クリスマスの気まぐれ.12

ほぼ毎日売り場で会っているけれど、私服で会うのは初めてだから少し緊張する。
白のニットにふわりとしたスカートと、ショートブーツを合わせて、コートを羽織る。

通勤は防寒対策重視だから、極厚タイツを重ねばきして、カイロも貼りまくって、手袋とマフラーも必須だけど、今日は全て封印しておしゃれ優先で頑張ろう。

待ち合わせは駅前の噴水公園。
まだお昼過ぎだから、点灯していないけれど、夜になるとイルミネーシ

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クリスマスの気まぐれ.11

「今年は見たいなぁ。」

思わずそう呟くと、目をまん丸にしたカンナがこっちを向く。

「え、帰り道に通るじゃないですか。」

「バッカ!
一人で見たら虚しいじゃん。
期間中は裏から帰るよ。」

もこももの手袋をはめた手で、カンナの腕をバシバシ叩いて、歩く。

「あはははは!」

「なんで笑うの?」

悔しくなって、カンナの腕を更にバシバシ叩く。

「いや、可愛いなぁって思いまして。」

カンナから

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クリスマスの気まぐれ.10

「浮かれちゃって、周り見えてないせいじゃないですか?」

プイっと横を向いて、ぶっきらぼうに言う。

「カンナ、なに怒ってるの?
もう、飴ならあげるからさ!」

カンナの手首を掴んで、無理矢理開いた手のひらに飴を乗せる。
そして作業に戻る。

早く終わらせて、早く帰って…。
村田さんに連絡しよう。

前にみんなが噂してた。

“村田さんに番号渡したけど、連絡が来なかった。”
“番号教えてもらえなか

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クリスマスの気まぐれ.9

「ね、ナズナちゃん?」

「?」

パッチリ、目が合う。

「今度、飯行かない?
ってことも踏まえて、まずは番号教えて欲しいんだけど…。」

一瞬、話が理解出来ずに思考が停止する。

「ダメ、かな?」

困ったような顔で言われて、胸がドキリとしてしまった。

「だ、大丈夫です。」

声がうわずる。
顔も熱い。

「ホント?
すげぇ、嬉しい。」

さっとポケットから名刺を取り出して、サラサラと番号と

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クリスマスの気まぐれ.8

「そうですか?」

そういう噂はよく耳にするけれど、本人はもうちょっとぼんやりのんびりしてるというか…。

「この企画は、彼も参加してるけど、アイディアがいいってうちの会社でも絶賛されてるよ。」

「そうなんですか?」

意外だなぁ。
私の知っているカンナとは、全く別人のような話を聞くと、不思議な気持ちになる。
本当はカンナが二人いたりして。

「それに、可愛いってうちの女の子たちに人気だよ。」

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梅雨に、雪が降る

またクリスマス映画を借りて観ました。

世間は梅雨なのに。

最近YouTubeで、映画評論家・町山智浩さんの【おすすめのクリスマス映画】という動画を聞いて、どうしても観たくなってしまったのです。

今回借りたのは、【素晴らしき哉、人生!】。

内容には詳しく触れませんが、1940年代の映画がこんな高みに到達していたのかと驚かされました!

またクリスマスになったら観たくなる作品かもしれません。

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スキ、どうもありがとうございます^ ^ すごくうれしいです✨
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クリスマスの気まぐれ.7

「糖分足りてないんじゃない?」

チラリと見上げながら言うと、

「…足りてます。」

プイっと横を向いてしまった。

「そ?」

のぞきこんで見ると、めちゃくちゃ眉間にシワが寄ってるよ!

「ナズナちゃんがくれるなら、なんでも欲しいなぁ。」

私の反対側で、作業をしていた村田さんがニッコリ笑っている。

「あ、飴いります?」

ポケットから取り出したものの、行き場をなくしていたはちみつの飴を、差

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クリスマスの気まぐれ.6

「カンナじゃん。」

「ナズナさん、お疲れさまです。」

売り場に来るなんて珍しい。

「手伝いに来ました。」

「そっか。
ありがと。」

「ナズナちゃん、ちょっとこっちいいかな?」

「は、はい!」

村田さんに呼ばれる。
職場ではいつの間にか、名前で呼ばれることが多くて、今では当たり前のようななっている。
そのせいか、村田さんもそう呼んでくれるようになった。

「ここの商品、一旦撤去していい

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自分の一番古い記憶の話。

自分の一番古い記憶は何だろうと、振り返ってみます。

生前の記憶。

私の弟は、私と年齢が8歳離れていて、両親は共働きなので、ちっちゃい頃はよく面倒を見ていました。

ある日、弟はまだ当時2歳3歳くらいだったかな。

姉と三人で遊んでいて、ふと姉が「お母さんのお腹の中どうだった?」と聞いたら、

「あったかかったけど、口の中がぬちゃぬちゃして気持ち悪かった」

と答えた。

超衝撃。お腹の中にいた

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クリスマスの気まぐれ.5

茶化してカンナの肩をバシバシ叩いてみるけれど、誰も惑わされたりしない。

「ナズナー、白状しなさぁい?」

目が合ったら石になってしまうかもしれないくらい、スミレさんの迫力はすさまじい。

「…わかりましたよー。」

運ばれてきたビールをゴクリと飲み、ゆっくりと思い出すことにした。

あれは今月に入ってすぐのことだった。
私の担当の地下お菓子売り場に、クリスマスコーナーを設置する時期になって、新し

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