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The Cure:Album02(セヴンティーン・セカンズ:Seventeen Seconds )& Charlotte Sometimes

キュアー(The Cure)の2枚目のアルバムのセヴンティーン・セカンズ(Seventeen Seconds)で、ロバート・スミス(キュアーは彼のバンド)は「自分たちにしか出せない音」の方向に進んでいくのでした。
キーボード担当が「もっと重ねた複雑な音にしようぜ」とか言っても、「そういうんじゃなくて、君は単音で弾いてくれたらいいからさあ」とか言ってしまうのです。
音を足すんではなく、キリギリまで引いて鋭くしようとするもんだから、メンバーたちはロバート・スミスについていけなくなって、どんどん入れ替わっていく。

『セヴンティーン・セカンズ』は、1980年4月18日にフィクション・レコードから発売されたイギリスのロックバンド、ザ・キュアーのセカンド・スタジオ・アルバムである。このアルバムでは、フロントマンのロバート・スミスが初めてマイク・ヘッジスと共同プロデュースを行った。ベーシストのマイケル・デンプシーが脱退した後、キーボーディストのマチュー・ハートリーとともにサイモン・ギャラップが正式メンバーになった。

https://en.wikipedia.org/wiki/Seventeen_Seconds

そんな状況で出したキュアー2枚目のアルバムであるが、シングル曲の『A Forest』が全英シングル・チャートで初のトップ40入りを果たす。(これが売れてなかったら、キュアーはここまでだったかも)

聴きはじめてすぐに「ああ、えらいとこに入り込んでしまったなあ」と少し困惑してしまうような、いい意味で聴きなれない楽曲のアルバム
タイトルの『Seventeen Seconds』=72というのは、年老いて願いが叶わず、夢が終わるように亡くなる老人の年齢ですね(明るいなあ)。
こんな暗くて地味なのにUK(イギリス)では、1枚目のアルバム(チャート44位)より上の、アルバムチャート20位に入っている。UKチャート恐るべしである。
我が道を突き進みはじめたロバート・スミスだが、今後もなんとか活動を続けれるくらいな支持がUKではあったのでした。そして、何故かこのアルバムはオランダのチャートで15位、ニュージーランドのチャートで9位です。

●プレイ・フォー・トゥデイ: Play for Today

地味なアルバムの中で数少ない、ノリのいい方向の曲。
この曲はライブでの演奏で人気が高くて、『Play for Today』を演奏すると、キーボードの音を観客がみんなで「ウーーーウーッウーーーッ」と歌う。私もフジロックで歌った。
どこの国のライブからはじまったかわからないが、そういう伝統なのである。歌うみんなは至福の表情でありました。

●シャーロットサムタイムズ:Charlotte Sometimes

この曲はこのアルバムには入ってないシングルカットの曲です。
しかし、この時期に出た大事な曲なのでここに入れておきたいのでした。
この曲は1969年に出版されたイギリスの作家ペネロペ・ファーマーによる児童小説『Charlotte Sometimes(シャーロットサムタイムズ)』を元にしています。このシングルB面の『Splintered in Her Head(彼女の頭の中の裂け目)』のタイトルもこの小説からきている。この曲もアルバムには入っていないが、かなりぶっ壊れ気味の脳がグルグル回る名曲で大好きです。

●フォレスト:A Forest

暗闇の中で声が聞こえてくる。私の名を呼ぶ彼女の声が聞こえてくる。
私は声を聞いて木々の中へと入っていく。
彼女の声を追いかけて森の中に入って、奥へ奥へと入り込んでいく。
そして、私は迷子になってしまう。

これぞキュアーという楽曲で、キュアーが好きな人は、だいたいこの曲は好きだったりする。『A Forest』はキュアーのライブにおいて、最高潮で演奏される代表曲です。
コードそのままのキーボードとシンプルなベースの上に、研ぎ澄まされた刃物みたいなギターと繊細なボーカルがのる。キュアーならではの静寂な空間が広がるような曲です。


レコード会社的には、「ロバートくん、もっと売れるような明るい曲を作っておくれよ」なんだろうけど、前のアルバムより売れたりしたもんだから、「まあ、売れてるから文句も言いにくいなあ」ってことで放置されたのでしょう。
こんな暗いアルバム作った後は、もしかしたら「明るいみんなで歌える曲の入ったアルバム」とか出してくれるんじゃないかという、レコード会社の淡い思惑に反して、ロバート・スミスはこのアルバムの方向をますます突き詰めていくのでありました。そしてその先にあるのは幸せなのか、はたまた絶望か。


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