11「閣下の前で」

 先日、横浜みなとみらいホールで行われた、聖飢魔IIのデーモン閣下の朗読イベントへ足を運んだ。尺八や胡弓(こきゅう)などの純邦楽器による効果音づけ、楽曲演奏も行われながら読まれたのは安部公房「砂の女」。午後六時から休憩をはさみ三時間もの長丁場におよぶ朗読は、今まで聞いたどんな朗読よりも素晴らしかった。朗読、という、小説を読み最終的に音として発露する表現形式においては、小説の書き手であったりするより、音のプロフェッショナルであるということのほうがよほど重要なのだ、ということを身をもって知った。過去に二度、自著を三〇分ほど朗読したことがあった。ぼそぼそとした声で、何度もかみながら読んだ。思いだし、恥ずかしくなった。

ここから先は

1,074字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?