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案外知られていない偏差値についての大事な話

10月に行った入試模試の結果が判明した。塾生の平均偏差値は65.8。1ヶ月前の9月の入試模試の平均偏差値は65.7だったのでデータ上はほぼ横ばい。

ただこれはあくまでも平均の話で、個人レベルで見ると1ヶ月でかなり偏差値は動いている。

例えば、9月の段階で英語の偏差値が52だった生徒が、10月模試では69にまで上昇していたり、9月模試で理科の偏差値が70だった生徒が、10月模試では54にまで下がっていたり。

このように偏差値がたった1ヶ月で激動しているわけだが、この生徒たちは1ヶ月で急激に英語ができるようになったわけでも、急激に理科が苦手になったわけでもない。

それなのに、なぜ短期間でこんなに偏差値が激動するのか。

今回は、分かっているようで実はよく分かっていない人が多い「偏差値の考え方」について書いていこうと思う。

偏差値は安定しないのが普通

まず初めに述べておかなければいけないことは、「模試の偏差値は安定しないのが普通」だということだ。それなのに実に多くの人が「模試の偏差値は安定するものだ」と思い込んでしまっていて、この誤解が、重大な判断ミスの原因ともなっている。

そもそもテストというのは、その人の学力のほんの一部分を無作為に抽出して測定したものに過ぎず、どんな模試を受験しても、たった1度でその人が持つ能力を全て判定することなど不可能だ。なので、模試を受験するたびに成績が変動するのは至極当然のことである。

偏差値を正しく理解するのに、小さなボールが袋の中にたくさん入っている様子をイメージして欲しい。

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例えば、ある模試であなたの英語の偏差値が60だったとする。あなたの頭の中には、もともと偏差値54から68のボールがたくさん入っていて、その模試でランダムに抽出されたひとつのボールが偏差値60のものだったというイメージだ。

なので、次に模試を受けても必ず偏差値60のボールが出るという保証は全くない。もしかしたら58のボールが抽出されるかもしれないし、63のボールかもしれない。その時のコンディションや出題内容・難易度など、様々な要因が重なり合った結果、数ある種類の中から1つのボールが抽出される。どんなタイミングで数値が高いボールが出てくるのか、あるいは低いボールが出てくるのか、プロであっても予測することは不可能に近い。

この偏差値ボールだが、偏差値54から68のボールが、全て同じ数ずつ頭の中に存在するというわけではなく、その数はほぼ正規分布すると考えられる。

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つまり、平均値付近の偏差値帯に多くのボールが集まり、それに対して両極にある偏差値54や68のボールはごくわずかしかない。よって、偏差値61付近のボールが最も抽出されやすいが、場合によっては54のボールが出たり、67のボールが出ることもあり得るというわけだ。

偏差値の幅を考慮した分析が大切

このように、偏差値には幅があるのが普通なので、1回や2回だけの模試で自分は英語は完璧だとか、自分は理科が不得意だとか、余裕で志望校に行けるとか絶望的だとか判断するのはとてつもなく危険かつ愚行である。

イレギュラー的にたまたま偏差値が高いボールが出た可能性もあるし、その逆も十分あり得る。自分の頭の中の偏差値の平均値がいくつくらいかを正確に判断するためにも、模試は複数回受けた上で判断するべきだ。ちなみに、弊塾の受験生には8月〜1月まで計5回の入試模試を受験させているが、その理由は偏差値の平均値や幅を客観的に把握するためである。

また、確実に志望校合格を狙う場合、±3の偏差値の振れ幅を考えて、志望校の偏差値+3を目標偏差値とするとよい。たとえば偏差値65の高校を志望するなら目標偏差値は68となる。偏差値68くらいを自分の頭の中の偏差値ボールの「平均値」としておくと、当日の入試で偏差値の幅が下に振れてしまった場合でも合格する可能性が高くなる。

受験勉強をする意味

受験生はまさに偏差値を上げるために日々受験勉強に取り組んでいるわけだが、偏差値を上げるということは、厳密に言えば次の異なる2つの意味合いがある。

1つ目は、自分の頭の中の偏差値ボールを1つずつ高い方へとシフトさせていくことだ。相対的に得点できる問題を増やすことができれば、偏差値は全体的に高い方へとシフトしていく。多くの受験生が持つ受験勉強のイメージはこれだろう。

しかし、偏差値を上げるためにはもう一つ欠かせないことがある。

それは、手持ちの偏差値ボールのうち、低い方のボールを排除していくことである。たとえば先ほど例えたように偏差値54〜68のボールを持っている人なら、偏差値54〜56などの低いボールを徹底的に排除するために勉強するということも、受験勉強においてとても重要な意味を持つ。低いボールを排除する勉強とはつまり、基礎の徹底や苦手単元の克服だ。

受験生は偏差値をとにかく上げる勉強に意識が働くので、このような偏差値の低いボールを排除するための勉強を避ける傾向にある。しかし、手持ちの低いボールを排除できないまま入試を迎えるということは、いつ爆発するか分からない「爆弾」を抱えているということになりかなり危険な状態である。手持ちの低いボールを排除しておくことは、安心して入試を迎えるためにもとても大事なことなのだ。

まとめ

受験生に「模試の成績で一喜一憂するな」というのは無理な話だ。一生懸命勉強しているのだから、模試がよかったら嬉しくなるし、悪かったら凹んでしまうのは当然のことだろう。

しかし、だからといって偏差値に振り回されすぎても良くない。頭の片隅にでも偏差値は安定しないものだという認識があると、無駄に振り回されて間違った判断をしてしまうこともないだろう。

もしも1度くらい偏差値が低く出ることがあっても、きちんとゴールから逆算した上で計画に沿って勉強しているのなら問題はない。偏差値が低くなってしまった原因を突きとめ、冷静に対処をしていけば良い。ただ、2度3度連続で予想以上に偏差値が低いのならそれは根本的な勉強方法の見直しが必要なのかもしれない。






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