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南国マムアン天国行き(正式名称:南国食堂マムアンなり)

4月に誕生日を迎える自分を少し不運だと思ってきた。

まず新しい場所で何かがスタートすれば、交友関係を築くだけでGWを迎えてしまうし、そこで忘れられた誕生日を思い出す人も少なく、僕の誕生日を祝ってくれる人は限りなく少ない。
家族と本当に少ない一部の友達は僕の誕生日を覚えてくれているが。

そんな24年間を過ごしてきた僕は、自分で自分の期限を取る術を不本意にも磨いてきてしまった。

百貨店できらきらのお惣菜を豪遊してテーブルに並べてみるとか、ホールケーキをフォークで突くとか。
高額なものを自分に買い与えるとか。

毎年2月に入ると、頭は自分のための誕生日企画でいっぱいになる。痛いやつとか影で囁かれていそうだが、自信を持って機嫌を取りに行く方がよっぽど誇らしいと思うのだ。

今年2月、マイセカンドホームこと”南国食堂マムアン”のバインセオが期間限定復活していた幻ウィークで一人いつものように食べ進めていると、あれも食べたいこれも食べたいの欲望が沸々と湧き上がり、自然なまでに今年の誕生日企画が決定した。

「南国マムアン天国行き」(謎企画名すぎる)


この部隊が揃っていないと不安になる

詳細はうるさいまでにシンプルで、「ただ好きなメニューを好きなだけ食べる」欲望isシンプル企画な提案。
これこそ天国行きだろう?(とマムラーに共感を仰ぎたい)

2月のはったり思いつき企画は、マムラー界の「広報隊長」こと(勝手過ぎる命名)、めぐさんと開催することになった。(今回は参加者を募らず)

その美味しさで中毒者を続出されるマムアンは、当然のことながら土日は店主とのアイコンタクトが限界で、一糸乱れぬ手捌きに、そんな勝手なマムアン企画を実施する束の間さえない。

となると、私は有給を取得するしかないのでは。
「マムアン休暇」として申請してやろうかと内心思いつつ、午後半休を取得して平日15時に乗り込むことを決めた。

当日

4月某日(木曜日)
朝ごはんも昼ごはんも我慢し、15時に入店すると、平日のマムアンは南国の風が吹いていた。

ほわんとしたなまあたたかい空気にホッとすると、広報隊長と入念な作戦会議が始まった。

「カオソーイは期間限定だから1人前を2人で分けよう。」
「ハーフ&ハーフを決めるのは僕に任せてもらって良いですか、一応バースデイボーイなので」
「二人の共通点といえばキーマオでマム中になったことだから、”揚げ魚のキーマオソース”は1人前を2人で分けよう」
「チャージョー外して今日帰れる?」
※一部盛った表現が混在していることをご了承下さい

それは張り詰めた緊張感の中、お互いの意見を擦り合わせながら妥協点を探り、なんとか注文を決め切った頃にはすでに汗ばんでいた。


最後の晩餐でも良い

この機会に選手のプロフィールを紹介しておきたい。オフィシャルではございませんが。
・もはや5個は1人前、シェアしたくないチャージョー
・特別炊飯器を所持する美しさを兼ね備えたプリンセスことカオマンガイ(ハーフサイズ)
・ただただ世界一を謳ってしまう美味しさのトムヤムヌードル(ハーフサイズ)
・決して映えない私のアイドル、揚げ魚のキーマオソース
・麗しのマムアンのオブジェ、ヤムウンセン(小鉢)
・ゲリラ登場人気者カオソーイ


もはや5個は1人前、シェアしたくないチャージョー
特別炊飯器を所持する美しさを兼ね備えたプリンセスことカオマンガイ(ハーフサイズ)


決して映えない私のアイドル、揚げ魚のキーマオソース


ゲリラ登場人気者カオソーイ

これらがテーブルに広がる景色は圧巻そのもの。
ここはマムアン天国だ。

湯気が立ち上るテーブルを前に、僕とめぐさんは野生の目をしていた。
さっきまでの穏やかさはどこかへいき、獲物を見る目は動物そのもの。

開幕と同時に、その集中力は一気に引き上がり、ただ食べることに没頭した。
妙な緊張感と競争心が混じった落ち着かないテンションがテーブルに張り詰めていて、相当異様な光景だったことだろう。

何度も食べているのに、一口目の感動がどうかしている。
じゅわっと広がるキーマオの旨み、とそのご飯。
肉肉しい動物らしさに驚愕のチャージョー。中毒は怖いものだ。毎回同じ快感を味わってしまうのだから。

タイミングを測って出していただいたキング:カオソーイは自家製の手間暇かかったスープが香ばしいのなんのって。

ひとしきり駆け抜けた。
一旦お腹7割に到達するまでは。
無心だった。

ようやく一息つくと、会話が弾み最後のアレンジ共有という極秘タイムでメモを綴るオフ会へ。

キーマオにお酢をたらすと上品さが突き抜ける。
トムヤムスープにヤムウンセンとご飯を入れる究極の裏技を暴露。

それは満腹だった。お腹も心も。

食べ尽くした、僕の誕生日はなんと晴れやかな会だったことか。

諦め切っていた4月の誕生日の人との繋がり。
そこにはこの1年間で築いてきたと人と食堂とご飯があった。

今日という日を迎えることができてよかったと思えることが一番の誕生日の目的だとしたならば、それは叶いすぎてしまったのではないか。

その時間も、その後も、このエッセイを書いている今だって、ずっとあの記憶は天国だった。

以上、誕生日、南国マムアン天国行き。

ぜひ天国活動してみては。


美味しいひとときに、ごちそうさまでした。
では、また次回。



今日のお店:南国食堂マムアン(〒325-0026 栃木県那須塩原市上厚崎377−55)



*Instagramでは暮らしにある食をすきなだけ発信しています*

暮らしのヒントになれば、と。

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