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感情労働は心を解放する

コールセンターというと、ストレスフルな仕事というイメージが強いかもしれません。座って話しているだけでお給料をもらえるので、楽といえば楽なのですが、なかなかそうも言っていられません。先週は孤立無援の状態におかれたオペレーターがロボットのような心で働く様を書きました。
けれど、本来の仕事の在り方は、もちろんそのようなものではありません。

大工さんなら手を使います。手をポケットの中に入れたままでは仕事ができません。一方、コールセンターの仕事は感情労働ですから、感情を使います。感情に蓋をして何も感じない状態では、大工がポケットに手を入れたままで仕事をしようとしているようなものです。必要なことは感情を解放し、自分の感情の動きをなるべく正確に感じ取ることです。
なぜなら、共感とは、自分の感情を鏡として相手の感情を感じ取るからです。

特にクレームにおいて、嫌味、怒り、憎しみ、そんな感情を向けられると自分が傷つくのが怖くて心を閉ざそうとします。そして、「これは仕事なんだから」と心を閉ざし、正論で論破しようとします。そこには敵対関係しかありません。でも、そこにいるのは決して敵ではありません。

私が受けたショックを私は抱えきれない。こんなことがこの会社で起こるはずがない。嘘だ、この会社ならなんとかしてくれるはず。

ここまで自覚しているかどうかは別として、お客様はこう思って電話をかけてきます。言い換えれば、電話をかけても一層嫌な思いをするだけだと考える人は決して電話をかけてはくれません。
だから勇気を出して、そんなお客さまの叫びの奥にある痛みを感じてみると、そこには、相手が分かってほしい悲しみや落胆があります。
そこに入るためには、「信頼」というセキュリティカードをもらう必要があります。それは、お客さましか発行することはできません。

でも、そうやって全神経を集中してお客さまの悲しみや落胆を共有したとき、それらは解放されていきます。その都度、私は人間の持つポジティブな力に感動します。その素晴らしい瞬間に立ち会うことができるのはセキュリティカードを手に入れた者にだけに与えられた特権です。お客さまの心が解放されるたび、応対者の心も解放されていくのです。

それでは、また。


世界や自分自身をどのような言葉で認識するかで生き方が変わるなら、敬意を込めた敬語をお互いに使えば働きやすい職場ぐらい簡単にできるんじゃないか。そんな夢を追いかけています。