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【店舗の壁】ビアラボ ジョークンができるまで

このエントリは壁Advent Calender 2023の9日目の記事です。
今回の話も一般化などするつもりはなく経験談と自分なりの学びを書きます。

tl;dr;

最初はこんな壁だった空間が

醸造長岩田と設計士谷口さん. 8月頭

こんな素敵な壁のお店になるまでの話です。(ディスプレイはそのうち壁掛けになります。人生常に発展中)

十日町の常連さんを呼んだプレオープンの様子

お店を作り始めるまで

なぜ越後湯沢にクラフトビール専門店を作るかはこちらに書いた。要するにジョークンを継続させよりおいしいクラフトビール探求するために必要なためお店の開店を決めた。

実際に動き始めたのは3月くらいであった。元々ジョークンを始めるときの目標の一つとして、クラフトビールとコース料理を出すお店をやりたいというものがあった。そのため、東京の色々な名店で10年近い経験がある知人が、数年前に十日町に帰ってきていたので興味があるか声をかけるところから始まった。何回か相談をしたり、東京で働いていたお店に行ったりして話を進めていたが、十日町から湯沢の距離や帰ってきてからのライフイベントなどもあり、その人にお店をやってもらうことは断念せざる得なくなった。しかし、クラフトビールペアリングのコース料理のお店というのは諦めていないので、いつか実現したい目標である(興味のある人がいたら声をかけてください)。

シェフ候補が働いていた銀座のお店。おいしかった。

↑と並行して物件探しを進めた。湯沢町の不動産屋のオフィスや店舗向けの物件を見ていたが、実はこれは全く迷わなかった。越後湯沢駅から近くしかも飲食店も多い温泉街側の通りの沿いの建物2階にある物件があり、そこは道路沿いの居抜き店舗の相場から考えたらだいぶ家賃が安かった。それもそのはずで、その物件はこれまで温泉旅館建設のための事務所として利用されたことがあるだけであり、上下水道が通っているだけという状態だった(ちなみにこれだけでもかなりラッキーである)。

4月後半(クラウドファンディングを始めた時期だ...)には、シェフになる人には断られたが、ジョークンを今後健全に経営するためには越後湯沢での店舗展開はやらなければならない、と共同経営者である岩田と話を決めた。そして、GW中に内見の申し込みを入れた。GW明けに内見をすることができ、私は本業の年休を取得して内見に臨んだ。物件が2階ということや、居抜きではないため初期費用が多いという不安はあるが、家賃の安さを考えれば夏場の閑散期も乗り切れると計算し、この場所でやろうと自然と決意できた。しかし、そこに立ちはだかるのはもちろんお金の問題である。

補助金の壁

前回の記事のとおり、ジョークンは赤字が続いており財政的にはかなり厳しい状況である。しかし、お店をほぼフルスケルトンから作るにはそれなりのお金が必要であるため、なんとか調達する必要がある。ここではその中でも補助金を獲得に向けた話を書く。個人的な感想だが、日本では中小企業にかなり手厚い補助金が用意されていると感じる。今年5月時点でも、検索をしたところ2つ出せそうなところがあった。私の出した補助金では論文と違ってDual Submissionが違反というのはなかった(もちろん採択されて同じ内容で2重取りするのはだめである)ため、その2つの補助金に申請した。補助金というのはもちろん何の準備もしないでもらえるものでなく、どういった事業を行うのかという申請書や、その結果得られる売り上げのシミュレーション、そして必要な金額とその証拠となる見積もり(もちろん合い見積もり)が必要である(場合もある)。補助金の締め切りが5/31だったため5月半ばから急いで書類を書き始め、並行してほぼスケルトンからお店を最低限作るための施工や必要な機材とその見積もりを取得して何とか申請をした。さらに、その10日ほど後にもう一件の締め切りがあったのでそちらの書類も作成した。ちなみに私にとってジョークンはエフォート率が0%の副業であるため、全て業務後や土日(最悪年休を取って)やっており、5月~6月半ばはとても大変な時期だった。幸いにして、1件の補助金は面接審査に進むことができ7月に面接をして無事に補助金に採択された。予算の少ない中で補助金を得られたことも大きいが、やはり早い段階で必要なお金とそれなりの確度を持った売り上げのシミュレーションを作ったのはとても重要だった。

