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金がどこにある?金が!


#大切にしている教え

 子供の頃から、父はよくこう怒鳴った。

「金がどこにある?金が!」

金のほとんどは、父の懐にあったので、

こう怒鳴られても、家族はげんなりするだけ。

激怒パワーの勢いが、凄すぎて、

誰も言い返せなかったけれど、

できるなら、こう言い返したかったところ。

「あんたが、持ってんじゃないの?」

 
  結婚してから、相手の親と同居。

まぁ、順調にいったほうかな。

戸惑ったのは、金銭感覚が全く違うこと。

地方で、それなりの商売張っている家だったので、

質素倹約とは、全く無縁。

家計費、使いたい放題!

いい気になった私は、毎日のようにケーキを買って

浮かれていた。

父の戒めなんぞ、どこ吹く風と、すっかり忘れ果て・・・

 しかし、つけは回ってくる。

子供を大学にやる頃になって、

貯金が足りなくて、アップ・アップ。

そこそこの給料とっていたのだから、

もっと貯金できたはずなのに、

何に使ったかも覚えていないような、

ずさんな金の使い方をしていた私。

おまけに、おつむのあまり良くない息子が一浪。

さらに大学に入学したものの、仮面浪人。

実質、二浪。

地方から、東京の大学を目指し、浪人ともなると、

かなりの金持ちでないと支えきれない。

年子の娘と、受験が重なることになり、

わずかな貯金を、崩すこと・崩すこと・・・

やっと、二人の大学入学が決まった時

躊躇なく、二人とも奨学金を申し込む。

何せ、住宅費・二人の小遣い・私立大学の学費と、

出費が重なるなんてものじゃない。

この頃から、父の例の格言が、時々頭をよぎるようになる。

「金がどこにある?」 

そうだ、どこにもない。

何故なら、私が貯金すべき時にしておかなかったからだ。

 父は、私たち子供3人分の、入学金・学費は、前もって

全部ためておいてくれた。

兄・姉は、有名K私立大学に受かったが、

私は、ポンコツ女子大にしか、受からなかった。

「お前の大学の費用が、一番高い」と父に渋面で、

言われたっけ。

いやぁ、申し訳なかった・・・と今なら思う。

  
 夫も息子も、嫁ぎ先の金銭感覚をそのまま受け継ぎ

「金は天下のまわりもの?」と考えている。

しゃらくさい、自分で回さないで、誰がまわすのさ!

あんまり、腹がたつと、仁王立ちになって、

こう怒鳴っている。

「お金、どこにあるとおもってんのよ!」

 
 父も母も亡くなり、

現金はなかったけれど、渋谷のお高い土地が

遺産として残り、

売っぱらって、現金にして、子供3人平等に相続した。

おかげさまにて、私の老後も、何とかなりそうだ。

自分としては、かなりの金額を手にしたもので、

またもや、気分が浮ついて、

高級旅館にとまる家族旅行をしたり、

息子の新築祝いをはずんだり、

似合いもしないブランドの指輪や、時計を買いそうになったり

極めつけは、田舎の土地は安いからと、

不動産に手を出しそうになった。

いや、待てよ!私、一人バブルに陥ってないか?

自分で稼いだ金でもあるまいし。

いい加減にしろよ!

カルティエの指輪なんぞ、似合う訳ないだろうが!

その、太短い指に!

目を覚ませ!

せっかくの大金、老後に回さないで、どうするのさ?

こうして、平常心を取り戻した私は、

少し金利が高く、元値が保証されいる県債を購入した。

後、10年は出せない。

お金の最大の敵、己から、お金を守ったのだ。

「金が、どこにある?金が!」

お父さん、ここにあるよ、ありがとう。

お金、大事に大事に使います。

私、お父さんの娘だから・・・・。



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