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愛知県立芸術大学で非常勤講師を務めた話(その4)

縁あって愛知県立芸術大学で非常勤講師を務めた、その経緯は「その1」で、基本的な内容については「その2」で、作品と社会の接点についての思いは「その3」でそれぞれ詳しく

今回は1年生と3年生向けに、同じような授業を担当させてもらった。ただ違ったのは1年生が6コマ(2コマ×3週)で、3年生が10コマ(2コマ×5週)だった点だ。「作品と社会の接点」を考えるきっかけとして「マーケットイン/プロダクトアウト」という考え方の授業は、今回担当した1年生向けにも3年生向けにも行った。ただ3年生は授業コマ数が1年生より多いことに加え、そろそろ卒業を意識するタイミングだし、その先に社会が見えている感じだろうなということもあって、ちょっと実践的な講義を追加した。バイヤーさんによる授業だ。

熊本市内にある器のセレクトショップ「くらしのうつわ 月まち」。このお店の店主、平島さんに愛知まで来ていただいてお仕事のことを語ってもらった。平島さんは、作家さんと深くお付き合いをしながらともに成長していくようなスタイルでお店を経営している。授業では「どんな風に作家と出会うのか」「どんな作家を探しているのか」「売り方」とか、インタビュー形式でそれはそれは色んなことを語ってもらった。

私の講義は、概念的なことと実践的なことを組み合わせたものにしていたものの、その市場でまさにご活躍されている方が「実際どうやっているか」という話とはリアリティが全然違う。平島さんのお店「月まち」はまた良いお店で、人気もある。そうやって成果を挙げている人が、どう考えて、何をやっているか、という話にはとてつもない説得力があった。正直なところ、私自身もものすごく勉強になった。

平島さんに来ていただいたタイミングはたまたま「愛知県立芸術大学 陶磁専攻・美術研究科陶磁領域研究発表展」が開催中だったので、後半はそこで平島さんによる講評会をお願いした。バイヤー視点による学生作品の講評は、授業でのアプローチとは違う角度での見方が示されて興味深い。「どう作られたか」という制作プロセスだけじゃなくて「選ぶ人や買う人がどう反応するか」みたいな視点を聞くのは、作品に新しい奥行きが生まれるような感覚だった。

芸大の授業としては少々異質だったかなとも思うけど、だからこそ貴重な体験になったんじゃないかなと。ぜひともそうなっていて欲しい、というのは企画者のわがままかもしれないけど。

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