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真逆の期待値コントロール〜情シス目線のプロジェクトマネージメントTips#55

世の中にプロジェクトマネジメントに関するコンテンツは非常にたくさんあるのですが、よく見てみるとどうしてもSIer目線のものが多いように思えます。SIer目線の場合だと、どうしても利害が一致しないせいか事業会社というか情報システム部門目線から見るとピンとこないものも多く、ちょっと腹落ちしないことが多くあります。
というわけで無いなら作ろうということで「情シス目線のプロジェクトマネジメント」なるものを書いてみようかと思い不定期だとは思いますがシリーズ的に書いていこうと思います。

今回のテーマは原点に帰ってSIerとユーザー企業で真逆になるもの「期待値コントロール」の話をします。

ところどころで感じる違和感

社内ITプロジェクトに長年関わっていると、コンサルやSIerの人達との間に違和感を感じることが多々あります。

そのなかでもっとも多いのが「スコープ」に対することです、とくにプロジェクトの序盤にコンサルやSIerはとにかく話を膨らませがちです。要件やスコープがまだ固まっていないとはいえ、プロジェクトスタート時には「予算感」というものがあります。だから予算をキープし、地獄のプロジェクトになるのを避けるには、元々想定していないような改善事項、リスクの伴う新機能に対しては基本的に厳しく立ち向かわないといけません。しかしながらコンサルとかSIerの人達はユーザー部門に対し「悪い答え」をしようとはしません。

その逆でプロジェクトが終盤になっていよいよリリースという段階で、なぜかユーザーに冷たくなっていきます。リリース前にユーザー部門に不機嫌にされたら、進まなくなるだろうとハラハラしますが、そんなことはお構いなしです。

ユーザー企業とSIerの間にいったいどんな行き違いがあるのでしょう。

SIerにとっての期待値コントロール

<プロジェクト序盤>
プロジェクト序盤というのはSIerやコンサルにとっては「営業フェーズ」になります。企画段階、要件定義段階・・・・概要設計くらいまで終わるまではスコープが拡大する時期なのです。だから気持ち的には営業担当のような感じになります。
ですから、どうしても「拡大」したいという圧力がかかります。たしかに予算枠みたいなのは理解していても、新しいツールなんかを紹介して話をふくらませるというのは必然なのです。新しい機能の話が盛り上がったら、あわよくばプロジェクトに増額される可能性もある・・・・だからこの時期は習性というか本能的に拡張方向の話には乗ってしまうのです。

<プロジェクト後半>
それがプロジェクト後半になったら状況は一変します。概要設計が終わると底から後ろは「完成請負」の契約として金額感が確定します。ここからはプロジェクトの予算が膨れることはほぼありません。SIerの立場からすれば、ここから後ろの「新しい話」は「タダ働き」に繋がります。
そしてこのあたりになると「営業的気分」は一気に「原価管理」モードになります。発注金額が決まった以上、ここから後ろは一円でも安いほうが良いのです。1分でも無駄遣いはしたくありません。

つまりSIerにとっての期待値コントロールは発注金額が確定する前と後ろではまったく異なるのです。

情シスにとっての期待値コントロール

これが情シスに立場を変えてみると大きく変わります。

<プロジェクト序盤>
情シスにとってプロジェクトの序盤はスコープを抑制する方法に進みます。なぜなら「発注額」は決まっていないものの「予算額」は決まっています。これをオーバーすると年度計画や他のプロジェクトに悪影響がでてしまいます。しかもスコープをやたら広げるとプロジェクトが複雑化してしまいます。特に後半の業務リリースとか教育とかがものすごく大変になります。だからプロジェクトの序盤では予算を獲得したときに役員に話したスコープよりも広げたくはないのです。

<プロジェクト終盤>
プロジェクト終盤になると事情がだいぶん変わってきます。お金も大事なのですが、最も大事なのは「業務リリース」をすることになります。どんなに頑張って作ったシステムも業務部門に使ってもらえなければ意味がありません。この時期に出てくるのは土壇場になって出てくる「この機能がないと仕事にならない」みたいな変更の要求です。この時期まで来ると。ある意味業務部門に対するご機嫌取りも必要になってきます。つまり目的で絞った理想形のシステムもリリースのために変更を加えるということになります。

更に大きな事は「人間の記憶は最後の方の出来事しか残らない」ということです。プロジェクト序盤にどんないい雰囲気でいても、後半にギスギスしてしまっては「このプロジェクト失敗だったね」になりかねません。しかも情シスはSIerと違って、そのユーザーとこれからもずっと付き合い続けないといけないのです。敵意を持って運用・保守へースになだれ込まれても困るのです。

つまり情シスから見ると最初に厳しいことを言って期待させず、後半になって小さなことに対応してあげてご機嫌取りをするほうがいいのです。

立場の違いを理解してコントロールをする

情シスとSIer・コンサルというのは大きく立場が違います。ここを理解しないままプロジェクトを進めるとプロジェクトが巨大化した挙げ句、ユーザー部門との間に亀裂を生んでしまいます。

相手も悪意があるわけではないので敵対しても仕方がありませんが、このあたりはちゃんと理解してプロジェクトをコントロールしたいものです


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