補助金の面接の後に北海道に向かうための新潟空港で飲んだ🍺

店舗を作るための学び1:趣味の店でなくちゃんとビジネスをする店舗ならば、すぐに予算表や売上シミュレーションを作成して前に進める。それが決まればどうやって、いくらの予算を確保するかの算段も立てられる。

施工の壁

店舗を作っている言うとよく「お店のコンセプトは何?」と聞かれることがある。クラフトビールの専門店なのでもちろん「クラフトビールが飲めるお店」と言うのだがあまり納得してもらえないことが多い。より具体的に言うならば、目標の売上がある程度決まっているので「スキーシーズンは月に700Lのクラフトビールが売れるお店」なのだが、きっとその答えは期待していないのだろうと思う。

資金確保の問題などもあり、本格的に湯沢店を作りを始めたのは8月頭からだった。12月半ばのスキーシーズン開幕にはお店をオープンしなければならず、オペレーションの確認などを考えれば11月末にはお店が完成している必要があった。とはいえ我々は店舗づくりに関しては素人なので困っていたのだが、これまでのジョークンの活動の中でお世話になっている人に助け船を出していただいた。東京の某クラフトビール店の常連でジョークンも沢山飲んでいただいてる設計士の谷口さんと、南魚沼でRenovation Boxを経営されている土田さんに紹介してもらい、設計及び施工を依頼することとなった。現地での打ち合わせを重ねながら、ジョークンとして譲れないこと、できれば実現したいこと、あまりアイデアがないため案をいただきたいところなどを相談し予算感などもお伝えした。そういった議論を重ねる中で、どんなお店が実現できるかを明確にしていった。

結局、店舗の物件を契約して施工を開始できるのは9月半ばからであった。だいぶ時間がない中であるが、谷口さん、土田さん、そして施工に関わっていただいた方のご尽力により工事が無事に予定通り完了した。この時に感じたことは、自分たちが譲れない部分は譲ってはいけないが、やりたいことがある人の意見をどんどん取り入れることも重要だということである。なぜならば、やはり(自分たちも含め)多くの人はこだわりを持って仕事をしているからである。そういうお互いのこだわりを尊重できれば、仕事やその成果はより面白いものになるのではないだろうか。具体的には、店舗に置くスツールだったり、壁の材質や、足置き用の鉄の棒の加工をお任せしたところ、自分たちではでないようなアイデアを取り入れたお店ができた。

こだわりのスツール(朝倉家具さんに特別に作成いただいた)とこだわりの加工をした足置き
足置き加工の様子
引き渡しの時の取った写真。みんないい笑顔(謎にキメ顔してる自分以外)

店舗を作るための学び2:お店はなによりも予定通りに開店することが大事。絶対に譲れない部分でないならばすべて自分(達)のこだわりでなくても構わない。こだわってくれる人に仕事を依頼できるならば、きっと自分ではできないことをしてくれる。

結局言いたいこと

自分がやりたいお店を時間をかけて自分の手で実現するというのは素晴らしいことだと思う。しかし実際のビジネスでは多くの場合、予算や時間、人、機運が限られており、持ちうる範囲のリソースで立ち回るしかないという状況である。そんなときは、迷っている暇があるならば動き始めた方が良いし、こだわりがないことを悩むくらいならばプロに任せた方がずっとよいだろう。

しかし何が一番言いたいかといえば12/15にビアラボジョークンがオープンするのでよろしくお願いいたします。ということである。(実はすでにプレオープンしているのでよろしくお願いいたします。)

(だいぶ話を端折ってしまったが、自分が「こだわり」を持って言いたいことは言えたので良しとする。)(もう少しクラフトビールの話も書きたい)

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