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【映画のパンフ 全部見せ】No.7 『 デッドゾーン(1983)』

スティーヴン・キングの小説をデヴィッド・クローネンバーグ監督で映画化。
このパンフは40ページあって、シナリオまで収録。こんなのパンフレットの域を越えてます。

「普通の生活をしたかった。恋人と結婚して家族を作って生きていきたかった。こんな特殊な能力なんていらなかった」という思いで、なんとか隠れて生きていくジョニー。そんなジョニーが選挙運動中のある候補者に触れた瞬間に見てしまった未来。そこでジョニーは「私はこのために私はこの能力を得たのかもしれない」とある決意をする。そんなお話。

クローネンバーグ監督作の中でも大好きな作品です。音楽や風景やお話が作り出す雰囲気にどっぷり浸りたくて、映画館でやっているのを探しては観に行ってました。

「なんで生きてるかわからない」という思いのクリストファー・ウォーケンさん。

一見もの静かな普通の人、クローネンバーグはただものではない
(久保田明、村井裕、大森さわこ)


久保田 マニアの人は『デッドゾーン』でクローネンバーグは変わったと言います。確かにそう、何といってもこれでメジャー映画へ進出したんだから。でもそれだけで変わったと揚げ足を取るのは、映画の正しい楽しみ方ではないという気がします。作家はどんどん変わるものだし。『デッドゾーン』でクローネンバーグをけなすのならば、『ザ・フライ』をあんなに持ち上げるのは、僕はちょっとおかしいと思う。
大森 そうね。『ザ・フライ』よりは『デッドゾーン』の方がいいと思った。
久保田 『デッドゾーン』は彼のターニングポイントだと思います。できは悪くない。
村井 むしろ、できすぎって感じですかね。

パンフレット2ページより
パンフレット14ページのあらすじと解説

ジョニーは如何にC(クリストファー)ウォーケンだったか
吉野朔実

交通事故に遭い、仕事も恋人も失ない、ほしくも無い超能力を持たされ、使う気も無いのにこのカが発揮される度に哀弱してゆく主人公ジョニーの人生に対してほとんど投げ槍な状態は、忘我の淵にたたずむC・ウォーケンの印象に値する。
 「淵」これがひとつのボイントである、崖と言わず、プラットホームと言わず、およそ淵と言う名 の極に立つ者の背中は誘惑に満ちている。あとちょっと、ほんのすこうし背中を押してやれば、ええい思い切ってそちらの世界へ行ってしまえと突き飛ばしたくなるのは、誰のせいでも無い。彼自身が誘っているのだ。また人間心理の常として、突き飛ばしたい衝動の反作用として、危ないですよと引き戻したい誘惑と言うのもある。

パンフレット11ページより
作品全部のシナリオを収録

●同・病室内(眠入っているジョニー。看護婦が新しいタオルやシーツを運んで来る。看護婦がジョニーの額の汗を拭った途端、ジョニーは看護婦の手を握り締め、かっと目を見開く。看護婦は驚きの声をあげるが、突然のことに、手を振り解こうともしない。ジョニーは上半身を起こし、部屋の隅を凝視する。ジョニーには「見える」。部屋は炎に包まれ、少女が部屋の隅で泣きわめいている。家のミニチュアが、ぬいぐるみが、炎に包まれ床に落ちる)
ジョニー (呟くように)エミー。
(看護婦の方に向き直り)エミー!
看護婦 エミーは私の娘よ!
ジョニー 彼女か叫んでる。家か火事だ。部屋にとり残されている。まだ間に合う。(再び郎屋の隅を凝視して) エミー!
(ジョニーの毛布や枕元のランプ台も火を噴き、ランプシェードが燃え崩れ、金魚鉢は沸騰し破裂する。窓ガラスも砕けて飛び散る)
ジョニー 叫んでいる、エミーが……。早くして、娘さんが、急いで!

パンフレット28ページより

私が今作でゾゾゾッときたのがシナリオのこの部分。5年間昏睡状態に陥ったジョニー(クリストファー・ウォーケン)の特殊能力の見せ方でした。見てる映像だけでなく、見ている世界にジョニーが入り込んでいるという映像に鳥肌が立ちました。(以下の予告編に映像が出てきます)

https://vimeo.com/232978833

悲しいお話ですけど、はじめてクローネンバーグ作品観る方には今作『デッドゾーン』はおすすめ(あと『ザ・フライ』も)。これ観てなんとも思わなければ、多分他の作品も合わないと思います(基本クローネンバーグさんはこういうテイストのお話なので)。

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