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お薬出しときますね

 別に全力疾走した後ってわけでもないし、いついじめっ子に呼び出されて画鋲で背中を刺されたりするわけでもないのに、寝ても覚めてもドキドキドキドキと動悸がし続ける。血圧の数値を言うと「いくらなんでもそんなはずないだろ」とギョッとされるぐらい高いのは、この動悸のせいかもしれない。

 中学のいじめの毎日で心臓はぶっ壊れたようで、不整脈とかでよく病院に行ってた時期があった。でも、行ったところで結局治らないのである。そんなことなら「思い残すことにないよう、ある程度好きにさせてあげて下さい」ということになるであろう。
でも、そんなしてしばらく生きてたら貯金が底をついてきたりして「いつまでこんなこと続けるんだろうか」とまたバイト探しをしたりした。

 仕事が自分のやりたいことに直結していないなら、いったい何のために仕事しているのか疑問である。そんなの自分の生存するのを先延ばしにする為にやってるだけではないのか。そんなして『生きる』ことに何の意味があるのだ。そんなことなら、やるだけやって自分の中にあるものを絞り出すだけ絞り出してから、力尽きてくたばったほうが、よっぽど潔いだろう。などど思っていても、こうやって『生きる』ことになってしまってるんだから、もう私にはどうしようもない。

 物理的にここから別の場所に行くことはたぶん無理だ。距離とか時間とかは、おそらく私の意識が作り出しているだけなのだから。ファイルの拡張子が別のに変わるくらいの意気込みでないと、いつまで経ってもループし続けて、この一瞬からは抜け出せないであろう。

 もうここから出れな過ぎて、出入口の鍵が開いてるんだか閉まってるんだか確認するのもやめてしまい「きっと閉まっている」と勝手に決めつけて動かないでいる。かつてはなんで「ここから出たい」なんて思っていたのだろうか。こんなもん出れたって出れなくたって、どうでもいいことではないか。『檻から出たって、また別の大きな檻の中』なんだから。

 元々自分で作り出したものにも関わらず、もう全然幻になんか見えない。現実は確かにここにあるし、形はあるし3Dだし匂いもある。そんな現実に私は徐々に飲み込まれていくわけなのだが、もう逃げ出すこともできずに、ただ身体を徐々に持っていかれて、唾液も身体の奥深く、骨の奥までもベタベタに浸み込んでいき、抵抗するような気持ちなんて、もう全然なくなっていって。

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