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バイクは、一目惚れじゃなきゃダメ。

教習所に通い始めた頃。近所のバイク屋さんのウィンドウに、ヤマハのブロンコが飾られた。1997年5月1日発売のニューモデル。
いやー、かっこいい。
ちょっとクラシックなデザインがすばらしい。
当時夫は、バリバリのオフロードバイクに乗っていたのだが、どうも私の趣味じゃない。レースに出るわけじゃないし。

これならしっくりくると思った。
当時の売り文句は、「街乗りもできるオフロードバイク」というような感じだった記憶。
確かに、その後、原宿に停まっているのをよく見かけた。同じ人のものかもしれないけれど。妙に決まっていた。
結局私は、街乗りする余裕はなかったけれど。

とにかく、免許取ったらこれを買おうと心に決め、教習を頑張った。
225ccと軽量だが、オフロードなので足つきが悪い。最大限までシートを下げてカスタマイズしてもらうことにした。
左足は半分くらいは着くのでなんとかなるだろう。
とにかく、他の選択肢は(私の頭の中では)ないのだ。

「いくらでも払う!」とやる気満々だったのだが、カスタム代などいろいろ入れても50万円台だったと思う。バイクって案外安いな。
タンクの色は、デフォルトがイエローとシルバーで、好きな色に変更もできたのだが、初めて見て惚れた前者一択。

こうして私は、あっという間に、(理屈上は)バイク乗りになってしまった。

納車された際、当時65歳だった父は、「俺もバイクは乗れるんだぞー」と言いつつ取り回していたが、あっけなく転倒。
小柄に見えるけれど、そこはまあ、一応バイクなので。急にやるのは無理ですよ。
もちろん母は呆れっぱなし。玄関脇に停めていたので、これ何? 誰が乗るの? とご近所でも評判に。

一年後の6月に結婚して、その夏に、北海道ツーリングに出かけた。
大洗からフェリーで苫小牧へ。大洗に行くまでに、急に大雨に降られ、雷が鳴るなか道端でレインウェアを着るとか、フェリーに乗るための急勾配を上るのもヒヤヒヤだとか、いろいろスリリングだったとしか言いようがない。

それでも、北海道ツーリングは想像以上に爽快で、毎日テント泊だったのだが、疲れもしないし快適そのもの。

北海道はバイク乗りの聖地だから、それぞれ立ち寄り場所も有名どころがいろいろあって、釧路和商市場はそのひとつ。
外にバイクがずらっと並んでいて、その光景はほとんど異様。

中では、まず大中小から丼飯を買い、それを持って各店舗を回り、小分けで売られている魚介を買って載せてもらうという仕組み。座って食べられるコーナーもある。
マグロ2切れとか、イカ糸作り盛りとか、ひとつ100円くらいからあるので、これは楽しい。

ここで買った箱入りタラコとバターで、その夜作ったタラコスパゲッティは、人生最高にうまかった。
キャンプ飯だから、スパゲッティを茹でこぼしたりはできず、茹で詰めていく感じなのだが、それがかえっていいトロミに。
何より、タラコが新鮮でうますぎる。北海道は、筋子、イクラ、ウニと思われているが、実はタラコがすごい。

北海道は、夏でも結構、涼しいというか寒い。峠を越えるときには、無料露天風呂で温まってから、また走ったこともあったっけ。
24時間、いつでも入れる「道端の温泉」が、北海道には何ヶ所もあるのだ。

調子よく道東中心に走っていたが、ある日、私のブロンコの後輪が突然パンク。シュルルルルーという音と共にあっけなく減速。
しょうがないから、とにかく次のガソリンスタンドまで、ボコボコ走りながら辿り着いたが、スタンドの人はまったくバイクはわからず、「工具は貸すから自分で直して」とのこと。

私はただ、指をくわえて見ているだったけれども、夫はちゃんと直してくれたので驚いた。
その時の夫のバイクは1000cc超えの大型。私のは225cc。
ガソリンの減り方が圧倒的に違う。

もちろん自分の乗り方が下手で、無駄にふかしたりしているので減り方も早いのだが、四六時中、ガソリンスタンドに寄るのがちょっと面倒になってきた。

とにかく、この初のツーリングは、今も手応えを覚えている、すばらしいものだった。

(つづく)


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