工芸家を目指す若者が経験すること ⑦刃物も研がんと仕事できるわけないやろ。一歩進んで・・。

延はヘラを削ることに集中する。
全体に薄すぎるとヘラの腰がなくなって、綺麗に見えるだけでまともな下地なんぞつかないことは、よくわかる。
研いだら答えがすぐ変わる。

分厚くしたら、何にも指先に伝わってこない。
しっかり持てないと作業も疲れるし、使いにくい。
でも握り部分がしっかりすると、ヘラ先を薄くするのに長さが必要になる。
お椀の中をヘラつけするのにちょうどいい大きさを考えると大きすぎたらあかん。
小さすぎたらあかん。
ちょうどええにせんとあかん。

しっかり握れて、ヘラ腰の弾力もあって、先は刃物のように尖っているけど、薄すぎるとかけてしまう。グッと入れて、スーッと削る。先は薄くなりすぎないように、フワッとしてからピシ!っと決める。

師匠のヘラはそういう感じやったはず。

そう思いながらヘラを削るノブを見て、兄弟子が、


切れへん音してるな。


え?


見んでもわかるわ。ちゃんと研いどけ。



延のヘラ作りは、はじまる以前の問題だったようだ。


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