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確かな約束

僕は「いつか」という言葉が好きだ。そこには地続きの今があって、可能性を感じさせてくれる。だけど、それはいつでもいいわけじゃない。可能性というあいまいな世界なので、そこにはちょっとしたタイミングがあって、そこを逃すと永遠に「いつか」は来ない。何とも残酷な話でもある。

以前人間関係は寂しさの埋め合わせなんじゃないかと考えた時期があった。「いつか」という可能性を信じられずに、確実で目に見える今に価値を感じていたのかもしれない。間違いなくそれは寂しいだけというやつなのだけど、どうにも甘美な誘惑なのだ。特に恋愛感情というものが前提にあれば、そうなりがちだ。

「寂しい」

そんな連絡が来たら、「今から行くよ」なんて甘い言葉で返事をして、冷えた心のまま埋め合わせることだけを考える。そんな一連の動作は相手やシチュエーションが違うだけで、一種のルーチンなのだ。可能性を信じられずに、今に逃避した崖の上のランデブー。そんな人間関係が終わるのは、結局のところ時間の問題なのである。

ある日僕は不思議な空気の人に出会った。

おそらく、出会った瞬間に僕は恋に落ちていたのだろう。彼女はどういう気持ちだったかはわからないが、何度か話をして、すぐに打ち解けた。僕たちが関係を持つのも時間の問題だった。終わりと始まりが時間の問題でしかないのはそこで学んだと思う。

僕にとっては夢のような時間で、他人と一緒にいて楽しく、幸せな気持ちを教えてもらった。まるで外国の映画みたいな、幸福の道筋。失礼な話だが、二人の時間がずっと続いてほしいと思ったのは初めてのことである。それほど僕にとっては衝撃的な出会いだったのだ。

それでも、やはり終わりが来る。

僕の気持ちなんてお構いなしに、残酷に、物語は終わる。やはり今回も逃避でしかなくって、埋め合わせだったのだ。僕はそう思うことで自分の気持ちにけじめをつけようとしていた。

だけど、君は言った。「あなたはひとりじゃないよ。」

多分それは、君がずっと言いたかったことなんじゃないかと僕は思った。独りよがりで、自分勝手で、どうしようもない僕に君が言いたかった言葉。ああ、そうだ。また「いつか」君と僕の人生が交差した時に、その時にまた一緒にいたいと僕は思った。初めて僕は未来を信じようと思った。甘美な今よりも残酷な物語を信じるのだ。それはとても怖いけれど、僕は、とても幸せだと思った。

僕は君も寂しいんだと思っていたんだけど違ったのかもしれない。寂しい気持ちが薄れるようにと、君を抱きしめたはずの僕が救われている。

ありがとう。

僕は「いつか」という言葉が好きだ。そこには地続きの今があって、可能性を感じさせてくれる。だけど、それはいつでもいいわけじゃない。可能性というあいまいな世界なので、そこにはちょっとしたタイミングがあって、そこを逃すと永遠に「いつか」は来ない。何とも残酷な話でもある。

「いつか」が来るかどうかはわからない。だけど、約束さえしておけばそのタイミングは限りなく僕たちが見つけることができる。その時なんて本当にいつだっていいんだ。今、この確かなうちに約束しておこう。

また「いつか」。

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