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経営者の意思決定に資するリスクマネージャーの役割

他業界からの転職や内部異動で新たに事業会社の保険リスクマネージャーとなる方がさらに増えてきています。昨年の企業保険カルテル問題を受けて、契約者である企業側も自身の保険リスクマネジメント体制を見直そうという動きが加速しているように思います。

転職であれ、内部異動であれ、初めての役割、役職のオンボーディングは戸惑う方も多いと思います。筆者も当社創業以来初の保険リスクマネージャーでしたので、社内での認知と事業に関する知識、歴史と文化、人脈、そして何より意思決定者からの信頼の獲得に当初は苦労しました。

リスクマネージャーは会社により所属は違えど本社コーポレート部門の役職です。コストセンターとして、現場を支援しながら持てる能力をフル動員して経営の意思決定に資する企画、提案を行い、経営の目指す会社のあるべき方向へリードするアクションを取り、結果をレビューして見直していくことです。

会社規模によっては自前のリスクマネージャーではなく、保険ブローカーや代理店の募集人の方が同じような役割を担う事もあると思いますが、共通して求められる事は意思決定者たる経営者の信頼だと思います。当たり前の話ですが、人からの信頼を得るには、先を見通した企画があり、信頼を受けて任された企画は期待を超えてデリバーする事です。

まず何かを企画提案するには根拠となる事実を集める事が重要です。公表データでも構いませんし、それを裏付ける社内データがあればなお良いでしょう。例えば、気候変動により自然災害が激甚化している可能性が高い、という事実に対して、保険リスクマネージャーとして、昨今の自然災害による保険損害動向を示し、経営に対してどのような企画が必要かを提言し、意思決定された企画を確実に実行していくような事になります。

簡単な話ですが、2つ重要なポイントがあります。1つ目は企画の根拠となる事実集めです。公表データに関する情報収集は勿論、社内情報が集まる所を抑える、例えば保険事故の情報などは典型的な保険リスクマネージャーの情報ソースです。仮説ではなく、事実に基づく所に説得力が大きく増します。

もう1つは企画実施のための体制です。決裁された企画は実現させて初めて付加価値が認知されます。つまり、絵に描いた餅にならないような社内外を巻き込む実施体制がある事が重要です。筆者もそうでしたが、最初のうちは自らが中心となって動き成果を示し、やがて成果が現れるほどに周りの支援が大きくなり、さらに大きな成果を出す事が可能となります。

抽象的な話ばかりで恐縮ですが、新たに保険リスクマネージャーとなられたという事は、解決すべき課題は山積しているはずです。最初は大変だと思いますが、スモールサクセスを積み重ねて経営の信頼を得て、社内外の協力者を巻き込み、さらに大きな課題解決に繋げるサイクルを作って、保険リスクマネージャーがあらゆる会社で活躍できる事を示して職務地位向上を目指したいと思います。

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