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損害保険鑑定人との連携

損害保険の保険求償実務における損害保険鑑定人の仕事と約款上の整理についてはこちらのnoteに書いております。鑑定人の仕事は保険会社、被保険者とは立場の異なる独立の第三者として、保険事故発生の事実確認を行い、約款上の有無責の確認、損害額算定の支援を行い、支払保険金の一部から報酬を得ることになります。

通常の保険事故求償実務においては、鑑定人の選定、発注、レポート、支払いの一連の作業は保険会社が行っており、当然ながら鑑定会社の収入のほとんどは保険会社が支払う保険金となるため、鑑定人の立場は中立の第三者の立場にありながら、保険会社との繋がりが強い存在となりやすい構造にあります。

一方で、鑑定人の発行する損害調査レポートは、保険事故に関する客観的な事実、被保険者からの申告事項が細かに記載されることになり、その内容は事故原因の推定、損害額の見積もりはもちろん、その後の事故防止にも役立つ情報源であり、単なる保険金協定に用いられる事のみならず、将来の事故防止に対する示唆としてリスクマネージャーにとっても有用なものであり、コストをかけて実施するのであれば、使い倒すことが合理的です。

大口の企業保険契約においては、約款上にあらかじめDesignated Loss Adjusterとして、特定の鑑定人が指定されるケースもあります。つまり、被保険者としても損害保険鑑定人との連携を強化して、損害調査レポートの活用を促進していく事が可能です。

保険事故のデータを将来の事故防止に活用する企業は多いと思いますが、残念ながら現状保険会社の保険金支払いシステムから出力可能なロスデータは定型的な物に留まり、事故の真因や周辺情報を知る事は難しいと思います。勿論保険事故全件に発行されるものではありませんが、特定の大口事故等における鑑定人の損害調査レポートは保険会社の提供するロスデータの補完資料として、是非被保険者も活用すべきものと思います。

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