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ラヴ・イズ・オーヴァーで笑うなんて

 日曜日の昼下がり、家で昼食を嗜んでいると、テレビから"国民的キンコンカン"が爽快に鳴り響き、全国各地から自慢の歌声が届いてくる。

 軽快に踊りながら歌う人もいれば、人生に思いを馳せて歌い上げる人もいて、一度見始めるとつい見入ってしまうのだが、この番組で大笑いしたことは今までに一度もない。

 「歌の上手さを競う番組なのに、何を言ってるんだ」と思う方もいるかもしれない。確かに笑おうと思ってNHKのど自慢を見る人はいないだろうし、つボイノリオ『金太の大冒険』がたとえ歌われたとしても、笑うことはないだろう。歌の最中に白塗りの加トちゃんが刀を振り回しながら登場したら笑うかもしれないが、そうなると歌ではなくもはや寸劇だ。

 だけども常識が常識を超える瞬間がある。最近、バラードを聞いて笑いが止まらなくなった希有な経験をしたので、ご紹介したい。

 テレビ千鳥という番組の企画で「宮迫さんのラヴ・イズ・オーヴァーをちゃんと聴きたいんじゃ!!」があった。欧陽菲菲の名曲を最近テレビですっかり見なくなった"宮迫さん"が歌っているのを聞くだけの企画だ。

 宮迫さんご本人の公式YouTubeチャンネルで『ラヴ・イズ・オーヴァー』が公開されているので、未聴の方がいればぜひ聞いていただきたいが、歌の技量は然る事ながら、聞いているとまるで物語が眼前で繰り広げられているかのように映像として自然に昇華していく。何度聞いても素晴らしい歌声で、動画コメント欄も「泣いた」「感動した」が多数を占めていた。

 天から聞こえてくる"宮迫さん"の歌声を、千鳥とFUJIWARAの原西、ケンドーコバヤシが笑いを我慢しながら聞いていくのがこの企画のコンセプトだ。笑ってしまったら最初からやり直しで、笑いを必死にこらえながら苦悶する4人の顔に、小生も我慢できず大声で笑ってしまった。

 "宮迫さん"は芸人である。しかし、笑かそうとして『ラヴ・イズ・オーヴァー』を歌っているわけではない。しかも上述したように、笑いに転化される要素は一つたりともない。だが、千鳥がMCを務めている『相席食堂』の如く情報過多なツッコミが都度入り、「芸人なのになんでこんなにマジになってんねん」という背景要素が加わると、笑いは大波になっていく。

 小生は根っからのお笑い好きで、「吉本超合金」や「マジっすか!」でbase芸人のノリを当時体感し、「大阪フジワラリゾート」でFUJIWARAと千鳥の絡みを毎週見ていたので、このメンバーを見るだけで、笑いの期待値がMaxになってしまうのは否めないが、それでも不思議な体験には違いない。

 何かのテレビ番組の企画で「コウメ太夫で笑ったら即芸人引退」があり、平時ならば絶対に笑わないはずの同氏の持ちネタに大爆笑してしまったことがあるが、これと同じ空気感なのかもしれない。

 昔と違って、今はTVerで追体験することが可能だ。笑いに飢えているならば、ぜひご視聴を。


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