスト系とStorm Cat系とGreen Desert系とWar Front系が1頭ずつ。Mr. Prospector系の内訳はGone West系とStreet Cryが3頭ずつ。Royal Charger系の内訳はZabeel系とサンデーサイレンス系が1頭ずつだ。

~香港~

2021/22、2022/23と2シーズン連続で香港リーディングサイアーに輝くDeep Fieldが今シーズンも首位に君臨。Fairy King系の同馬はオーストラリアの芝スプリント路線で活躍し、代表産駒であるVoyage BubbleはステュアーズCを制すほか、香港マイルでGolden Sixtyの2着、香港ゴールドCでRomantic Warriorの2着と一線級で堅実な走りを見せている。Fairy King~Northern Meteorの父系からはほかにZoustarが6位にランクインしている。

2位Toronadoは英GⅠのサセックスSとクイーンアンSを制したSadler's Wells→High Chaparral系の芝マイラー。稼ぎ頭Helios Expressは香港クラシックマイルと香港クラシックカップを制し、センテナリースプリントC優勝馬Victor The Winnerは先日の高松宮記念でも3着と健闘した。このほかにSadler's Wells系からはMedaglia d'Oroが8位、Intelloが13位、Artie Schillerが15位、Camelotが20位にランクインしている。

3位Starspangledbannerは2010年ジュライCなどイギリスとオーストラリアで芝短距離GⅠを4勝した名スプリンター。デインヒル~Choisir系らしい非凡なスピード能力を産駒に伝えており、代表産駒California Spangleは6歳となった2024年にもクイーンズシルバージュビリーCを制すなど一線級で活躍している。このほかにデインヒル系からはFastnet Rockが10位、Not a Single Doubtが12位、Wandjinaが14位、All Too Hardが16位、Holy Roman Emperorが19位にランクインしている。

4位Acclamationは世界中で短距離GⅠ馬を輩出するトライマイベスト系のスピード種牡馬。代表産駒であるRomantic Warriorは香港調教馬として2頭目となる豪GⅠ制覇の快挙を果たした。トライマイベスト系ではほかにCapitalistが9位、Written Tycoonが11位にランクインしている。

父系別では上位20頭中17頭はNorthern Dancer系、2頭はRoyal Charger系、1頭はMr. Prospector系。Northern Dancer系の内訳はデインヒル系が6頭、Sadler's Wells系が5頭、トライマイベスト系が3頭、Fairy King系が2頭、Nureyev系が1頭。Royal Charger系の内訳はZabeel系とMore Than Ready系が1頭ずつだ。

~南アフリカ~

2020/21、2022/23シーズンでリーディングサイアーに輝いたGimmethegreenlightが首位。Halo→サザンヘイロー→More Than Ready系のオーストラリア産馬で、現役時代には南アGⅠクイーンズプレートを制している。Halo系では2014年朝日杯FS勝ち馬ダノンプラチナも10位にランクイン。Royal Charger系ではRoberto系のWilliam LongswordCaptain of All、Stop the Music系のCanford CliffsもTOP20にランクインしており、Captain Alがリーディングブルードメアサイアーに輝いていることからも、今後日本産の種牡馬が流行る可能性は決して低くないだろう。

2位Vercingetorixは2012/13、2016/17、2018/19、2019/20、2021/22と5度のリーディングサイアーに輝いたSilvanoの後継種牡馬。Nijinsky~Lomitasの父系に属し、父Silvanoも13位にランクイン、リーディングブルードメアサイアーでも3位と強い存在感を示している。

8度の南ア・リーディングサイアーに輝いた名種牡馬Jet Masterの後継種牡馬ではMaster of My Fateが4位、Pomodoroが19位にランクイン。リーディングブルードメアサイアーでも2位に位置しており、Northern Dancer→Rakeen(母父Glorious Song)を経由する異系血脈として今後の発展に注目したい血筋のひとつだ。

父系別では上位20頭中9頭はNorthern Dancer系、6頭はMr. Prospector系、5頭はRoyal Charger系。Northern Dancer系の内訳はNijinsky系とJet Master系とSadler's Wells系が2頭ずつ、Green Desert系とWar Front系とデインヒル系が1頭ずつ。Mr. Prospector系の内訳はフォーティナイナー系が3頭、Gone West系とDistant View系とDubawi系が1頭ずつ。Royal Charger系の内訳はRoberto系が2頭、More Than Ready系とサンデーサイレンス系とStop the Musicが1頭ずつだ。


≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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