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ビリヤニ変態コミュニティ(ビリヤニ大澤)

食の変態のお店には食の変態が集まる。
そういう食から生まれる変態コミュニティが特に落ち着く。

前にも述べたことがあるが、僕はお店に行くとお店の言うことを聞きたい人。
「食べる」ことが楽しみで生きている僕たち大衆と、食でお金を得て生活するお店の人々。
両者の力関係は等しい必要はなく、大衆はお店の人々の言うことを聞く関係でありたい。少なくとも僕はお店の人の「良いもの」「食べてほしい味」に従いたい。僕自身のわがままは不要だ。

このマインドを持ち両者が求め合ったビリヤニ店で変態たちの楽園を見た。
それは特異で異質で、でも僕は居心地がたまらなく良かったのだ。


まるで割烹が待ち受けているような

そのお店は「ビリヤニ大澤」。
ビリヤニ初心者な僕が、初めてビリヤニを食べるならこのお店にしたいと待ち焦がれた神保町の名店。

平日の訪問が難しく、いつかいつかと待ち続けていたお店が土曜日にランチの提供を始めたのだから奇跡的に予約を勝ち取った。

15時のランチ時間、45分前から入店可能(ただ最大45分間待ってくださいの注意書き。もう癖。)だったため、14時30分には入店。

予約の注意書きを読むに、「炊き立てのビリヤニに入店を合わせてくれ。15時に提供するから、その時間に来てくれ」お店の要望がここまで多いお店に出会ったことがなかったが、それはそれでなんだか興奮した。一体何が待っているんだろうと。


力強い「マトン」は店主の意思そのもの

静寂に包まれたそのお店は、地下1階。
10席のコの字カウンターはビリヤニの厨房のためのもの。
眉間に皺を寄せビリヤニの炊き上がりと睨み合う店主の背中はアスリート。
試合前の緊張感、絶対に話しかけられない張り詰めた空気がお店を充満していて、手に汗かいた。
これからご飯だと言うのになんだこの緊張感は。

着々と客が来店し、15時を迎えたころ、ミュージカルの前段かのように店主が真ん中でビリヤニ談が始まった。

ビリヤニについて、最も美味しいビリヤニの食べ方、絶対にルールに習って食べるお願い。

極め付けは全員が頼んだコカコーラの飲み方について(流石に変態すぎてスタンディングオーベーションしたくなった)。

空腹にビリヤニを入れて血糖値を上昇させ、「ここぞ!」というタイミングでコーラを吸引してほしいそのこと(コーラを飲むタイミングは店主が決めるから、そもそもテーブルに供されていない。意地のこだわりだ)。

この字カウンター真ん中にビリヤニ鍋が降臨した。
炊き上がりの香りを楽しみながら、大きなお皿で供された。

初めてのビリヤニは黄金の記憶になった。


炊き立てのビリヤニは、香りだけで口内が待てなくなる

マトンビリヤニはお米が白い部分も、オレンジの部分も。
口に運んだ途端、ビリヤニの出汁がふんだんに香り、鼻からスパイスの風味が抜ける。
舌に乗せ味を感じ始めると、凝縮された旨みが力強く口いっぱいに広がり始める。ますます力が大きくなっていく旨みの塊に向かって一生懸命走り続けるような、初めての味わいにも掴み取りたい旨みの力がしっかりと残っていた。

飽きのこない永遠に食べられるこの探究心の塊に、昇天しそうになった。

そう入ってもスパイス料理。
飲み物を一回挟みたくなるが、まだコーラは出てこない。
まだ我慢しろということのようだ。

美味い美味いと止まらなく、奥歯でしっかりと感じ味わうように食べていると、ヒリヒリしてくる。

もうここ!というとき、やっぱり、店主からコーラが渡された。
このタイミングを店主はわかっていたのだ。
全ては美味しいビリヤニと、格別のコーラのために。

仕事おわりの体に染みるビールのそれ。

渇ききった喉に体に、そのコーラはご褒美だった。
体が喜ぶのだ。

「くぅ〜〜〜〜!」確かに、ビリヤニにはコーラだった。

ほぼ締めのタイミングでコーラを飲み干し、ビリヤニを完食した。

燃えるように温かくなった体にはエネルギーがいっぱい。

それ以上に店主と会話はなく、誰一人感想を共有することもなく。
ただひたすらにお互いがルールに沿ってこの店に集まり、格別のビリヤニをいただく。静寂の中。

これぞドMたちの変態コミュニティなのだ。

美味しいひとときに、ごちそうさまでした。
では、また次回。



お店:ビリヤニ大澤(〒101-0047 東京都千代田区内神田1丁目15−12 佐藤ビル B1F)



*Instagramでは暮らしにある食をすきなだけ発信しています*

暮らしのヒントになれば、と。

リンク→https://www.instagram.com/keisukeueda__/




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