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#2-1 自然農で40年間、国産レモンの元祖「れもんだにのうえん」


⚫︎ 日本一の「レモンの島」

国産レモンの発祥の地と呼ばれる「生口島(いくちじま)」は、日本一のレモン生産地として有名で、国内シェアのおよそ6割がここレモンの島で栽培されています。

広島県の最南端に位置し、夏の降水量と年間降水日数が少なく、傾斜地が多く、日当たりの良い温暖な気候がレモンの栽培に適しているため、品質の良いレモンを作ることが出来ます。

愛媛県へ渡る多々良大橋のたもとに広がる丘陵は「レモン谷」と呼ばれ、ここを中心にいくつもの農家が集まり何代にも渡ってレモンや柑橘類を栽培しています。

▲ 今回お話を伺ったのは れもんだにのうえんの永井さん

⚫︎ 「先代の父が『みんな一緒に植わってる方が楽しいやろう』という感覚で、始めたんです」

レモン谷の一角にある『れもんだにのうえん』の永井さんは、先代であるお父様の代から家族で40年間、農薬・肥料不使用の自然農法でレモンを栽培しています。

畑に入ってまず、レモンの木のなんとも自然体な姿が目に入ります。
私の知るレモンの木は割と低木で、たっぷりと葉と実が付いているイメージで、一方れもんだにのうえんさんのレモンの木は頭上高くまで伸び、さらさらとした印象です。

▲ 自由な枝ぶりのレモンの木

永井さん「父が40年前に初めてチャレンジした時に、『植物たちも、みんな一緒に植わってる方が楽しいやろ』ということで、レモンも含めいろんな柑橘を植えてみたのが始まりです。
(もっと管理しやすいように)低い木に仕立てることも出来るけど、剪定しすぎは『かわいそうや』と言うんで、なるべく自由に伸ばさせていて。
潮風に煽られる木を見ては『みんなで踊って楽しそうやな』と言いますよ、そういう感覚なんです。笑」

「お父様、ナイス感性すぎる!
今でこそオーガニックや有機の野菜を求める需要が大きくありますが、40年前はもっと自然農法は珍しく、実際は大変なことも多かったと思います。
植物目線でチャレンジしていく姿勢、尊敬です。」

▲ 海からミネラルをたっぷり含んだ潮風が吹き流れ、気持ちが良い園内。

⚫︎ レモンの本質は『皮』にある

ただただ酸っぱい、それがレモン。そんな概念が覆されるれもんだにのうえんさんの『レモンと炭酸水だけで作るリモナータ。』
レモン果汁を使わずにグラスの縁に皮を滑らせただけで炭酸水を注ぎ、「どうぞ」と差し出されます。

▲ 皮むきのナイフを入れた瞬間、香りの霧が目で分かるほど吹き出した!(写真がへたで、写すことはできませんでした)

「本当に炭酸水だけですか?皮の香りだけでレモンの味まで感じるかのようです。」

永井さん「そうなんです、一番フレッシュな状態ってこれなんです、これが採れたての醍醐味です。
果汁と皮を使い分けて味わうことで『レモンの香りは皮にある』ことが分かります。

(二杯目からは果汁と一緒に味見しながら)…酸味はあるけど、それもとてもまろやかに感じませんか?キツすぎないというか。
普段買われるレモンは、どうしても輸入のために早摘みされて運ばれるので糖度が低く、ただ酸っぱい。
僕たちのレモンはギリギリまで熟しているので、一般に比べて香りが芳醇で旨味とのバランスが良いので味わいやすいんです。」

「果汁はもちろんですがこうやって体験すると『レモンの皮』を見逃さずに使いたいと思います。
無農薬で安心して皮まで味わえるというのは有難いですよね。」

▲ 青空の下で体験させてくださいました

⚫︎ 注文を受けてから収穫する『受注収穫』でロスをゼロに

永井さん「この辺り(レモン谷)の農家仲間を集めて、どうしたら収穫後のレモンの味が落ちないか実験のようなこともして追求したけど、どんな保存方法よりもやっぱり、採れたてが段違いで美味しかった。
なので注文を受けてからその数量分を収穫するようにしています。『新鮮』だから『味は良い』し、注文分だけを切るので『ロスゼロ』になりました。

ただ、その分管理するためのコストとリスクは高くなります。でも僕たちが重きを置くのはそこじゃないから。
たくさんの数を効率的に売っていくよりも、ひとつずつ丁寧に満足してもらいたい。
それを続けて、今は全てのレモンを捌けるよう(ちょっと足りない位)になりました。」

▲ 半分に切ってしばらくすると、表面張力みたいに果肉が浮き出てきた。
スーパーに並んでいるレモンはふやふやだけど、このレモンはぎゅっと詰まっていて重い。

後編|農家として自立した判断ができるよう、常にレモンの可能性を探求して対話の場を持つようにしているという永井さん。
記事の最後には永井さんおすすめのレモンパスタのレシピも載せています。


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