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企業保険の競争入札プロセス

企業が契約する損害保険契約についてカルテル行為についての報道、行政処分が出ています。企業保険契約者として、競争入札を行う際には単に仲介者に丸投げするのではなく、自ら主体的に全体をコントロールしていく必要があります。

ステップ1: マーケット情報を集める
どのような保険条件でキャパシティをどのくらい確保するのか、スペックを決定するにあたって、最新のマーケット情報を得る必要があります。仲介者ともよく打ち合わせ、マーケット水準についても知っておくことが大切です。また入札を行う意向であることも早めにマーケットには伝えた上で、競争力を発揮出来る各社のリスクアペタイトを知る事、特に重要と考える情報など、予め契約者として収集しておくべき情報を整理しておく事が必要です。この時点で保険会社各社が引受意欲があるか、競争力ある見積もりを出せるかを判断する必要があり、以降の作業が無駄にならないよう、入札中止を判断する事もあります。

ステップ2: 必要情報の収集とスペック決定
特に初めて保険プログラムを組成するときなどは、必要情報の収集にかなり時間を要する事を念頭に置いておくべきです。財務情報など比較的容易に入手可能な情報から、例えば建屋の構造や建築年度、過去のロスデータなどの非財務情報はより時間がかかります。並行してプログラムのスペックを仲介者の支援も得ながら、1で集めた情報と会社として必要な保険カバー(※)の設計を行い、マーケットに提出するスペックを決めていきます。
※予想最大損害の算出やモデル分析など、プログラムスペックの決定プロセスはここでは省略します。

ステップ3: マーケティング(入札)の実施
仲介者を通じて作成したプログラムスペック、収集した基礎情報、ロスデータ、適用予定ワーディングを添え、各社へ見積もり依頼を行います。通常発出から1週間程度で内容に関する保険会社からの質問を締め切り、回答後また1週間程度で見積もり提出を依頼するケースが多いですが、大規模なグローバルプログラムになるとさらに倍以上の時間を要するケースもあります。

ステップ4: ネゴと幹事の指名、シェア決定
各社より提示を受けた見積もり内容を比較検討します。単純に提示された保険料水準だけでなく、引受可能キャパシティ、幹事引受可否、ベンチマーク提供力、クレームサービス能力、財務安定性など、様々な視点から内容評価を行います。最も条件の良い、評価の最も高い保険会社を幹事指名して順番にシェアを埋めていく事になりますが、条件や料率が幹事条件と合わない場合には、①ネゴして条件を合わせてもらう、②起用を見送り次点の会社とネゴする、③条件を緩和して受け入れる、④任意再保険で埋める、⑤条件差を許容して別証券で発行する、⑥自家保有する、などのオプションを検討する事になります。

ステップ5: 決定通知とフィードバック
参加各社に決定された内容について通知を行うとともに、特に不採用とした会社についても提案に感謝をすると共に、次回以降より競争力のある提案を貰うために評価の良かった点、悪かった点についてフィードバックを実施します。

各項目ともに、実際の実務では記載のようにスムーズに進むことは少なく、色々な壁に当たることが多くあります。プログラムが大きくなればそれだけ関係者と増えていきますので、一つ一つのアクションや検討、意思決定にも時間がかかります。重要な事は最初にも書きましたが、外部の専門家の支援を受けつつも、契約者自身が主体的に動いていく事だと思います。

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