バンド•ヒーロー


例に洩れず
夢を失った抜け殻のような、何かに負けたかのような、全てを言い訳に変えてしまっているような。
そんな劣等感を抱えた、ただの悲しい”ドラム好き”になった。

意地悪な友達によく才能がないから普通に働いた方がいいよとか、早く新潟に帰りなよとか言われていた。
彼のそんな棘のある冗談、、まあ本気だったかもしれないが。
それに抗うかのように”バンドマン”を続けてきた。

バンドをやめたら負けだ。こいつの言う通りだった。
そう思うのが嫌だったし、現に負けだと思ってた。
冗談でもそう言われる事が悔しかったし、家業も継がずまともに働きもしなかった手前、何も得ずにこのまま青年時代を消費するのが嫌だった

様々なヒーローを様々な場所で見た。

頭を振り、踊りながらそれは綺麗なアルペジオを弾くギタリスト。
一粒のテンポ、コードをミスする事なく難解なフレーズをこなすベーシスト
ありえない高音域を有りえない声量で出すボーカリスト
何をどう叩いてるのか解読できないフィルを涼しい顔で決めるドラマー

時には感動して、時には訳がわからなすぎて笑った。
僕も彼らのように、誰かに影響を与えるようなアーティストになりたかった

そんな彼らの中にすら、
今どこで何をやってるかわからない人もいる。

有名になった人もいる。

君はいいドラマーだから必ず売れるよと励ましてくれた会社の人もバンド仲間も、全くと言っていいほど音信不通の状態だ

時間が過ぎるのはとても怖い。

社会人になり、音楽に情熱をかけることから逃げ出した。
まともに働いていないと言う一つのコンプレックスを消す事で、自分の中の何かを消化できる気がした
皮肉ながらモチベーションが変わった事で音楽は格段に楽しくなり、深く音楽を理解しようとしたり、技術力も上がった。
下手くそだけどね。当時よりはマシってくらいには上達したしこれからもすると思う。

売れようと必死だった時、なりふり構わず繋がりを作って集客やブッキングでよりいい成績を残そうと躍起だった。
“知り合い”ばかりのTwitterアカウントを削除して新しく作り替えた。営業のために自分を作った文章も告知も、すべてやめた。
僕の本心ばかりを綴るアカウントだ。
フォロワーは200人。それでも僕には充分すぎるくらいだ。逆になぜ200人もいるんだろうか

今の動画の再生数は平均100回も行かない。
前は1000回の再生数に届かない動画は恥ずかしくて削除していたが、いまは20回でも嬉しい

いいね一つ。押してくれる人は毎回同じ。
それがどれほど幸せなことか当時の僕は理解できなかった。
その再生数一回をどれほど大切にすべきか理解できなかった。
本当に自分に興味を持ってくれる人がいると言う事実を蔑ろにしていた。


可視化できる現実にばかり気が逸れて、自分が1番大切にすべき物を見失っていた
自分が本当に求めているものは、フォロワー何万人でも再生回数何万回でもない、

毎回僕のブログを読んでくれる、ライブに来てくれる、演奏動画を見てくれる、
たった数人のあなただ。

こんな単純な自分が嫌いだったから、数字にこだわってきていたのかもしれない。

勤めてる会社で数字ばかり気にしているうちに、
自分はまた同じ過ちを繰り返そうとしているのではないかと疑問に思って気持ちの整理のために久しぶりにブログを書いた

今自分は仕事でとても辛い時期に当たっていると思う。
日課だった音楽を聴きながらの通退勤もまばらになった。疲れすぎて音楽が煩わしく感じる事があるからだ

僕はこんな惨めで苦しい思いをするために就職したわけではない

新しい戦争を始めよう
新しい世界で新しい戦争を
今までのように壊さず逃げず、向き合うことで始める戦いを

バンドヒーローの演奏が、歌詞が活力をくれるから平気だ

例えば僕が売れなかったら。
そんな歌を歌ったいつかのヒーローへ

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