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ケリの悲劇

 前回、ケリのペアがうちの裏の田に棲みつき、2羽の雛の子育てをしていることを述べたが(「ケリの騒音」)、今回はその話の続きだ。

親鳥の騒動

 冒頭の写真は昨日の午前中、散歩に出かける前に撮った最も鮮明な雛の画像だ。周囲に人影はなく、スズメやツバメが餌を漁っているだけで、親鳥たちが静かに雛たちを見守っているとても平和なひとときだった。

 その後、昼頃に親鳥が、けたたましい叫び声を上げて上空を旋回し始めた。窓を開けて覗いてみると、田んぼの主がまた来ている。水を張った田に、いよいよ苗を植える準備でも始めた模様だった。

 だが、その後も親鳥たちの騒々しさはいっこうに収まらず、いつもは100~200メートル離れた別の田に降りたってしばらく様子をうかがってからまた戻るのだが、昨日はその田から近くの駐車場へ移動し、1羽はどうしても戻ろうとしない(どちらがオスかメスかは分からない)。2羽は離れた場所で互いに鳴き交わし、もう1羽が促すように迎えに来ていったん帰っても、すぐに駐車場へ戻ってしまう。そして、日が暮れるまで何時間もそんなことを繰り返していた。

 夕方、再び散歩に出かけるときに注意深く田んぼを観察してみたが、雛たちの姿が見当たらなかった。といっても、雛の色は土に溶け込んで見分けにくいので、じっとしているとなかなか見つけにくい。散歩から戻ると、田んぼの片隅に1羽のアオサギが静かに佇んでいるのを目撃した。

 日がどっぷり暮れてから、ケリたちの鳴き声もようやく鎮まった。駐車場に留まっていた1羽もなんとか元の田に帰ったようだった。

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