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プロセスベースの河川再生

河川再生の実務においては、河川生態系の再生を目的としつつも、河川管理において生態系自体を操作できないために、生態系のベースとなる生息場(habitat)の保全や再生を試みようとします。しかしながら、河川は動的なシステムであるために、単純に生息場を再生しても生態系(生物多様性)の再生がうまくいくとは限りません。具体には、ワンドを再生しても、土砂で埋まってしまい、機能しない例などが考えられます。そこで、近年では河川の動的プロセスを理解したうえで河川再生を実施しようとするプロセスベースの河川再生が試みられています。日本でも河川再生後の地形変化を予測して河川再生計画の妥当性を検討する例などが出てきています。今後このような概念に沿った計画論や技術開発の進展が望まれます。

以下はその代表的論文であるProcess-based Principles for Restoring River Ecosystemsからの4つの原則の要約(Chat GPTとDeepL活用)です。


要約

河川生態系の回復を目指す上で、プロセスベースのアプローチが重要な役割を果たします。このアプローチは、河川や氾濫原の生態系を形成し維持するために不可欠な物理的、化学的、生物学的プロセスの標準的な速度や規模を再構築(reestablish)することを目的としています。生態系の状態は、水文・土砂レジーム、氾濫原と水生生息域の動態、および河岸と水生生物相を制御する階層的プロセスによって支配されているため、これらのプロセスを理解し、河川の再生に組み込むことが不可欠です。これには、劣化の根本原因に対処する、現場の物理的・生物学的ポテンシャルに合致する、適切な規模での再生、および再生によって期待される生態系の動態を明確に示す、という4つの基本原則が含まれます。

1.劣化の根本原因に取り組む

河川再生は、単に症状ではなく、劣化の原因に焦点を当てるべきです。これには、河川の自然なプロセスが人間活動によってどのように変化したかを理解し、その原因を取り除くか、影響を最小限に抑える戦略を実施することが含まれます。

2.現場の物理的・生物学的ポテンシャルとの一致

河川再生計画は、対象とする場所の自然特性とポテンシャルに基づいていなければなりません。これには、その地域の気候、土壌の種類、地形など、自然環境の要因を考慮することが含まれます。

3. 環境問題に見合った規模での活動

河川再生は、対象とする生態系の規模や範囲に適合するように計画されるべきです。これは、小規模な介入が大きな生態系に与える影響は限定的であること、また逆に、大規模な介入が小さな生態系に過剰な影響を与える可能性があることを意味します。

4.期待される結果の明確化

河川再生を行う際には、その活動が生態系にどのような変化をもたらすかを明確にする必要があります。これには、目標とする生態系の状態を定義し、その目標に到達するための具体的な指標を設定することが含まれます。

河川生態系の回復においては、過去の人間活動による影響を理解し、その影響を緩和するための戦略を立てることが重要です。例えば、河川の堰き止めによって生じた影響を緩和するために、ダムの管理を改善し、環境流量を再導入することが考えられます。また、河岸植生の回復や、侵食を防ぐための植生の植え付けなど、物理的な修復活動も重要です。

さいごに、プロセスベースの河川再生は、河川生態系をより持続可能で回復力のあるものにするためのアプローチです。このアプローチを通じて、生態系は将来の気候変動や人間活動の影響に対してより適応しやすくなり、多様な生物種にとって豊かな生息地を提供し続けることができるようになります。河川生態系の回復は複雑で長期にわたるプロセスですが、これらの原則に従うことで、より効果的で持続可能な結果を得ることが可能になります。