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The Cure:Album11(ワイルド・ムード・スウィングス:Wild Mood Swings)& Galore: The Singles 1987–1997

このアルバムまで前回より今回、今回より次回と着実にセールスを伸ばしてきたキュアーであった(『Disintegration』は売れすぎたので別にして)が、このアルバムでガタッとセールスが大きく落ちた。

聞き手っていうのは気まぐれである。いきなりバンドが売れたりすることがあれば(ニルヴァーナの突然のブレイクとか)、その逆に何故だか全然売れない時もある。実際このアルバムはそこまで悪い内容ってわけでもない気がする。でもこのアルバムの姿勢みたいなものが、コアなキュアーファンからは嫌われそう。

あと、流行り廃りの流れの速さに対して、前のアルバムから4年の間隔も長すぎたのだろう(中学一年が高校二年になれば聴く音楽も全然変わる)。子供が遊んで飽きたお人形をゴミ箱に捨てるみたいな、自然な流れなのかもしれない。

スミス:『Wild Mood Swings』の制作に着手した時、僕はモチベーションを取り戻してた。それは作風にも現れてると思う、思い切り羽目を外したような曲があるからね。でもあのアルバムは発売直後から酷評されて、ファンからの評判も良くなかった。あんなにも失望したのは、後にも先にも一度だけだよ。

https://rollingstonejapan.com/articles/detail/30010/11/1/1

セールスだけがすべてじゃないさ、どんまいロバート・スミス。

●ミントカー:Mint Car

こちらは2枚目のシングル曲。
このあたりの映像をチラッと音楽番組なんかで見て「ああ、またこの感じね」ですぐにはアルバムを買おうともしなかった私(PV監督もティム・ポープではないし)。

もうあの大好きなアルバム『Disintegration』から9年も経っていて、今ではキュアーは「大御所の漫才師のおなじみのネタ」という安定した感じがして、ヒリヒリするような挑戦なんていう雰囲気は全然ない。
今ではこのアルバムも聴けるが、当時は「減量に失敗したボクサーが、お金をばら撒いて試合に勝ってる」みたいな感じがして、どうしても聴くことができなかった。

スミス:僕が思うに、狂ったサルサのような趣のある「The 13th」が良くなかったのかもしれない。何年もシーンから遠ざかっていた僕らの久々の新曲だったわけだけど、人々はそれでアルバムに対して先入観を持ってしまったんだと思う。

https://rollingstonejapan.com/articles/detail/30010/11/1/1

●The 13th

こちらが1枚目のシングル曲。
そんな悪くないとは思うんだけど。私なんかには「どうしたんだい、あんたのかつてのパンチはこんなもんじゃなかったぜ」みたいな感想である。
どうしても音も映像も、今までの焼き直しに感じられてしまう。今までにない閃きみたいなものもないこんなアルバムだったら、もう出さなくてもいいのではなかろうか。やたらとキュアーが好きなだけに厳しくなってしまう。
初期からキュアーを見てきたファンは同じような感想ではないだろうか。

●ゴーン!:Gone!

  • 4枚目のシングル曲。
    このPVはライブツアーのハプニング映像集みたいで面白い。
    でもなんか「かつての栄光の日々」みたいで、見てて悲しい。

スミス:収録時間の長さも災いしただろうし、一貫性のなさも問題だった。バンドとして生まれ変わったことを示したくて、僕は意図的にいろんなスタイルに挑戦したし、『Kiss Me〜』っぽいやつなんかも試した。でもボリスがいなくなって、ジェイソン(・クーパー)が正式に加入するまでの間、ドラマーが毎週のように変わってたからね。中には名前を思い出せないドラマーもいるよ。

https://rollingstonejapan.com/articles/detail/30010/11/1/1

▼キュアー後半のベスト盤『グロリア:Galore』を発売
このアルバムの翌年に『グロリア:Galore』というベスト盤が出ます。キュアーの後半の『Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me』から『Wild Mood Swings』までのシングルを収録したベスト版で、なんとアルバム『Wild Mood Swings』よりも、このベスト盤の方が売れました。
『グロリア:Galore』のビデオ版には『Disintegration』のPVもすべて入ってるということで、間違いなく買いです(前半の2枚のPV集はレーザーディスクとビデオでした、時代の流れよ)。

● Want

これがこのアルバムの1曲目のライブ版です。
この迫ってくるような感じがいいし、悲しげなメロディーがアガる曲。
この調子でアルバム1枚作ってくれたらよかったのになあ。

次回がこのキュアーアルバム紹介は最後になります。
次のアルバムまでは紹介せねばと思って、ここまで続けてきたのでした。

「(キュアーは)もう終わっちゃったのかな?」
「バカヤロー、まだ始まっちゃいねぇよ」

映画『キッズ・リターン』より

ということで次回、最終回です。

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