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【イベントレポート】『中国料理の世界史』刊行記念イベント@ジュンク堂書店池袋本店

11月13日(土)、『中国料理の世界史――美食のナショナリズムをこえて』刊行記念オンライントークイベント「おいしいアジア料理の歴史を味わう―中国から日本、そして世界へ」が開催されました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

今回のトークは、著者である岩間一弘先生(ツイート写真左)と、写真家・ジャーナリストの森枝卓士先生(写真右)にご登場いただきました。

岩間 一弘(いわま かずひろ)
1972年生まれ。慶應義塾大学文学部教授。専門は東アジア近現代史、食の文化交流史、中国都市史。 2003年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。千葉商科大学教授などを経て2015年より現職。 おもな著書に、『中国料理と近現代日本――食と嗜好の文化交流史』(編著書、慶應義塾大学出版会)、『中国料理の世界史――美食のナショナリズムをこえて』(慶應義塾大学出版会)などがある。
森枝卓士(もりえだ たかし)
1955年生まれ。写真家、ジャーナリスト、大正大学客員教授。早稲田大学などでも食文化を講じる。高校在学中、アメリカ人写真家ユージン・スミスと水俣で出会い親交を深め、写真家を志す。国際基督教大学で文化人類学を学び、以後、アジアをはじめ、世界各地を歩き、写真、文章を新聞、雑誌に発表。人気カレーマンガ『華麗なる食卓』(集英社、全49巻)を監修。 おもな著書に、『食の冒険地図』(技術評論社)、『世界の食文化4 ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー』(農文教)、『考える胃袋』(石毛直道民族学博物館名誉教授と共著、集英社新書)、『食の文化フォーラム31 料理すること』(編、ドメス出版)、『食べもの記』『手で食べる?』『食べているのは生きものだ』(以上、福音館書店)、『カレーライスと日本人』(講談社学術文庫)などがある。

池袋のアジア料理を味わい尽くす

せっかく池袋のジュンク堂書店さんでやるのだから、ということで、今回のイベントでは先生方おすすめの池袋のアジア料理をテイクアウトしました。池袋といえば、近年アジア料理やアジア食材の店舗が集積している街としても知られています。5つのお店からテイクアウトした、『中国料理の世界史』スペシャルセットで、現場はおいしそうな香りが漂います。画面越しで皆さんにも届いていたでしょうか?

お食事②

左上のお皿から料理とお店を紹介します。

①青パパイヤのサラダ&パッタイ(タイレストランプリック)
池袋は中国料理だけでなく本格的なタイ料理も楽しめます。パッタイは第二次世界大戦ごろに生まれた意外と新しい料理。『中国料理の世界史』の中でとっても重要な料理として登場します。

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②ラムのもも肉焼き(アリヤ 清真美食 池袋店)
森枝先生が「ギャートルズみたい」と形容するビジュアルの強さも楽しい肉料理です。こちらのお店は、山盛りの肉料理を堪能するお客さんでにぎわっていました。

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③ラグマン(火焔山 新疆・味道 池袋東口店)
ラグマンとは、中央アジアを中心に食べられている手延べ麺。新疆ウイグル自治区の料理が専門の新疆・味道よりテイクアウトしました。

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④土豆餃子(千里香 池袋店)
土豆とは「じゃがいも」のことで、中国東北地方のソウルフードなのだとか。千里香では延辺地方の料理が多く、冷麺など朝鮮半島の料理に近いメニューがありました。

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⑤焼売、スペアリブ、ネギパイ(友誼食府)
中華フードコートとして日本人にも広く知られるようになった友誼食府から、上海料理と台湾料理をテイクアウト。食品売り場も併設されており、品ぞろえが大変豊富です。

友誼食府


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実食中!
(先生方、トークを一生懸命盛り上げてくださったために食事がかなり後の方になってしまいました💦)

広大な中国料理の歴史を訪ねて

トークは料理の紹介から、森枝先生寄稿の書評に沿って『中国料理の世界史』の話へ。「満漢全席は清朝の宮廷料理だった」「回転テーブルは日本発祥」といった誤った伝承(フェイクロア)を紹介し、実際は「満漢全席は19世紀の民間料理店が発祥」「回転テーブルは日本よりも前に中国で衛生的な理由で使われていた」と解説。正しい史実を歴史資料から丁寧に明らかにする、という本書の一つの特色にフォーカスしていきます。

食から見るナショナリズムとアイデンティティ

中国料理は様々な形でアジアの近隣諸国や欧米にまで広がっていきました。料理の広がりと確立を調べていくと、外交の場で体系立てて外にアピールしていくナショナリズム的観点と、一方で、現地に取り入れられた料理が、人々に受け入れられ、世代を超えてアレンジされ、国民食になっていく観点があるといいます。

岩間先生「京都の中国料理についてフィールドワークしていましたが、どこからが中国料理でどこまでが日本料理か区別がつかない。結局は作り手がどのように捉えているかの問題なんです。国民アイデンティティがどう作られているのかと、料理がどう作られているのか、というのは同じで、それを中国料理を通して様々な国の料理で見てきました。」

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質問コーナーでは、調味料のグローバル化とローカライズの歴史や、人気になる料理と文化として消滅してしまったり不人気になる料理、料理に合わせるお酒といった様々なテーマに話が及びました。

「コロナが落ち着いたらどこに行きたいか? 今後の研究の展望は?」という質問に、岩間先生は「もう一度中国を復習したいです。中国は国が主導で食の博物館を作っていて回り切れないくらいあります。博物館めぐりをしながら、どのように中国料理が編集されて展示されているか見てみたいです。あと台湾にも行きたいです。」とコメント。森枝先生は「ぜひ東南アジアの開拓を!」と、まだまだ面白い話が飛び出しそうなところで終わりの時間となりました。

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中国料理をめぐって、古今東西様々に話が展開した本イベント。当日運営スタッフとして参加した筆者は触発され、中国料理三昧を毎日しています。お腹がすきました……。

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#慶應義塾大学出版会 #中国料理 #池袋

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