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Product Itself免責について

企業損保を取り扱われる方以外にはマニアックなトピックですが、企業賠責の世界では極めて重要な概念であり、実務においてもしばしば議論の起きるポイントでもあります。

そもそもProduct Itself(あるいは完成作業危険であればYour Work)免責とは、製品あるいはサービスを顧客に引き渡した後に、製品あるいはサービスの欠陥を原因として生ずる第三者事故に伴う法律上の賠償責任、いわゆる製造物責任(Product Liability)をカバーする賠責に含まれる免責条項で、被保険者自身が提供した製品あるいはサービスそのもの、あるいは派生損害を免責とするものです。

当該損害は損害保険としては瑕疵保証責任保険、つまり企業の保証責任を担保する保険として存在はしていますが、製品やサービスの欠陥に伴う損害は一定割合で生ずる事、メーカーとしては品質情報そのものですので、逆選択性も高くなるため保険料も高額になりやすく、自家保有し製品保証引当金などの引当金措置を行う企業が多いと思います。

話はそれますが、こうした製品の第三者事故の発生により、同機種の製品にも同様の対人対物事故の発生の恐れがあるとして行われるのがリコールです。これに対応するのがリコール費用保険ですが、実際の事故発生有無を問わず、被保険者自らの届出や公表をトリガーとして保険金を支払う珍しい保険ですが、製品によっては部品の共通化などが進み、製品回収に関わるコストが非常に大きくなる事から保険会社は引受に慎重な分野です。このようにPL、瑕疵保証、リコールはそれぞれ隣り合うリスクと保険であると言えます。

話をItselfに戻します。このリスクの本質はメーカーやサービサーがある製品やサービスを提供することを顧客に約し、対価を貰うその源泉たる品質リスクですのでビジネスリスクそのものになります。発生頻度も一般に第三者事故(波及損害)に比べると圧倒的に高く、その点でも小頻度高損害をカバーする保険に馴染みにくいタイプのリスクになります。

第三者事故(波及損害)が発生した場合にも、当該Itself部分は免責となりますが、実務上この適用範囲については議論の多いところです。製品自体の一体不可分性や受注形態など、さまざまな視点がありますが、特に大規模な製品、サービスの供給責任者はその適用範囲について、保険会社とも事前に十分な協議を要する場合があります。

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