見出し画像

四国のブックオフで宮里久美さんのレコードに出会った話

今ではさほどアニメに夢中になったりしないので、あの時は「なんであんなにアニメに夢中だったんだろう」とか思うことがある。
多分アニメに没頭するってことで自分が潰れないように踏ん張っていたんではないかと思う。環境が変わったら聴く音楽も観る映画もあっさりと別のものに移っていった。

はじめは『超時空要塞マクロス』に関するものならレコード借りてきてテープに録って、主題歌を歌っている飯島真理さんのレコードを買って、本が出たらもれなく買って、変形する玩具なんかが出たら買ってた。そういう流れで絵や制作が同じグループの『メガゾーン23』というアニメ(Part1〜Part3)にもはまっていった。
『メガゾーン23』はテレビでは放送していなくてビデオ販売のみであったが、都心の映画館での上映があって観に行った。その日は舞台挨拶なんかがあってプレゼント抽選会もあって私はなぜか当たってしまいステージに上がって非売品の『メガゾーン23』の白いジャンパーをもらった。そこで私に白いジャンパーを渡してくれたのが作品の主題歌を歌っている宮里久美(みやさとくみ)というアイドルさんであった。

最近になって、親元から持ってきたレコードプレーヤーのベルトを付け替えて動かすことに成功した。この四国の山の中に移住してきて5年ほど、もう数十年ぶりに小さい頃に持っていたレコードをかけて聴くことができて、私は感動していた。
そこでこのプレーヤーで中古のレコードを聴きたくて中古屋まわりをしはじめたのであった。近場からまわって行きついに隣の県まで遠出して、何軒目くらいのブックオフで見つけたのが宮里久美さんのLPアルバムであった。

「いっそコロしてくれ」を言いたいくらい辛い時期(学校を辞める辞めないがあって、結局辞めた)と、人生のくじ運をすべて使ったかのようなラッキーな経験と、誰の目も見ることができなかったのにアイドルさんと握手をしたことなんかが一気ドッと思い出されて、吐きそうになったのをグッとこらえた。
中古屋は誰かが持っていたものを売りにきているお店である。ということは誰かこの県に宮里久美さんのファンさんがいたということで、まずそれがうれしい。そして次に「きっと他にも宮里久美さんまたは『メガゾーン23』のものをその方が売ったのではないか」ということである。
そこで今度はLPの次にシングルレコードを捜索することにした。かなりの数であるがこれは見逃すわけにはいかない。何列もある棚を上から順番に見ていく。
多いのは昭和の歌謡曲で、郷ひろみ、野口五郎、西城秀樹は何枚も出てくる。山口百恵、森昌子、榊原郁恵、岩崎宏美も「何枚シングル出しておるのだ、毎月出してたんではなかろうか」というくらい出てくる出てくる。一枚も飛ばしたりしないようにわからないものはしっかり名前を確認してから次々と見ていく。
上の棚を見終わって下の棚の真ん中くらいでついに見つけた、宮里久美さんの写真のシングルレコードである。一面は宮里久美さんの姿で、その裏面を見ると『メガゾーン23 Part2』のイヴというキャラクター(絵は美樹本晴彦)でどちらの面を表にしてもいい作りだ。それにこの曲は私が一番好きな『秘密く・だ・さ・い(1986年1月21日)』という曲である。スローでありながら巨大な悪のシステムが攻撃されてゆっくり崩壊してくのにピッタリな雰囲気の曲(どんな雰囲気だよ)なのである。

動画がありました。

ここにも宮里久美ファンがいたのだという喜びがあった。そして「君はもう大人になって『メガゾーン23』も『宮里久美さん』も卒業したのかもしれないが、ここからは私がバトンタッチしてこのレコードは大事にします」と声に出さずに約束をした。
するともうお店が終わりらしくて、閉店な音楽が流れたのでLPとシングルレコードを急いで買って、その日は車で2 時間かけて家に帰った。

帰ってから調べたら、今回買ったアルバムもシングルも通常はもっと高値でやりとりされているのを知った。宮里久美さんは全部で3枚のアルバムを出している。宮里という名字で沖縄出身かと思ったが神奈川の相模原市であった。1985年デビューで1989年には引退しているので、活動期間は4年ほどであった。

次の日の朝に「もしかしてセカンドアルバムはCDであったりするんではないか」と気になった。私はレコードしかチェックしていなくて閉店になってしまったので、朝からまた車で2時間かけてお店に向かった。

CDの棚を見落としのないように見て、何度も邦楽の『ま』のところを見たが宮里久美さんの名前はなかった。そこでもう一回LPレコードをチェックして、シングルレコードも新たな気持ちで見落とさないようにすべてはじめから見返した。そういえば昨日はうかつにも発見したところで捜索を終了してしまってしたのであった。
昨日の発見のところから次の列を見ていくとなんと宮里久美さんのシングルが出てきた。今度は『メガゾーン23 Part1』のシングルの『背中ごしにセンチメンタル(1985年2月5日)』であった。やったと思った。ここまで来たかいがあったというものだ。
ここで浮かれて捜索をやめてはならない、しっかりと最後のレコードまで確認をしないといけない。実際『メガゾーン23』のシングルはこれで全部(Part3のシングルはない)なのでもう出てくる可能性はないとは思っていた。
そして、また確認作業を進めると別のが出てきたのである。そのレコードは宇沙美ゆかりのファーストシングルの『蒼い多感期(1984年3月21日)』であった。

宇沙美ゆかりは『V.マドンナ大戦争(1985)』 という映画に主演したアイドルさんで、活動期間は実質1 年ほどである。私が現在アイドルとして注目しているのは宮里久美さんと宇沙美ゆかりさんの2人だけかと思う。全然マークしていなかった宇沙美ゆかりさんがいきなり出てきて、しかもスマホで検索するとこのシングルはデビューシングルではないか。東京から遠く四国の県で同じような時期に数年だけ活動してた2人のアイドルのシングルレコードが発見されたのである。私にはこれはもう奇跡と言ってもいいような気がした。

宮里久美さんと宇沙美ゆかりさんが今でも元気にいてくれたらうれしい。あとこのレコードは別の人なのか同じ人なのかわからんが、一時期はこの二人を応援していて、レコードを買って聴いていたファンさんも元気でいてくれたらうれしい。
本当に私にとって潰れそうな時期に内側から支えてもらったのだ。支えがなかったら生きていなかったのではないかと思う。当時のアニメやアイドルさん、本当にありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?