見出し画像

2024年に狙うべきパワーエレクトロニクスのトップジャーナル

イントロダクション

 私は現時点において,電気学会産業応用部門英文論文誌のD6(パワーエレクトロニクス部門)の主査,およびIEEE Transactions on Power ElectronicsとIEEE Open Journal of Power Electronics のAssociate Editorさらに IEEE Journal of Emerging and Selected Topics in Power ElectronicsのGuest Associate Editorを行っています。また,電気学会産業応用部門誌,電気学会産業応用部門英文論文誌,IEEE Open Journal of Power Electronics (OJPEL), IEEE Transactions on Industry Applications,IEEE Transactions on Industrial Electronics等に論文投稿し,採択された場合もありますがもちろん不採録なった場合もたくさんあります。この経験をもとに,現時点でどのジャーナルに投稿すべきかについて私の経験を述べたいと思います


 インパクトファクター

Journal Impact Factor 2022
電気学会論文誌 (D分冊)   なし
電気学会英文論文誌 (IEEJ Journal of Industry Applications): 1.7
IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS : 6.7
TRANSACTIONS ON INDUSTRIAL ELECTRONICS : 7.7
IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRY APPLICATIONS: 4.4
IEEE Journal of Emerging and Selected Topics in Power Electronics : 5.5
IEEE Open Journal of Power Electronics: 5.8
IEEE Access 3.9

電気学会論文誌 D分冊

電気学会論文誌産業応用部門(D分冊)は、和文で論文を投稿できる数少ないジャーナルの一つです。D分冊では、パワーエレクトロニクス分野の回路や応用に限らず、モーションコントロール、モーター、電気鉄道、各種産業に関連する論文が掲載されています。直近5年間の論文は電気学会の会員のみがアクセス可能ですが、それ以前の論文はオープンアクセスで利用できます。掲載料も比較的リーズナブルなことも魅力の一つです。日本語での論文投稿のため、パワーエレクトロニクス分野での論文執筆が初めての大学院生の場合は、電気学会への投稿が推奨されます。査読も日本語で行われるため、査読に対する応答方法を学ぶ絶好の機会です。また、国内の多くの技術者がこの論文誌に目を通しており、国内企業の技術者に名前を広めるには最適です。しかしながら、インパクトファクター(IF)が業績評価に重要視される現在、国内の若手研究者にとっては敬遠されがちなのは残念な点です。

電気学会産業応用部門英文論文誌 (IEEJ Journal of Industry Applications:JIA)

電気学会産業応用部門の国際化を目的として、2012年に創刊された電気学会英文論文誌(IEEJ Journal of Industry Applications)は、現在も隔月で発行されています。2022年には初めてインパクトファクター1.7が付与され、今後は海外からの論文投稿がさらに増加することが期待されています。この誌面では、電気学会産業応用部門で扱う分野の論文が掲載され、D分冊と内容の範囲は同じです。しかし、大きな違いとして、掲載料はD分冊と同様に設定されていますが、掲載予定月前から利用可能なEarly Access 機能があり、さらに掲載月からはオープンアクセスで、会員外の読者もアクセスできる点が特徴です。最近では、電気学会主催の国際会議との連携も図られており、IEEJ JIAへの投稿だけでなく、国際会議での発表からIEEJ JIAへの論文投稿も容易にできるようになっています。

IEEE Transactions

IEEE TRANSACTIONS ON POWER ELECTRONICS、INDUSTRIAL ELECTRONICS、および INDUSTRY APPLICATIONSは、それぞれが異なる分野を対象としていますが、パワーエレクトロニクスの回路、制御、応用分野に関してはどのジャーナルに投稿しても適切です。オープンアクセスジャーナルと異なり、これらのジャーナルの査読期間は極端に短いわけではありませんが、概ね1から2ヶ月程度とされています。特にIEEE Trans. on Power Electronicsについては、査読の指摘が厳しい傾向にあるものの、論文が受理されれば、それだけの価値があると認められたことを意味します。インパクトファクターでの単純比較は難しいですが、個人的にはIEEE Trans. on Power Electronicsに論文を掲載できることは、研究内容及び論文のまとめ方が非常に高いレベルにあることを示していると考えています。パワーエレクトロニクス分野の最新動向を把握するためには、IEEE Trans. on Power Electronicsを定期的に読むことが必要です。最近では、Transactionの論文も一部がオープンアクセスで提供されています。

IEEE Open Journal of Power Electronics

IEEE Open Journal of Power Electronicsは、パワーエレクトロニクス分野に特化したオープンアクセスジャーナルです。査読期間は非常に短く、初回の査読期間は2週間から1ヶ月程度です。この迅速な査読プロセスは、査読者やAssociate Editorにとって大きな負担となります。IEEE Accessと異なり、このジャーナルでは査読者がすべてパワーエレクトロニクスの専門家であるため、専門外の査読者による評価を受ける可能性は極めて低いです。2022年にインパクトファクターが付与されたことと、最近のオープンアクセスのトレンドにより、今後のインパクトファクターの向上が期待されています。初回査読で良好な評価を受けた場合、再査読のための論文を1週間以内に提出するよう求められることもあり、その場合は特に対応が大変になります。

IEEE Journal of Emerging and Selected Topics in Power Electronics

論文の質という意味では,他のIEEEの論文誌とは遜色が無いと思います。このジャーナルの特色としては,特集号が定期的に募集されていますので,その点は他のジャーナルと大きく異なります。この特集号も,時代を先取りした内容になっていることが多く,募集されているテーマを定期的に確認すると先取りしたテーマを読み取ることができます。

IEEE Access

IEEEが扱う全分野をカバーするオープンアクセスジャーナルです。他のジャーナルと比べて査読期間が短いという利点がありますが、査読者が幅広い分野から選ばれるため、専門外の査読者による評価を受ける可能性があります。これにより、論文に対する適切でない査読が行われることも考えられます。しかし、多くの場合、IEEE Xploreでキーワード検索を行うため、同一ジャーナル内に異なる分野の論文が混在していても問題はないと思われます。

お勧め

 IEEE Transaction および Journal は現時点においては,レベルが高いことは間違いありません。ただし,オープンアクセスにする場合は $2,000 の費用が発生します。大学や研究機関に勤めている方であれば,IEEEを狙うことは必然だと思います。世界中の情報がコンピュータから手に入る時代となっているので,IEEEではなく電気学会の英文論文誌 JIA が私個人としてはお勧めです。ただし,IFが業績として評価される職場にいる方にとってはその限りではありません。

 もしかしたら,世界中の人がAIを使って論文を読むのであればもはや英語である必要もないのかもしれません。日本語でしっかりした論文で情報発信することも大事になると思います。

終わりに

 大学院博士課程学生や大学教員にとって、学術論文の掲載は必須の活動です。特にパワーエレクトロニクス分野では、適切なジャーナルへの投稿を通じた情報発信が重要となります。ただし、現在この分野には多くの雑誌が存在し、論文の数も膨大になっています。従来のように論文を発表するだけでは、その成果が国内外の技術者や研究者に読まれることは保証されません。このため、口頭発表での成果発表に加え、SNSを活用して自身の研究成果を適切に発信していくことが、これからの研究者にとって求められる姿であると言えます。このような情報発信の方法を取り入れることで、研究の可視化と影響力の拡大を図ることができます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?