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『お召し上がれます』は蛇足敬語~偽敬語ハンター参上!

先日、偽敬語ハンターとして生まれ変わった私が記事を出したのがこちら。

ちょっと調子に乗って、早速第二弾です。
こちらは近所のスーパーで売っていたレトルト食品のパッケージで見つけた偽敬語。
ぱっと見、おかしいと気づかれますか?

2行目だけ読めば正しいんですけどねぇ……

「お召し上がれます」はさすがに皆さん使ったことはないんじゃないでしょうか。日本国内で平然と売られているものとは思いたくありませんが、これが現実というもの。
「お召し上がれます」というキーワードでネット検索したところ、業者向けのこのようなシールがネット上で販売されているんですね。これじゃ、何も疑わずに購入した業者がそのまま商品に貼って大量に消費者の手元に届くという流れが出来上がっているということではありませんか。
「お持ち帰りできますのぼり」(「お持ち帰りできます」と大きく書かれた、店先に立てる旗)もamazonで大々的に売られていますし、こうやって間違った敬語が広まっていくのは残念でなりません。

さて、改めて見れば誰もが気付くように、この「お召し上がれます」は正しい敬語の形ではありません。
何が間違いかと言えば、単純に「お」が余計なのです。

付けてはいけない「お」による蛇足敬語

蛇足敬語とは私の造語です。蛇足は、なくてもいいものという程度の意味で使われます。しかしこの言葉の由来となった故事では、せっかく描き上げた蛇の絵に足を書き足してしまったためにその絵は蛇として認められなかったという話です。つまり、せっかく正しい敬語であっても、そこに付かないはずの「お」を付けてしまっては敬語の体をなさなくなってしまいますよ、という意味を込めて、蛇足敬語と名付けました。

主体を立てる「お」は動詞には付かない

表題は「お召し上がれます」と可能の助動詞や丁寧さを表す助動詞が含まれていますが、それらを取り除くと「お召し上がる」になります。この段階で、既に敬語の体をなしていません。

いや、そうは言われても、ピンと来ないなぁという人のために、別の例を挙げましょう。

「召し上がる」という動詞は主体を立てる特定形です。同じ種類の敬語としては、「おっしゃる」「いらっしゃる」などがあります。この「おっしゃる」「いらっしゃる」に「お」をくっつけてみます。

>>>「おおっしゃる」<<<
>>>「おいらっしゃる」<<<

いかがですか?
文法的には全くこれと同じ構造の言葉が「お召し上がる」です。
更に言えば、「お」を付ける言葉が敬語でなくても構いません。動詞に「お」を付けても、決して主体を立てる敬語にはならないということをご覧に入れましょう。

>>>「お歩く」<<<
>>>「お考える」<<<

もちろん、可能の助動詞や丁寧さを表す助動詞を付け加えてもおかしさは減りません。

>>>「お歩けます」<<<
>>>「お考えられます」<<<

いかがでしょうか。主体を立てる「お」は動詞には付かないということをご納得いただけたでしょうか。

このパッケージを作った人も、きっとなにか引っ掛かるものがあったろうとは思いますが、周りに正しい敬語を教えてくれる人がいなかったのでしょうね。残念です。

それでは、また。


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