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The Cure:Album07(ザ・ヘッド・オン・ザ・ドアー:The Head on the Door)

たぶん私がはじめてキュアーを見たのは、ローカル局(テレビ神奈川とか)の深夜の音楽番組で曲は『クロース・トゥ・ミー:Close To Me』だった。見ようと思って見たんではなくて、なんか偶然テレビを点けたら向こうからこっちに流れてきた
イギリスのバンドの曲だと紹介されて、なんだか今まで見たことのない価値観のものがそこにあって、曲といい映像といいなにもかもがなんだか怖かった。音が不安になるほど少なくて、クシの歯を鳴らすような音を出したみたいな、こんな呪いの子守唄みたいな奇妙な曲を聞いたことがなかった。アメリカのビルボートトップ10 なんかの明るかったり、覚えやすいメロディーみたいな方向ではない、こんな音楽がこの世にあることをはじめて知った。

●クロース・トゥ・ミー:Close To Me

前のアルバム『ザ・トップ:The Top』のポップな方向をより進めたように見えて、はじめて聞いた感想は「別の世界が広がってる感じ」でした。頭の中で作った架空の世界ではなくて、生々しく現実に生きている感じがする。実際に動いて喜んだり泣いたり叫んだりしている感じがする。
それまで私の中では、甘いキャンディーというのがポップソングのイメージだったのが、口の中でピチピチと動き回るような奇妙な得体の知れない感じの、今まで持っていたポップソングのイメージを全く書き換えてしまったような曲が入ったアルバム。

オールミュージックの評論家ティム・センドラは回顧的なレビューで、『ヘッド・オン・ザ・ドア』がキュアの新しい音楽の方向性を示し、スミスがバンドのトレードマークである「陰鬱と破滅」のスタイルを「ダンス可能かつポピュラー」にすることに成功したと指摘し、センドラはアルバムの「独創的」アレンジが「以前の取り組みに欠けていた音楽の深さ」を提供していると述べた。 Q』に執筆してトム・ドイルは「In Between Days」や「Close to Me」といった曲が、「往年の陰気さと最近のポップな高揚感をブリッジ」しているとスミスを示したと語った 。 ピッチフォークのニツフ・アベベは、バンドの「最も集中したポップ・アルバム」であり、「タイトで素晴らしいパッケージ」とみなした PopMattersは、1980年代の12の必須オルタナティブロックアルバムのリストに『ヘッド・オン・ザ・ドア』を含め、このレコードを「洗練のほんの一端を適用しながら、怒りの表現手段としてポップ音楽を使うスミスの能力の優れた例」と呼んだ。

https://en.wikipedia.org/wiki/The_Head_on_the_Door

これぞキュアーっていう曲を一曲おしえて」と言われれば、私は『クロース・トゥ・ミー:Close To Me』をおしえる。閉塞感や危うい危機感があって、それを踊ってしまうようなポップソングに昇華している大好きな曲。

私はこのために何時間も待っていた
私は自分自身をとても病気にした
今日は寝ていたかった
この日が終わるとは思わなかった
今夜が来るとは思わなかった
こんなにも身近に(This close to me)

でも、もしあなたの顔があれば
安全で清潔にすることができる
私に確信さえあれば
ドアに頭をぶつけたのは(That my head on the door)
夢だったんだ

DeepL翻訳ツールを使用(www.deepl.com)

『クロース・トゥ・ミー:Close To Me』の歌詞には、アルバムタイトルの『ザ・ヘッド・オン・ザ・ドアー:The Head on the Door』が出てきています。

●インビトゥイーン・デイズ:In Between Days

『ザ・ヘッド・オン・ザ・ドア』は、イギリスのロックバンド、ザ・キュアーの6枚目のスタジオアルバムである。1985年8月30日にフィクション・レコードから発売された。シングル「In Between Days」がイギリスのシングルチャートで15位を記録したのに先立ち、『ヘッド・オン・ザ・ドア』はメロディーメーカーによって「ポップソングのコレクション」と評された。その多様なスタイルにより、グループはヨーロッパと北アメリカの両方でより幅広いオーディエンスに到達することができた。イギリスでは、9月7日のアルバムチャートで7位にランクインし、これまでで最も成功したアルバムとなった。

https://en.wikipedia.org/wiki/The_Head_on_the_Door

このアルバムのチャートをみてみると、オーストラリア(6位)、オランダ(3位)、ドイツ(15位)、イタリア(24位)、ニュージーランド(11位)、スウェーデン(24位)、スイス(14位)、フランス(6位)、イギリス(7位)、アメリカ(59位)でヨーロッパとアメリカで上位入り。
フランスとイギリスで10万枚以上売り上げでゴールドディスク。アメリカでは50万枚以上売り上げでゴールドディスクになってます。

この時期のキュアーのすべてのPVはティム・ポープであり、映像も恐ろしいほどにノリに乗っている。
この時期はキュアーの音楽ビデオ集の『Staring at the Sea: The Images』(アルバム1枚目から今作までの13曲のPVを収録)が出るタイミングで、なんとファーストアルバムのPVを3曲もあらためて作ったりしたのでした。
このアルバムからのPVは以下の太字の3曲です。

The Cure "Close to Me" (1985)
The Cure "In Between Days" (1985)
The Cure "Killing an Arab" (1986)
The Cure "Boys Don't Cry" (1986)
The Cure "Jumping Someone Else's Train" (1986)
The Cure "A Night Like This" (1986)

https://en.wikipedia.org/wiki/Tim_Pope

●ア・ナイト・ライク・ジス:A Night Like This

https://vimeo.com/63070651

ロバート・スミス、ロル・トルハーストとの暗黒三部作『セブンティーン・セカンズ』、『フェイス』、『ポルノグラフィー』で演奏・作曲していたベースのサイモン・ギャラップが復帰したアルバム。ギタリストのポール・トンプソンは、バンドのごく初期にギターを弾き、The Topのツアーではキーボードとサックスも担当していたが、正式なメンバーとなった。ドラマーのボリス・ウィリアムスは、以前トンプソン・ツインズと仕事をしていたが、1984年のツアーのアメリカ公演でバンドと共演した後、ようやくアンサンブルに加わった。

https://en.wikipedia.org/wiki/The_Head_on_the_Door

前作『ザ・トップ:The Top』はバンドとしての演奏がこなれてなかったが、今作ではメンバーそれぞれ持っているものが曲に出て、グルーヴ感(音楽を聴いて身体を動かしたくなる感覚=音楽を演奏する人が、本来のリズムから意図的にずらすときの「ズレ」)が出ている感じがする
それでいて、音の層は増えていても引くとこはしっかり引いていて、楽曲としての鋭さは増している感じがする。この時のこのメンバーにしか出せない音を見事に形にした、奇跡的なアルバムと思う。

私が最初にキュアーを聴く人におすすめするのは、このアルバム『ザ・ヘッド・オン・ザ・ドアー:The Head on the Door』(または『ウィッシュ:Wish(1992)』)です。
逆に言えば、大変残念ではありますが「このアルバムの曲を聞いてもDNAが躍動しない人は、きっとキュアーに向かない」と思われます。


『プッシュ:Push』という曲は、ライブで大盛り上がりの曲。
最後にこの曲のライブを、ティム・ポープが監督した『The Cure in Orange(1987)』の映像からどうぞ。

●プッシュ:Push


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