見出し画像

保険事故データのにおけるプロセス可視化の重要性

グローバル保険プログラム導入の目的はリスクマネジメントの高度化、トータルコストオブリスクの最小化になりますが、副次的な効果として事故データの一括管理収集が可能となり、特に日本的な低免責あるいはゼロ免責プログラムストラクチャーにおいては、これがガバナンス強化の観点で大きな力を発揮します。

保険事故データいわゆるロスランデータの活用、特にロスプリベンションに活かすことは古くから行われてきましたが、事故原因、発生場所、損害額などの保険事故情報サマリーであるロスランデータよりも、個々の保険事故のセトルメントのプロセスに更に有用な情報が詰まっており、その観点では保険会社の損害部門の方の役割が極めて重要です。

個々の保険事故においては、それぞれの被保険者が保険会社の損害部門の方と様々なやり取りをしています。その過程において、損害部門からは事故原因や発生事象について詳しく質問を頂く事になり、大口事故の場合には第三者の鑑定人の方が調査に入ってレポートを出される事もあると思います。被保険者は保険金を得る為に損害査定に協力をし、情報提供を行う事になりますので、この過程で得られる情報量は単なる結果レポートのロスランデータよりも遥かに多くなります。

本社リスクマネジメントとしては、自らが事業部門に質問せずとも、代わりに損害部門にて詳しく情報収集をしてくれているのと同じ事になります。分析の原材料を損害部門が代わりに集めてくれるわけです。このプロセスを部門毎に比較していくと、求められる情報に対する回答やレスポンス姿勢にも部門毎に大きな違いがある事も分かります。具体的には求償開始からクローズまでの所要時間は部門によってかなり違っています。つまり各部門のオペレーションが適正に行われているかのモニタリング効果もあります。

こうした保険事故セトルメントのプロセス可視化にはシステム手当が必要となる場合が多いと思います。保険会社側でも既存の損害システムを活用すれば、こうしたプロセスの可視化を含めた被保険者へのサービス拡大は可能なのではないかと思います。

本社コーポレート部門は事業部門の業務支援の役割もありますが、経営に対する提言、意思決定を促す部門でもあります。その過程においては、「何に基づく提言か?」という根拠としてのファクト、原材料が必要となりますが、これの収集にコストをかけています。原材料がなければ料理、つまり提言は出来ませんし、原材料が悪ければ料理は美味しくなりません。こうした情報収集ツール、つまりリスクセンサーとして保険プログラムを捉えれば、より活用の幅は広がるはずです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?