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賠償責任保険と付保証明について

昨日少しツイートしましたが、大事な事なのでnoteに纏めておこうと思います。企業にとって最後の砦である賠償責任保険の重要性はこれまでにも書いてきました。ここでは、賠償責任保険にまつわる海外の実務とリスクマネジメントの進展について書きます。

言うまでもなく、賠償環境が世界一厳しいのは北米です。過去には賠償責任保険危機と呼ばれる保険会社が引受が出来ず、マーケットから保険調達が出来なくなり、企業の自家保有、キャプティブ設立を後押しした事もありました。現在も北米ではインフレ等を背景として急速にマーケットがハード化(保険料の上昇、キャパシティの削減、保険条件の縮小)が起きています。

北米においては、企業が商取引を行う際に、万が一の事故発生の際に相手方の賠償資力を担保するため、賠償責任保険の付保要求、並びに付保証明の提出を契約上求める事が一般的です。またこの付保証明を保険会社ではなく、ブローカーがアコードフォームと呼ばれる定型書式にて作成、発行する事も本邦とはプラクティスが異なります。

対象となる商取引が請負工事などであれば、この付保証明が無ければ現場に入る事も出来ませんし、物品供給契約であれば、付保証明を提示出来なければ契約違反として、最悪契約解除をされてしまうかもしれません。更には毎年の更新、あるいは期中の保険会社など、付保証明の記載内容に変更がある場合にも速やかな対応が必要であり、実務を行う被保険者、ブローカーにとってはかなり事務負荷がかかっています。

しかしながら、こうした賠償責任保険周りの頻繁な実務が、被保険者の賠償責任保険に対する重要性の認識、あるいはカバー範囲、金額の定期的な確認など、リスクマネジメントの取り組み強化にも繋がっているとも言えます。リスクマネージャーのいない中小企業においても、マーケットスタンダードの付保要求が契約に含まれる事で、結果的に必要最低限のカバーは常に確保される事になりますし、発注者としても万が一の事故発生の際にも安心です。

本邦においても、たまに同じような契約要求がある場合もありますが、一般的ではありません。企業として事故発生の際の責任をきちんと果たす、信用力の補完としても、こうしたプラクティスが広がることは、結果として企業の保険リスクマネジメントの根幹となる賠償責任保険に対するAwarenessを高め、企業競争力も高まるのではないかと考える次第です。

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