三年サンタ

今年、六年生の娘が、いよいよ具体的に聞いてきました。

「サンタさんって親なの?」

私は途中からツムギのサンタになったので、それまでの様子は知りませんでしたが、任天堂switchがサンタさんからの贈り物だということは夫からも聞いていました。

二年前、我が家に越して初めてのクリスマスを迎えるころ、まだ幼さの残る娘と、サンタさんどこから入ってくるだろうね、と、ワクワクしながら当日を待ちました。

姉からも従姉からもプレゼントが届くことは恒例で、私もサンタとは別にプレゼントを用意して、ツリーはありませんでしたので、家で一番大きなモンステラの鉢植えの根元に届いた順番に並べていきました。


できるだけ、娘がほしいものをあげたいと、日々ヒアリングをしていましたが、ほしいものがたくさんある娘は、あれもこれもと思いつくままに口にするのでした。

今と変わらず、絵を描くためのペンやiPad、switchのソフト、大きなぬいぐるみ(そう言えばここのところぬいぐるみはあまりほしがらなくなってきたかしら?)、まあ、だいたいほしいものはわかるので、予算に合わせて選べばよいかと思っていました。

クリスマスまで一週間を切ったころだったでしょうか。

突然「ギターがほしい!」と言い出したのは。

当時、用務員さんと親しく話す機会があって、ギターを弾く用務員さんから、小学生にもわかるようなコード表をもらったのがきっかけだったそうです。

同じようなものばかりほしがる娘が、急にギターなどと言い出したので、慌てて夫と緊急会議を開きましたが、元々娘に音楽をやらせたいという夫の願いとも一致し、急遽、ギターを用意することにしました。


ちょっと、演出のつもりで、娘に渡しそびれていた、振動で起こす目覚まし時計もサンタからのプレゼントとして添えることにしたのですが、今思えば、こどもへのプレゼントはおもちゃがよかったんだろうなぁと、たぶんクリスマスの度に反省として思い出す出来事を自分で作ってしまいました。


娘は、喜びはしたけれど、やっぱりギター熱は一過性のもので、前日に書いたサンタさんへのリクエストには入っていませんでした。

早めにリクエストしないと、ほしいものはもらえないと学習したようでした。


誕生日も、日常的にも、同じようなものばかりほしがるので、去年も今年も、サンタの独断で選ぶ方針に切り替えました。

一番ほしいのは絵を描くタブレットで、それはまだ早いという意見が夫と一致していたからです。


では、それを超えるにはインパクトだろう!と、去年は「SPY×FAMILY」の10巻セットにしました。

SPY×FAMILYは家族で見ていたアニメだし、我が家と家族構成も同じ、アーニャがヨルさんを「母」と呼ぶのを真似して、私のことを「母」と言うこともありましたから、初めて自分のものになる記念のマンガ本としてはいいセレクトではないかと思いました。

ものを雑に扱う娘が、そのマンガだけは丁寧に読んでいるようなので、きっと宝物になったに違いないと思います。


私自身はというと、中学一年生までサンタさんを信じているこどもでした。

当のサンタさんが「ところでお前たちはいくつまでサンタさんを信じていたんだい?」と聞いてきたその日まで。

二学年上の姉が「そんなのとっくにわかってたよね」と当たり前のように言うのを見て、衝撃を受けながらも「う、うん」と答えるしかありませんでした。

我が家では小さなころから、サンタさんは10歳まで。いい子にしていれば特別に来ることもある。と聞かされていたので、サンタさんが来なくなっても、サンタさんを信じる気持ちに変わりはなかったのです。

今思えば、11歳のクリスマスには他界していた母は、自分がサンタになれる期間を予期していたのかもしれません。


それで、というわけではないのですけれど、サンタさんはやっぱりこどものもの。
こどもから大人へ移り変わっていく中で、どこか区切りをつけてあげたいという思いがありました。

それこそ、サンタさんが来なくなった暁には、サンタ+親からのプレゼントの予算で、ほしいものを買ってあげればいいと。


今年はやっぱりこどもらしく、おもちゃの類にしましょうよ。

だいたいの方向性だけ決めて、最後は夫に任せることにしました。


イブの日の寝る間際、娘が慌てて書いたサンタさんへの手紙には、

『第一希望 液タブ
 第二希望 ohuhuの120色ペン
 第三希望 メンズのパーカーとメタル系のバングル のどれかでお願いします」と書いてありました。


クリスマスの朝、深夜のサンタ業で起きられずにいた夫婦の寝室に、「サンタさん、来たよ」と嬉しそうに娘が入ってきました。

「マリオのソフトとコントローラーだった!」

希望のものはひとつも入っていなかったのに、娘はまるで最初からリクエストなんてしなかったかのように、サンタさんからのプレゼントに喜んでいました。

「これで、四人でゲームできるね!」

時々上京する私の姉も、娘の中ではすっかり家族になっていました。

家族で遊べることをこんなに喜んでくれるのは、もう最後かもしれません。

こどもって可愛いなぁ。


昨晩は、私の帰りを待ち侘びていた娘に、マリオゲームに誘われました。

自分だけなかなかうまくいかなくて、不機嫌になってしまうあたりはまだまだこども。

今のうちに、家族でたっぷり遊んだねー。という時間をたくさん作ってあげたいと思いました。


ツムギがいなかったら、私はサンタになることなかったのですね。

三年間、サンタをやらせてくれてありがとう。

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