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立春の日にーー紀貫之の和歌

今日は立春。気持ちも新たに春の足音を待ちたいものですね。
さて、今日は漢詩ではなく、立春の日の和歌をご紹介します。

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袖ひちて掬(むす)びし水の氷(こほ)れるを

   春立つけふの風やとくらむ

             紀貫之      『古今和歌集ーー春上』


【現代語訳】

(夏の日に)袖を濡らして手に掬ったあの水が(冬の間は)凍っていたのを、

立春の日の今日の風が今はとかしているのだろうなあ。

*ひつ(漬つ):水につかる、濡れる

*掬ぶ(むすぶ):手のひらで(水などを)すくう

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紀貫之(872?~945?)は、平安時代の有名な歌人。『古今和歌集』の撰者であり、巻頭の「仮名序」を執筆しました。

また、自らを女性に仮託して書いた、『土佐日記』は、最初の仮名書きの日記として有名です。

夏・冬そして春へと水によって季節を繋ぎ、風によって季節を知るという、この歌は、まさに「立春」の日の今日にぴったりの和歌ですね。

実際には、まだまだ気温も低く、風も冷たいのですが、春の足音が近づいてきたことを一足先に感じてみませんか?


【参考書籍】

『新国語総合ガイド(四訂版)』井筒雅風・樺島忠夫・中西進共編        
               京都書房


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